米ソが熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた1960年代に、アメリカ初の有人宇宙飛行計画を支えた、3人の黒人女性技術者たちの奮闘を描いた事実に基づくドラマ。監督は「ヴィンセントが教えてくれたこと」のセオドア・メルフィ。
1961年、ヴァージニア州ハンプトン。NASAのラングレー研究所に、3人の黒人女性技術者たちが配属されます。ずば抜けた数学の才能をもつキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は有人飛行計画に携わる計算手として。ドロシー(オクタビア・スペンサー)は計算部を束ねる管理職代理として。メアリー(ジャネール・モネイ)はハードウェアのエンジニアとして。
しかし非白人への分離政策が行われていたこの時代、彼女たちは能力に見合った責任ある仕事や、正当な役職、技術を学ぶ機会を与えられず、白人男性の仕事を陰で支える存在として、理不尽な立場に追いやられていました。それでもめげずに仕事で結果を出していくうちに、彼女たちの実力が認められるようになり...。
今だから打ち明けると、ゴーストバスターズ(2016)にはちょっとがっかりでした。だって女性科学者たちがちっともかっこよくなかったんだもの...。だから本作の公開をとっても楽しみにしていました。そう、私はこういう映画が見たかった♪ しかもこれが実話だというのですから、なおのこと痛快で、うれしくなりました。
女性で非白人という2つの垣根を乗り越える彼女たちですが、映画は悲壮感がなく、明るく前向きに、時にユーモアを交えて描かれているところがよかった。私の大好きな「ヘルプ」や「ラビング」のテイストに似ています。彼女たちがしなやかに困難に立ち向かう姿が清々しく、さわやかな感動を覚えました。
NASAのラングレー研究所は、以前住んでいたヴァージニアの家のすぐ近くですし、フロリダのケープ・カナヴェラルも旅行で行ったことのある懐かしい場所。そして私自身、電卓が信じられずに自分で検算するような変な子供だったし、プログラミングに携わり、アメリカの大学で夜間クラスに通っていたこともあるし...
いっしょに語るのはあまりにおこがましいですが、時代背景は違うものの、同じ非白人の女性として共感できるところがたくさんありました。「成功しそうになると壁ができる」「誰もがが”最初の人”になれる」など数々のセリフも印象的。差別を声高に叫ぶのではなく、結果を出すことで実力を証明し、論理的に説得して道を切り開いていく姿がまぶしかったです。
数学自体が文化などのバイアスを受けにくい、万人に公正な学問ということも大きかったのでしょうね。そして肌の色や性別という色眼鏡なしにキャサリンを正当に評価する上司(ケヴィン・コスナー)や、宇宙飛行士のジョン・グレン(グレン・パウエル)のなんてかっこいいこと。こういう影響力のある人が先頭に立つことで周囲の反応も変わってきます。
クラシックでカラフルな、ワーキングウーマンのファッションもすてきだったし、「ムーンライト」のマハーシャラ・アリとジャネール・モネイが出ていたのもうれしかった。Wikipediaによると、事実と時間軸が異なる部分もあるようですが、それを超えて心に響く作品でした。