横浜焼売(シウマイ)物語2025

ハマっ子のソウルフードは崎陽軒のシウマイ。漫画書き柴犬溺愛落語らぶ晴れ時々ランニング、更新随時

キンモクセイの香りが苦手だった、わけ

2014-10-04 | 日常茶話
町にはキンモクセイが香っています。
秋ですねー。


でも、でも、ですね。

ここだけの話ですが、以前は個人的にこの香りがあまり好きではありませんでした。

なぜ?ときかれても自分でもその理由がわからなかったので説明できなかったのですが、
ちょっと調べものをしていて偶然、そのナゾが判明。
わかってみたら、「なんだ。そうかー」という感じ。
以来,まったく気にならなくなりました。

その事情をお話しします。

キンモクセイはおそらく昭和のお宅のほとんどに植えられていたモクセイ科の常緑樹です。

で、どこに植えられていることが多かったかというと…

トイレの近く。

お家にキンモクセイがあるよ.という方
試しにその場所を調べてください。建て替えて間取りが変わった、と言う方も以前のお家の間取りを調べると、
おそらく8割くらいはビンゴ!ではないでしょうか。

そうです。キンモクセイはトイレの匂いを相殺するために植えられた生活の木だったのでした。

お若い方にはピンとこないかもしれませんが、わたしの幼少時.まだトイレはほとんどが汲取式。
定期的にバキュームカーというのが巡回してきまして、各家の汚水タンクから吸い上げていってくれるのですが
その時の匂いと言ったら、もう鼻つまみの世界でした。
余談ですが、
かの親日で有名な作家,ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)先生も、
この日本式トイレの香りには耐えられなかってそうで、
使用する時は必ず、パイプをくわえてもうもうと煙を漂わせながらだったと、
随筆の中で書かれています。

1964年の東京オリンピックを境に日本は高度成長期にはいりますが、それでもまだ都市部をのぞいては
水洗式のトイレよりもいわゆるボットン便所というご家庭が多かったのでありますよ。

ですから、大抵の家のトイレは北あるいは北よりの日中の気温が上がりにくく風通しの良い場所に設置する、と決まっておりました。
今のマンションなどでよくみかける『水回りを家の中央にまとめる』なんてのは、インフラが充分に整備された今日だからこその間取りです。

そしてボットン便所のその匂いを少しでも軽くすべく、香りの強いキンモクセイが付近に植えられた、というのが

各家庭一本のキンモクセイにはそういう事情があったのでした。

参考文献はこちら。http://www.excite.co.jp/News/bit/00091161497065.html

このためトイレの消臭といえばキンモクセイの香りが定番だったそうで、
その延長線上に
キンモクセイ=トイレの消臭剤という香りの刷り込みが。

その後、ちょっとおしゃれな感じをということでレモンにバトンタッチ。

実はこのレモンの香りも苦手だった時期があって、それもこれもみんなトイレの消臭香と重なっていたから、だったんですね。

実際に認識しているのはレモンあたりからなんですけど、香りの記憶ってすごいわ。

ちなみにその後、世間のトイレの消臭はラベンダーの香りに移行。

ところがわたしがキンモクセイやレモンの香りが苦手になったのと同じ理由で

ラベンダー=トイレの香り
というイメージが定着してしまい、ラベンダーに何の罪もないのに敬遠する人が出てきたらしいのです。

これではいけない、ということで今のトレンドは
セッケン、あるいは無香。
そして、以前の強い刺激臭からソフトな微香へとシフトしているとのことです。


考えてみれば、香水を含む『香り』というのは、当初は不快な匂いを消す=消臭
が、その役割でした。

時代が進み、人の生活が豊かになるにつれ、香りに対する人間の認識も変わります。
香りの心地よさがメンタルな部分に働きかける作用についての研究も進み、
『香り』から.『アロマ』へ。

さらに、その香りを作る技術も進化します。
消臭剤も
強い匂いで相殺するのではなく、匂いの成分そのものを分解する方法にシフト。
その上で,香りを楽しもうというわけです。

これらはすべて最近のこと。
気持ちにゆとりがないと、こうはいきません。
あるいは、気持ちにゆとりを持ちたいという人が増えたのかもしれません。
いずれにしても、良いことだと思います。


え?キンモクセイ?
もちろん原因がわかったので刷り込みをリセット。
秋の香りとして、楽しんでいますよん。


花も、かわいい♪