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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

パブリック・コメントの圧倒的大多数がNOと言った大阪市の市政改革プラン素案

2012-06-10 11:25:33 | ニュース

http://www.city.osaka.lg.jp/shiseikaikakushitsu/page/0000171805.html

大阪市の「市政改革プラン(素案)」に対するパブリック・コメントの集計結果が出たようです。上記のところでその概要を見ることができます。(下記の表も参照してください。上記の集計結果のPDFファイルにある表です)

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28399通の意見のうち、この素案に何らかの形で反対という立場で意見を寄せているものが、26763通。もう、パブリック・コメントを寄せた人たちの圧倒的大多数が、この素案に「反対」の意思を表明したといってよいでしょう。少なくとも、パブリック・コメントを寄せた人からは「総スカン」を食っている、誰も評価していないのが、この素案だといってよいでしょう。

今回はとりわけ、パブリック・コメント受付の方法のひどさ、たとえば受付期間の短さ、ネット上で素案をアップして「見ろ」というような対応、障害のある方々への告知のしかたなどの問題があったわけですし、大阪市議会からも意見募集の方法に苦言が呈されていたはずです。そんななかでも、いろんな立場から、この素案に対してこれだけの「反対」意見が集まったということ。そのことは、いかにこの素案がひどい内容であったか示していると思います。

なお、橋下市長は特に反対の声が大きかった「子どもの家事業」の件について、次のとおり、自分たちの素案での提案内容は、子どもの家事業を廃止するというのではなくて、施策を留守家庭児童対策事業に一本化するものだと釈明しています。

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000171636.html

しかしながら、その留守家庭児童対策事業への一本化で、従来行ってきた子どもの家事業の「よさ」がなくなってしまったり、子どもの家を営んでいる各団体の存続が危ぶまれるとか、そういう危険性については、市長サイドは全く考慮していません。要はどれだけ批判や反対の声があろうとも、今後も自分たちにとって都合のいい形で「施策の選択と集中」をやりたいだけ、そういう文章にしか、これは読めません。

もしも本当に「子どもの家をなくすつもりがない」と思っているのであれば、まずは素案でのこの部分は撤回すべきでしょう。また、どうしても「施策の選択と集中」をやりたいのであれば、留守家庭児童対策事業での学童保育や子どもの家などへの補助、支援の水準自体を向上させ、従来どおりの取り組みが継続できるようにするべきでしょう。そういうことが今のところ、市長サイドからの動きに見られない以上は、どのような言い訳をしても、やはり最終的に「なくなってもいい」と思ってこの素案のような提案をしたのだと言われても仕方がありません。今後も引き続き、批判や反対の声が寄せられても、しかたがないのではありませんか。

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node%2F1372

それこそ、大阪市の子どもの家事業がどのようなことにとりくんできたのか。そのことは、上記の動画を見れば一目瞭然です。学童保育とはかなり趣旨の異なる取組をしています。それをこの素案では無理やり、子どもの家ををつぶすつもりはないとかいいながら、一本化しようとしているわけです。もしもこの素案のとおりの改革を実施することによって、既存の子どもの家が存続できないかもしれないとしたら、やっぱり、この素案自体がおかしいのではないですか。

もっとも、私が容認しうる留守家庭児童対策事業への子どもの家事業の統合の形が、ひとつだけあります。それはなにか。大阪市内のすべての学童保育(=留守家庭児童対策の取り組み)を、子どもの家にしてしまうこと。具体的にいうと、今ある子どもの家の取り組みにならって、どの学童保育においても、何らかの事情で子育て困難な状況にある家庭への支援を行ったり、さまざまな悩みを抱えている子どもたちの「かけこみ寺」的機能を持つことができるように、職員の増員等が可能となるよう補助金を大幅に増額すること。このような統合の形であれば、私は容認します。

でも、今の橋下市長には、そういう発想はないんでしょうね。

経費を削る方向での施策の「選択と集中」はあっても、今後の子どもの権利保障や、自治体としての子ども施策をより強力に実施するための「選択と集中」という発想は、今の大阪市政を動かしている人々のアタマの中にはないようです。

あと、フェイスブック上で、次のような記事を見つけました。

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この記事について思うことは、「子どもが笑う」といって当選した当時の橋下知事が、就任後、たとえば国際児童文学館を中央図書館に統合してなくすとか、子ども施策関連の予算をいくつか切ってきたとか、そういうことをマスメディアはちゃんと伝えてきたのか、ということ。そのことをきちんと伝えてきたのであれば、きっと彼が大阪市長になったとき、どんなことから手始めにやるのか、それも選挙前に伝えられたのではないか、ということ。そういう大阪の政治情勢に対して、これまでのマスメディアとしての取り組みがどうだったかという反省が今、必要とされているのではないか、ということです。

「子どもの家」に関してこのような記事が出ることはたへんありがたいことですが、と同時に、「今までなんでこういうことを取り上げなかったの?」という思いが、マスメディアに対してはぬぐえません。実際、いろんな批判などにもめげずに、がんばって橋下府政(当時)や橋下市政(いま)の子ども施策などに関する諸問題を取り上げてきたマスメディア関係者もいるわけですからね。

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