中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

ポポー(Papaw,Pawpaw)

2006-09-03 12:00:21 | 身辺雑記
10年以上も前に、知人から小さいポポーの苗を貰った。ポポーという果物は、戦後間もない少年の頃に、ラジオから流れてくる「リオのポポ売り」と言う歌を聴いて以来、一度見てみたい、食べてみたいと思っていたが果たせなかった「幻の果物]だったので喜んで貰って帰り、猫の額ほどの我が家の庭に植えておいた。それから何年かたち、その苗は大きく育ったが、いっこうに花は咲かないし、もちろん実をつける様子がない。土壌が合わないのかと半ば諦めていた。

ところが数年前に、ふと見ると濃い紫がかった小さな花がいくつもついているのを見つけ、やっと咲いたかと喜んだ。やがて花はアケビに似た形の、さわやかな緑色の実となった。これがあのポポーか、いったいどんな味がするのかと楽しみながら待つうちに、とうとう熟した。果実の形はアケビにとてもよく似ているが、調べてみるとポポーは「バンレイシ科に属する北米原産の落葉植物」とあり、アケビとは縁がないようだった。

 黄色く色が変わった実を触ってみると少し柔らかく、南方の果物にあるようなよい香りがした。大いに期待して皮を剥き口に入れると、甘みはあり、水分は乏しくねっとりした食感である。しかしまずくはないが、どうも期待したほど美味ではない。恋焦がれていた女人に会ってみたら興醒めだったと言うほどではないが、少々がっかりした。それで何とはなしに興味が薄れて冷蔵庫に入れたままにしておいたら忘れてしまって、気がついた時には黒く変色してぶよぶよになっていたので捨ててしまった。
 その年以来毎年実をつけ、しかも数はだんだん増えてきたのだが、いつも木に放っておいたので、自然に落ちて土に還っていった。今年もすっかり忘れていたが、連日の残暑が少ししのぎやすくなったので、久しぶりに外の空気を入れようとしてガラス戸を開けたら、美しい緑色の実が目に入った。
 
急にあの「リオのポポ売り」の歌が気になってインタネットで調べてみると、やはり物知りがいるもので、あるブログにポポーについての書き込みがあり、そこには「かれこれ60年前、戦後の食糧難がまだ続く時代に暁テル子さんが歌う『リオのポポ売り』を聴いた幼少のおとさまは『ポポとはどんなにうまい果物なのか』とよだれをたらしていたという」とあった。そうそう、あの歌手は暁テル子だったと懐かしく、「幼少のおとさま(?)」のことは、同じだなあと思った。それにしてもブラジルのリオ・デ・ジャネイロではポポーを産し、街にはポポー売りがいるのだろうか。どうも今と違って往来もあまりままならない時代に、はるか遠い異国に思いを馳せて作った想像の産物のように思うのだが。