せっかく夏の京都に行くので、今回は川床での食事を楽しみたいと思っていました。直前のことであまり選択肢はなかったのですが、高雄のもみぢ家さんの予約を取ることができました。最初は鴨川か貴船と思っていましたが、高雄は行ったことのない場所だったので、観光も兼ねて行けてちょうどよかったです。
高雄は市街の西北、車で30分ほどの山の中にあります。路線バスも通っていますが、私たちはもみぢ家さんの送迎を利用しました。
車を降りて、緑の木立の中、川音に誘われるように吊り橋を渡ると、到着にあわせて鮎を焼いてくださっていて、香ばしい匂いとともに、煙がもうもうと立ち上っていました。やがて煙の間から、川沿いにずらりとお座敷が並ぶ様子が見えてきました。
お店に着くと、仲居さんが早速お席に案内してくださいました。高雄は市街より気温が3~5℃低いとのことですが、さわやかな緑と川のせせらぎが目に耳に心地よく、汗がす~っと引くのを感じました。お席から見える川の眺めも趣があり、清涼感たっぷり。生き返ります。
焼きたての鮎と、おそうめん、お重に入った季節のお料理など。日常を離れ、ゆったりとした時間がすごせました。
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食事のあとは、栂尾(とがのお)にある高山寺まで散策しました。もみぢ家さんからは清滝川沿いをぶらぶら歩いて、片道20分ほどの距離です。
高山寺の創建は奈良時代と伝えられますが、正式には鎌倉時代、明恵上人によって開祖されたとされています。山奥にひっそりと佇む寺院ですが、ここにかつて「鳥獣人物戯画絵巻」をはじめ、数多くの国宝、文化財が収蔵されていました。現在ではその大部分が、京都および東京の国立博物館に寄託されています。
鳥獣人物戯画絵巻は、甲・乙・丙・丁の4巻で構成され、原本は甲・丙が東京国立博物館、乙・丁が京都国立博物館に寄託保管されています。明恵上人の住居跡である石水院に、模本が展示されていました。石水院は、国宝で世界文化遺産でもありますが、それを感じさせない楚にして凛とした建物でした。
鬱蒼とした森に囲まれた境内を歩いてまわりました。写真の金堂は室町時代に焼失した後、江戸時代に仁和寺から移築されたものだそうです。
このほか、日本最古の茶園があり、びっくりしました。明恵上人が、中国に留学した栄西から贈られた茶種を栽培したのが始まりで、かつては栂尾のお茶を本茶、それ以外は非茶とよばれたそうです。宇治茶は栂尾の苗木を移植して、栽培されたと伝わっています。
しんと静まり返った境内を歩いていると、世界が遠くに感じられました。
兵庫・京都旅行記はこれで終わります。おつきあいくださり、ありがとうございました。