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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

大阪市の「特別顧問」の業務内容について、より一層「透明性を高める」努力をしていただきたい

2019-05-13 20:37:01 | 受験・学校

メールで明らかとなった吉村市長(当時)・大森特別顧問による市教委への露骨な介入

昨日「書く」といっていた、この他のブログ記事に関するコメントを、今から書いておきます。

上記のブログ記事を読んで率直に思った印象は、「大森特別顧問って、吉村市長(当時)の意向を背景にして、ここまで大阪市教委事務局の作業に口出ししていたのか…」という思いですね。

でも、驚きもありましたが、どこかで「やっぱりね」という印象もありました。どことなく「そういうこと、やりそうだ」という思いがありましたので。

ただ、あらためてここで確認しておきたいことがあります。それは大阪市の「特別顧問」という人が、そもそも、どういう存在なのか、ということです。

まず、「大阪市特別顧問及び特別参与の設置等に関する要綱」(以下「要綱」と略。クリックするとリンク先に「要綱」のPDFが出ます)というものが、「平成23年12月22日」から施行されています(その後、何度か改正されているようです)。つまり2011年12月の橋下市政開始から、こういう「特別顧問」の設置が、市の「要綱」で実施されてきたということですね。

次に、この「要綱」を見ますと、「要綱」第3条では「特別顧問」等は「市長の委託を受けて、下記のような調査、審議及び助言業務(以下「調査等」という。)を行うものとする」とあります。つまり、あくまでも「市長の委託」が前提で、特別顧問は「調査、審議及び助言」業務を行うことが原則です。

なおかつ、「特別顧問」は「要綱」第3条で、

関係地方公共団体との共通の行政課題又は市全体にわたる特に重要な施策に関する政策的な見地からの調査又は審議その他の極めて高度の専門的な知識経験及び特に優れた識見並びに多角的な考察力を必要とする業務。

この上記赤字部分についての「調査、審議及び助言」業務を行うことになっているわけですね。

だから、この「要綱」の内容からすると、たとえば吉村市長(当時)が「全国学力テストの結果を反映させることのできる教員業績給の案をつくってほしい」という「委託」をしたのであれば、大森特別顧問がそれに関する「調査、審議及び助言」を市教委事務局と連携しつつ行うことは、一応「要綱」上は「可能」ということになります。

ただし、「そもそも、首長(たとえば吉村市長(当時)と教育委員会の関係において、特別顧問に何らかの教育施策の案をつくるよう市長が委託し、それを市教委事務局も一応、受け入れることは、ほんとうに妥当なことなのか? そもそも首長は教育委員会の職務権限に属する事項をおかすような対応、できないと思うのだが?」という疑問が生じます。

たとえば、首長と教育委員会の関係については、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)で、一応、具体的に定められています。

この地教行法第1条の3の第1項で、地方自治体の教育等に関する施策の大綱を首長が「定めるものとする」と決まっています。しかし、その大綱を定める・変更するときには、「総合教育会議」を開いて、教育委員会と協議しなければなりません。また、地教行法第1条の3第1項の規定は、首長が、地教行法第21条(=教育委員会の職務権限)に定める事務を管理し、執行する権限を与えるものと解釈してはならない(地教行法第1条の3第4項)と定められています。したがって首長には、教育委員会の職務権限に関する事務を管理し、執行する権限はありません。

一方、その「総合教育会議」についてですが、地教行法第1条の4で、教育を行うための諸条件の整備等の重点的に講ずべき施策(=ここに上記の教育施策等の大綱が入ります)や、子どもの生命・身体等に被害が生じている(あるいはその恐れがあると見込まれる)場合等の緊急措置などを、首長と教育委員会によって協議する際に開かれます。また、この協議を行うにあたって、総合教育会議が「必要ある」と認める場合は、「関係者または学識経験者」を呼んで、当該の協議事項に関して意見を聴くことができると定められています(地教行法第1条の4第5項)。

なので、あくまでも特別顧問が市長の「委託」を受けて、市教委事務局に対して何か「調査、審議及び助言」ができるとしたら、この「総合教育会議」で協議され、市長及び市教委との間で合意された事項の範囲内で、なおかつ、教育委員会の職務権限をおかさないかたちでなければならない、ということになるでしょう。

そう考えると、もし仮に特別顧問が市教委側にいろいろ提案しても、「そんなことは教育委員会の職務権限をおかすものだ」と言われたら、特別顧問はたとえ市教委側のすることがどれだけ気に入らなくても、嫌味のひとつやふたつぐらいは言いたくなるでしょうが、本来はそこで「引き下がらざるをえない」のではないかと思うのですが…。

また、市長はそもそも、「教育委員会の職務権限をおかすような提案」それ自体を総合教育会議に出して、その提案内容の具体化を特別顧問に委託するようなこと自体「してはならない」のではないかと思うのですが…。

このあたりの市長、特別顧問、そして市教委事務局との関係が、どうも上記ブログの記事を見る限り、かなり混乱しているような印象を受けました。もしかしたら、「市長の意向」を背景にして、特別顧問がかなり上記のラインを逸脱した動き方をしてきた恐れがあるのではないかと思うのですが…。

ただ、このあたりの諸事情をていねいに解明しようと思うと、もっと吉村市長(当時)と大森特別顧問、市教委事務局とのメールなどでのやりとりを情報公開で入手して、事実解明の作業をしなければいけないと思うのですが。でも、そのメールのやりとり自体が「不存在」などと言われてしまうと、事実解明が難しくなりますよね。

一応、大阪市側も「大阪市では、市政運営の透明化及び市民に対する説明責任を一層推進する観点から、特別顧問及び特別参与が従事する職務の遂行に係る情報を公表しております。」といって、個々の特別顧問らがどういう会議体に出て、どんな意見を述べているのか、その概要くらいはわかるような情報公開は、ホームページ上でしています。ここをクリックしてもらうと、その特別顧問らの動きについて情報公開しているページに行きます。

ただ、上記の情報公開のページでわかるのは、ほんと概要程度のこと。たとえば「平成30年度第3回総合教育会議」の席で、特別顧問が「・人事評価制度においては、公正・公平さをいかに担保できるかが重要。・新たな人事評価制度の構築に当たり、同制度とは別に、学力にとどまらないより幅広い観点から様々な功績に報いるため、新たな表彰制度を検討してはどうか」と言ったという「主な意見」だけが紹介されています。

しかし、上記のブログ記事では、いくつか明らかになったメールの範囲だけでも、そういう「総合教育会議」の席上での発言以外にも、特別顧問がかなりひんぱんに市教委事務局とメールのやりとりを行って、自分の意向を伝えようとしていたことがわかります。これに「不存在」と言われているメールがでてくれば、もっと詳しいやりとりが解明できるのではないか…と思うのですが。

本当に大阪市が「市政運営の透明化及び市民に対する説明責任を一層推進する」というのであれば、特別顧問が市長と、あるいは市教委を含む各部局の担当者とどのような対応をしているのか、電子メールの内容も含めた情報公開(=つまり「透明化」と説明責任)をはたすべきだと思うのですが、いかがでしょうか?

吉村市長から松井市長に、先日の選挙を受けて交代されたところなので、ぜひとも特別顧問の業務内容に関するさらなる「透明化」と「説明責任」を、今度は松井市長の責任においてはたしていただきたいところです。

以上、これが上記のブログ記事に対する私のコメントでした。



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