できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

2121冊目:橿日康之『織姫たちの学校1966‐2006』

2015-06-10 10:29:20 | 本と雑誌

2121冊目はこの本。

橿日康之『織姫たちの学校1966-2006』(不知火書房、2012年)

大阪府内の泉州地域にかつて数校存在した「公立の隔週定時制高校」の取り組み、地元紡績・繊維産業の発展・衰退とともに綴った本。著者はこの隔週定時制高校に長年勤務した元・教員で、当時の生徒たちと教員としてのご自身とのかかわりを、主に「失敗」談とともに綴っている。ただ、著者はどうも当時の隔週定時制高校の教職員組合の動きに批判的であったようで、そのことで他の教員との関係にもいろいろ苦労された様子。そのことが本書の随所に現れている。それでもなお、このテーマを扱った類書が他にないだけに、やはり貴重。ある産業の求める人材育成に学校教育が積極的にかかわると、その産業の衰退とともにその学校教育も衰退せざるをえない・・・ということがよくわかる一冊でもある。

織姫たちの学校1966‐2006―大阪府立隔週定時制高校の40年


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2120冊目:河原和之『「本音」でつながる学級づくり集団づくりの鉄則』

2015-06-10 10:16:51 | 本と雑誌

2120冊目はこの本。

河原和之『「本音」でつながる学級づくり集団づくりの鉄則』(明治図書、2014年)

最初に苦言をひとつ。12ページのところで、林間学校中のルール違反をした生徒の話を、林間学校から戻ったあとに聴かされて、怒りがこみあげてきたあまり、その子どもに対して手を挙げてしまったことを書いている。正直に自分のした過ちを書く点は隠す事よりもいいとは思うのだが、やはり何か、その行為に対する現時点での総括というか、反省とともに書くべきだろう。

ただ全体的に見ると、大阪の中学校教育、特に人権教育の現場実践者らしいところが随所に現れていることがうかがえる一冊ではある。障害のある子どもをクラスで受け入れ、卒業するまで仲間づくりをしてきた取組みなどは、まさに今のインクルーシブ教育の取組みそのもの。また、非行傾向がある子ども、在日外国人の子どもなど、さまざまな課題のある子どもと真剣に向き合ってきたことは、本書の内容からよく伝わってくる。

中学校教員として子どもたちに対して望みたいこと、譲れない一線があること。それとともに、それを理解してもらうための多様な取り組み、筋道や、それをわかってもらいたい相手である子どもたちの状態を理解する力の重要性。こういうことは、本書からわかることだと思う。

ただ、それだけに、冒頭に書いた苦言の部分の記述。あそこはなんとかしてほしかった。若かりし頃の自分の実践上の過ちを、もっと他の怒りの伝え方はなかったかと、退職した今なら書けると思うのだが。このあたりで、私は「譲れない一線」を論じるときの著者の姿勢に少し、危うさを感じた。

「本音」でつながる学級づくり 集団づくりの鉄則


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