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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

今日(3月3日)のプリキュアの話です。

2019-03-03 10:32:56 | プリキュア話

今日も日曜日ですので、いつもどおり朝のプリキュアの内容についてコメントしておきます。

今日の放送分も何気なく見てると「4人目のプリキュア登場」でおわりますけど、よくよく吟味すると味わい深い回に仕上がっておりました。以下、要点をまとめておきます。

(1)キュアセレーネ(香久矢まどか)登場

まず、今回から4人目のプリキュア・キュアセレーネが登場しました。キュアセレーネことまどかちゃんは、プリキュアたちの通う中学校、観星(みほし)中学校の生徒会長。お父さんは宇宙人対策を仕事としている政府高官(厳格な人)、お母さんは有名なピアニスト(ちょっと天然ボケな感じ)。まどかちゃんは弓道とピアノで賞をとったことがあり、成績も優秀、観星中の「月」と言われています(「太陽」は先週登場したエレナちゃん=キュアソレイユです)。
そして、お父さんからまどかちゃんは、「香久矢家は先祖代々、人々を導いてきた家柄。人々の気持ちをよくつかむために、あえて地元の学校に行かせている」とか、「学校で起こったことで心を乱すな、私の言うとおりにしなさい」と言われています。

(2)「仲間を守りたい」自分の気持ちに正直になるからこそ、親にウソをついて、キュアセレーネになる

さて、このまどかちゃんは、ひかる・ララ・エレナの3人のプリキュアたちの様子が気になってしかたがありません。まどかちゃんは、どうやら何か3人は隠しごとをしていると思っています。それが気になって授業中も、生徒会の会議でもぼーっとしています。
そしてとうとう、まどかちゃんは、校舎の裏側でひかるちゃんが妖精フワにミルクを飲ませている場面を見つけます。あわててフワを隠すのですが、肝心のフワ自体が「バイバイ、フワ~」といって現れてしまいます。「フワの存在がばれたらここに居られなくなるから、誰にも言わないで」とひかるちゃんたちに言われて、まどかちゃんは心が乱れます。
あるいは、まどかちゃんが、おにぎりをもったひかるちゃんたちの後をつけていくと、ララちゃんが自分の乗ってきたロケットを修理している場所に出くわします。「フワを守りたいから誰にも言わないで」とララちゃん、エレナちゃんに言われるのですが…。まどかちゃん、「父を裏切れない」と迷います。
というのも・・・。実は宇宙人対策をしているお父さんは、「家では一切、隠しごとなし」というルールをとっています。また、お父さんのやっている政府の宇宙人対策=宇宙人追放なのです。なので、仲間との約束とともにフワを守ろうとすると、まどかちゃん、お父さんを裏切らないといけなくなるわけですね。
そんなまどかちゃんに対して、なんと、ひかるちゃんは「先輩はどう思う? フワたちって悪い宇宙人なの?」と問いかけるんですよね。
そこへ、テンジョウたちノットレイダーがやってきます。ひかる・ララ・エレナの3人がプリキュアに変身してノットレイダーとたたかうあいだ、まどかちゃんはフワを抱いて逃げようとします。でも、ノットレイダーに追いつかれて囲まれてしまう。
「先輩はどうしたい?」「香久矢家に秘密はない」
その2つのことで迷いながらも、まどかちゃんはノットレイダーに囲まれて進退窮まってしまう。そんなときに、強い気持ちで「それでもフワを守りたい」と思った瞬間、プリキュアに変身するペンダントとペンが登場。ここからキュアセレーネになるわけですね。
「お父さまの言うとおり、人々のことを知ったからこそ、私はフワのことを放っておけないって思った」
そう言って、キュアセレーネは「セレーネアロー」という矢を放って、ノットレイダーたちを追い払います。
そのあと宇宙人対策の部下を連れて、お父さんがやってきます。「何かこのあたりで(宇宙人の)騒ぎはなかったか?」と聴くお父さんに対して、まどかちゃんは「いいえ、なにも」と返事をします。そしてお父さんが去ったあと、「心苦しい。でも、宇宙人の騒ぎはおさめたい」とまどかちゃんは言います。
・・・という感じで、今日の物語は進んだわけです。

(3)「子どもが親から自立するとき」という、今年のプリキュアの大事なテーマ

それでですね、このキュアセレーネ登場の今回を見てふと思ったんですが、「子どもが親以上に仲間を大事にしはじめるとき」というのが、実は「自立」のはじまりであり、そのときには「ウソ」をついたり、親を裏切るようなこともする、ということ。「ずっと、親の言いつけを守ることばかりの『いい子』では、子どもは生きていられない」ということ。どうやら今年のプリキュアは、そのことも描こうとしているのかな、と思いました。
特に優等生・まどかちゃんに対する「先輩はどうしたいの?」というひかるちゃんの問いかけ。これが鋭いですね。親がどうしたいかじゃなくて、ほんとうのところ、自分がどうしたいか。そういうことを問われたことが、きっとそういう機会が、まどかちゃんには乏しかったんでしょうね。
でも、まどかちゃんは今日、自分の本当の気持ちに目覚めてプリキュアになりましたが・・・。日頃、親に見せている自分と、本当の自分との間で、いろんな葛藤を抱え込むことになります。この葛藤をどう描くか、そして今後、どのようにまどかちゃんが自分の葛藤と折り合いをつけていくのか、今後のプリキュアの展開が楽しみです。

(4)「分断」を乗り越えるという、もうひとつの今年のプリキュアの大事なテーマ

もうひとつ今回のプリキュアを見ていて思うのは、まどかちゃんの父親が政府高官として、宇宙人対策=宇宙人追放という仕事をしているということ。
宇宙人プリキュア(ララ=キュアミルキー)や、外国にルーツのあるプリキュア(エレナ=キュアソレイユ)がいることなど、「異文化理解」や「多文化共生」が今年のプリキュアの大きなテーマだということは前にも書いたかもしれません。ただ、その「異文化理解」や「多文化共生」が「一筋縄ではいかない」ということも、このまどかちゃんの父親の存在が示していますね。このお父さんに対して、プリキュアたちがフワを守りながら、どのようにかかわっていくのか。そういうなかで、プリキュア制作陣なりの「異文化理解」や「多文化共生」の物語が描かれていくのではないかと思います。
また、このまどかちゃんの父親が「代々、香久矢家は…」と語るように、人びとを統治する「上流階級」と「下々」という分断も、今年のプリキュアの世界には存在しています。
でも、まどかちゃんはその「下々」の世界に入るようになり、ひかるちゃんたちと出会い、仲間になり、そしてプリキュアとして目覚めた。こういうまどかちゃんと他の3人のプリキュアたちとの交流のなかで、おそらく、階級的な分断を乗り越えていく物語も描かれるのではないかと思います。

(5)最後に、小ネタ的なものをいくつか。

・今回、観星中学校の人気者のまどかちゃんをライバル視する「桜子」というキャラクターが登場しました。今後も何度か登場するのではないかと…。過去のプリキュアにも似たようなキャラクターは居ましたね。
・「プリキュアのあいだでは先輩という呼び方はなし」ということで、今後、中3のエレナ・まどかに対して、中2のひかるちゃんは「先輩」と言わないことになりました。ちなみに、ララちゃんの生まれ育った星・サマーンには「敬語はない」そうです。まあ、13歳になったらみんな「おとな」という星ですからね、サマーンは…(笑)



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