散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

胡桃

2015-11-06 21:31:05 | 自然観察


目の前のカラスはくちばしに何か加えている。胡桃らしい。
アスファルトの道の上をすいっと上昇し胡桃らしき物を落とす。そしてそれはパカッと割れた。やはり胡桃だった。カラスは割れた実を再びくちばしに押し込み、脇の畑の真ん中に移動し、車や自転車に邪魔されることなく悠々と胡桃をついばんだ。
賢い奴だ。木から落ちた胡桃がアスファルトにあたって割れるのを見ていたに違いない。彼らは実によく観察をしているし記憶力も良い。
多分私の記憶力より優秀かもしれない。
さて胡桃だ。
この日の目当ては胡桃を拾うことだった。
カラスと胡桃をみて思いついたわけでなく、春先に迷い込んだ道はずれに勝手に大きく育ったらしい胡桃の木が生えていて、秋になったらいただきに行こうと考えていた。
カラスの記憶力より危ういかもしれない私の記憶力は、そういう事に関しては正しく作動して時期になるとちゃんとアラームが鳴る。
少し長い散歩にはなるがニンジンを鼻先にぶるさげられた馬のように、餌に気をとられて脚は進む。
目当ての小道に入ると、鹿がのんびり草を食んでいた。



鹿はしばらくじっとしてこちらをの様子を伺っていたが、やがてすいっと木々の中に溶け込んで見えなくなった。
雨上がりだったので水滴をまとった草の中を歩くうちに運動靴は中まで濡れて重くなった。
そして思ったとおり胡桃は熟していた。小ぶりだがちゃんと中身はつまっている。
落ちている実を拾い、リスの分は充分残して帰路についた。
今年は栗も拾ったし、ポルチーニ茸も見つけた。ハマナスの実や西洋サンザシの実でジャムも作った。
十一月は展覧会が三件続くので気分がわさわさとしているのだけれど、そういう事やら、こういう事やらが私のなかに生まれてくる物の糧になるらしいから、遊んでばかりいる自分を甘やかしている。
明日は展覧会二件が始まる。