メリークリスマス!
などと脳天気に言い放つには、あまりにも厳しい経済状況です。
最強の製造業とも言われるトヨタが赤字決算に転落するとは、
なんちゅう、おそろしい話かと。
国の経済政策とか産業振興施策、もっと根本的なところから、
いろいろと考え、対策を実施せんとあかんと思うのですが、どないでしょ。
というような話は、私の職務上の本分とは関係が薄いので、昨日の続きをば。
ちょっと長い目の日記ではありますが、論旨は非常に明快でもあれば、
分かりやすいつもりでいますので、是非是非、お付き合いくださいませ。
質問時に作成した表なども入れておりますので、こちらも、是非、ご参考に。
それでは早速、はじめます。
さて、ここまで議論が紛糾している原因は、四次総の内容に、
様々な重要な問題点が存在するという点にあります。
課題を列挙するとキリがありませんが、私は、その中でも、とりわけ重要なのは
「財源的裏付けを持った、しっかり遂行できる計画」という、
総合計画が当然備えるべき要素を、備えていない点にあると考えています。
「基本計画(案)」によりますと、
「経済成長率はその時点の経済状況を踏まえGDP名目成長率を1.5%とし」
「長期的な予測に最も適している計量経済学的手法を用いて推計した」結果、
「今後10年間に投資的事業などに当てることのできる一般財源
(普通会計ベース)は約915億円」と想定した、とされています。
しかしながら、この予測には何重かの意味で大きな問題点があります。
まず一点目は「GDP名目成長率を1.5%とし」たという点です。
お手元の資料の「表①」⇒「1.pdf」をダウンロード をご覧下さい。
これは1997年度から2006年度まで10年間の名目GDP成長率の推移です。
これによりますと、過去10年間のうち名目GDPの成長率が1.5%を超えたのは
2006年度だけで、残り9年間の成長率は全て1.5%を大幅に下回っています。
唯一上回った2006年度も1.5%を0.1%上回っただけですし、
1.5%成長どころかマイナス成長となった年度が10年中4年を占めています。
結果、この10年間の名目成長率は平均、僅か0.1%に留まっています。
しかも、現在の経済状況は「100年に一度の大不況」ともいわれる
非常に厳しい状況にあります。
ここ数年の間、名目GDP成長率が1.5%を上回るのは困難でしょう。
また社会全体の高齢化の進行や、いわゆる非正規雇用社員の
急速な増加に代表される雇用形態の構造的な変化などを考えると、
長期的にも、過去の実績を大幅に上回る成長率の達成は期待薄です。
総じて、今後10年間の名目GDPの平均成長率を1.5%とした四次総の見込みは
過大である可能性がきわめて高いと言えます。
また「長期的な予測に最も適している計量経済学的手法を用いて推計した」
という点も問題です。
今回の財政収支予測に使われた「計量経済学的手法」の主要な部分は、
「マクロ計量手法」と呼ばれるものです。
資料内で述べられている「長期的な予測に最も適している」という説明とは裏腹に
経済学的には「マクロ計量モデルによる長期計算は出来ない」のが常識です。
一般的な学説によりますと、マクロ計量モデルで計算できるのは、中短期、
せいぜい5年までであり、10年を超えるものには意味がないとされています。
つまり「長期的な予測に最も適している計量経済学的手法」という記述は、
事実に反しているのです。
この点、資料に言う計量経済学的手法によって国家運営を行った
旧ソヴィエト連邦をはじめとする多くの国々が、現在、どうなっているか?
をお考えいただければ、と思います。
ちなみに第3次総合計画(以下、三次総と呼びます)でも「計量経済学的手法」
による財政予測が行われましたが、このときの予測結果も
現実とは大きく異なったものとなりました。
表②⇒「2.pdf」をダウンロード で平成11年度から平成18年度までの
三次総の財政予測と実際の決算数値を比較しました。
三次総の想定では約839億円の財源が発生するはずが、実際には
約260億円もの不足が発生。
予測との差額は実に約1099億円に上りました。
単純計算で「毎年、約140億円もの過大な収入を見込んでいた」
ということであり、結果として、多くの事業の積み残しが発生したのです。
四次総の策定にあたって、この反省から学ぶところはなかったのでしょうか?
予測不可能な10年も先までの財政フレームを作成し、それを前提とした
行政運営を行うこと自体、ナンセンスです。
行政においては計画が一旦作成されると、それに縛られて多くの話が、
言わば既定方針として進む強い傾向があります。
とりわけ総合計画は本市の最重要計画であり、今後策定される各種計画や
プランのバックボーンとなるものです。
当然、各計画やプランは総合計画の強い影響を受けることになるでしょう。
私は、四次総計画の示す財政予測が、非常に楽観的なものであるがために、
今後の本市の財政運営が現実の状況に合致しない放漫財政に
つながるのではないかということを、強く危惧しております。
といった前説を踏まえて、次回は具体的な質疑の内容をば。
それでは失礼いたします。