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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

本当に「教職員の働き方改革」したければ、「これまでの教育改革の内実」を問うべき

2017-06-23 05:52:04 | 受験・学校

松野大臣「看過できない状況」 教師の働き方改革で
テレビ朝日系(ANN) 6/22(木) 11:51配信

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20170622-00000023-ann-soci

あのさあ、文部科学大臣。

そもそも、その「看過できない」状況つくったの、あんたたちの教育改革だよ。

なにしろ・・・。

・そもそも教職員の数を減らして、なかなか人増やさなかったりするし・・・。

・アクティブラーニングだの、小学校英語だの、道徳の教科化だの、全国一斉学力テストと学力向上のPDCAサイクルだの、次々にいろんな教育改革をやって「あれもやれ、これもやれ」と仕事をおろし・・・。

・おまけに、上からおろされる教育改革の仕事については、必ずちゃんとやったかどうか、点検して報告しろとか言われて、記録を含む数々の書類が用意され・・・。

・学校にいろんな苦情がもちこまれたら「現場でうまく対処しろ」「どんな対応したか書類残せ」だし・・・。

・地方議会対策だの、マスコミからの問い合わせだので、次々にいろんな調査を行政からおろして、書類増やすばっかりだし・・・。

・「地域に開かれた学校」「学校の情報公開」でホームページつくれ、地域の人と交流しろだし・・・。

・おまけに中学校や高校だと進学実績上げろだの、特色ある学校つくれだの言うてくるわけだし・・・。

・学校現場から「予算が足らんから、人手が足らんから、ほしいねん」と言おうと思ったら、行政は「まずはそれを申請する書類出せ。その内容を精査して、予算つけるか、人をつけるか決める」とかいうわけだし・・・。

・そして、そういう書類をつくるのだって、情報管理を適正に行なうとかいって、学校のパソコン以外ではできないものもいっぱいあったりするわけだし・・・。

こういうことの累積だぜ、教職員の多忙化って。

その結果として、夜遅くまで残らなくちゃいけないとか、土日も出勤しなくちゃいけないだの、部活動まで面倒見られないだの、そういう現象が起きているわけ。

そして、こういう構造のなかで、それこそ、教職員たちから子どもや家庭に対する共感の力が失われ、子ども理解の深まりも、実際の子どもへの対応の柔軟性も損なわれ、多くの学校で子どもたちの「問題」行動、子どもに関する重大事故・事件が多発し、教職員が適切に対応できないような状況が起きているわけ。子どもに怒鳴りちらしたり、暴力行為を起こす教職員だって、こういう構造のなかで生まれてきているわけでしょ?

だからさ、文科省や政権与党等々は、その「看過できない」学校現場の教職員の勤務状況をつくった、おのれらをまずは問うべし。

あんたたち文科省や政権与党はある意味で、現場の教職員にものを考える力を奪うために、政権に歯向かう力を奪うために、意図的にこういう状況をつくったんではないのか。そういうことすら思ってしまうぞ、私は。

そして、この教職員の働き方改革を考える会議に出てる「有識者」とやら。

私は、上に書いたような構造に徹底してメスを入れ、文科省や政権与党とケンカするくらいの見識と覚悟を持った「有識者」でない限り、本当の「働き方改革」なぞできないって思う。なので、いまの段階から「お前ら、ボンクラじゃねぇの?」「文科省や政権与党の決められた筋書きどおりに「働き方改革」についての意見言ってるような有識者って、本物の有識者じゃねえぞ!」と、最初に言っておく。(だから「中教審なんてこの際、メンバー総入れ替えしたほうがいいんじゃないの?」とまで、あえて言っておく。)

<追記>

どう考えても、この時期に「働き方」改革もってきたのは、森友・加計問題や共謀罪法案審議で低下した内閣支持率を回復させるか、それとも少しの間だけでも内閣への攻撃をかわすために印象操作をしたいか、そのどっちかにしか思えないですねえ…。

あと、つい最近、「教職員の超過勤務時間に制限を」みたいなネット上のキャンペーンやっていたみなさん。あなたたちの言ってきたことは、一定、こんな形で文科省の動きをつくりました。それは一定の成果かとは思います。

でも、あなたたちにできたことは、そこまでですよね。

では、あなたたちはここから先、文科省に二の矢、三の矢、撃てますか? 

こういう形で「教職員の働き方改革」に動き出した文科省に、「いや、その方向性ではなくて、もっとこんな形で改革しなきゃだめでしょ?」とか、次々に批判の声を浴びせられますか? 

本気で「教職員の働き方改革」を求めたいなら、そこが今後、あなたたちの側にも問われてきますよ。


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