ジェシカ・チャステイン主演、政治の世界を影で動かすロビイストの知られざる実態を描いた社会派サスペンスです。監督は「ペイド・バック」(The Debt・2010)「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」のジョン・マッデン。
エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は、ワシントンD.C.の大手ロビー会社に所属する凄腕ロビイスト。しかし、銃規制法案を廃案に仕向ける仕事を依頼されたため、自らの信条に合わないと断って、部下を引き連れ、銃規制賛成派の小さなロビー会社に移籍してしまいます。
圧倒的な資金力と、各界に強力なパイプを持つ巨大ロビーカンパニーを相手に、スローンは手段を選ばない大胆な戦略を展開し、法案実現に向けて果敢に挑んでいきますが...。
ジェシカ・チャステインが大好きなので楽しみにしていた本作。実際より大げさに脚色されてはいるでしょうが、アメリカのロビー活動の、正義も倫理もかなぐり捨てたすさまじい駆け引きに圧倒されるとともに、しびれるような興奮を覚えました。
あっと驚く結末は、よくよく考えてみたらなるほどと納得するものでしたが、全編にわたるセリフの洪水と丁々発止のやりとり、優勢・劣勢がめまぐるしく変わる展開に、見る者に考える隙を与えなかったのだ、と思い当りました。
同監督の「マリーゴールド・ホテル~」のまったりした作風とは真逆の雰囲気ですが、マッデン監督はチャステインとはモサドのスパイを描いた「ペイド・バック」で組んだことがあり、今回彼女をヒロインに起用したことを深く納得しました。
スローンが黒を基調にしたハイファッションに身を包み、論理と機転と瞬時の判断で相手を徹底的に打ちのめそうと戦う姿はまるでサイボーグのよう。目的のためには手段を択ばず、身内の心の傷さえ利用する姿を見ると、彼女にとっては正義は二の次で、ただ勝利の味に酔いたいだけなのでは、と思うこともありました。
それでも周囲が彼女に惚れ込み、支えようとするのは、自らをとことん追い詰める厳しさ、そして信念の前に自分も泥をかぶる覚悟があるとわかっているからだと思います。彼女の生い立ちや私生活には全く触れられていませんが、へたに浪花節にせず、最後までタフでクールなヒロインとして描いていたのがよかったです。
映画の中でロビイストたちがやっていることは完全に違法行為ですが、証拠不十分でうまく言い逃れができればセーフということなのでしょう。決してきれいな世界ではありませんが、それでもテレビで正々堂々と議論を戦わせている場面を見ると、民主主義が根幹にあることを実感しました。