最近は少なくなりましたが、住職になりたてのころ、法事の後のお斎の会場での出来事です。(お斎とは法要の後の精進落としのことです。)
法話はすでに本堂で済ませてありますので、来賓もしくは施主の挨拶、献杯の発声が終わるといよいよ食事開始です。
すると、待ってましたと言わんばかりに、どなたからか声がかかります。「ちょっと質問していいですか」、私への質問です。
年忌の法要には、故人の家族や親せき、友人などが集まりますが、質問してくるのは施主さんやその家族ではなく、大半が親戚や他の出席者です。
どんなことを質問されるのかといいますと、「法事のときにお布施を入れる袋の表書きにはなんて書いたらよいか」とか、「お焼香は何回すればいいのか」とか、「お線香を立てる本数は何本?」というようなことです。
また、「お坊さんの修行はどんなことをするの」、「お坊さんに声をかける時なんて呼んだらいいの?宗派によって呼び方が違うのか」などの質問もあります。
ほとんどが教義的なことではなく、日常疑問に思っていることのようです。
一人が質問すると、次々に私も質問、私も聞きたいというように、かなり長い間質問コーナーが繰り広げられます。
住職になって、数年間はそんな時期が続きました。
私からすると、質問されることはたいてい昔から決まっていることで、なぜ今ここでこんなに質問されるのかといった内容がほとんどです。
お寺に住んでいると当たり前にわかっていることが、一般の人にとってはわからないことなんだということがよくわかる瞬間です。
また、個別のお寺についての質問をうけることがあります。
それぞれのお寺によってやり方が違いますから、そのお寺のご住職にお聞きくださいというと、「とても怖くて聞けない」「聞ける雰囲気じゃないし」という答えが返ってくることもしばしばありました。
どうも、ご自分の菩提寺は敷居が高くて聞きにくいと思っている方が多いようでした。(実際聞いてみて怖い思いをしたのか、それともイメージだけなのかはわかりませんが)
私が、若かったせいか、あるいは聞きやすい雰囲気なのかはわかりませんが、気軽に声をかけてくださることに対しては、ありがたいと思っていました。
そんな経験もあって、もっと親しみやすい開かれたお寺にしようと心がけることになったわけです。
清運寺独自のお祭り「清正公祭り」や近隣の寺院と共同で行うイベント、ブログやホームページなど、どこまでできるかはわかりませんが、皆さまに近づけるようなお寺にしていきたいと思います。
幸せのハードルもお寺の敷居も低くありたいものです。
写真はカリンの花です。いつもの年よりも花の色が薄い感じがします。