二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

第27回 (社)生体調整機構制御学会へ参加 ③‐1

2009年09月15日 | 鍼灸
今回のシンポジウムは「医療の水際での鍼灸診療-鍼灸院来院患者に対する実態調査-」ということで、(社)生体調整機構制御学会の8研究班の中の、不定愁訴班・情報評価班・生体防御免疫疾患班・生活習慣病班の各班に鍼灸院における実態調査についてお話がありました。

冒頭、司会を務める本会代表理事である黒野保三 先生がこのシンポジウムを設けた理由を話されました。この話を聴けただけでも、交通費と参加費を払って参加したかいがあったと感じました。先生は緒言と結びをされたわけですが、これだけでも教育講演に匹敵するくらいの内容だったと思います。

私が題名をつけるなら「鍼灸師がおかれている立場、それをとりまく環境」ですかね。

わが国の先端医療、ゲノムの解明など遺伝子レベルで、生体防御機構免疫学、脳科学、再生医科学、医療工学など目覚ましい進歩をとげ発展し続けており、ゆるぎない方向へ進んでいます。しかし、医療行政や水際医療では先端医療と比例するようにはなっておらず、医師不足等の問題により閉鎖を余儀なくなれている医療機関が増加しています。

この問題に対し医療行政は、医師とともに、看護師、歯科医師、獣医師などともに協力して医療を行おうという機運が高まってきており、新たに診療看護師という立場をつくるような動きもあります。

鍼灸師は、国が医療教育機関として認めた鍼灸大学または専門学校で3・4年間、医学教育、専門教育を受け、国家試験を行い、合格者には開業権が与えられ、保険診療も認められています。このような立場にある鍼灸師こそ、水際医療や地域医療においてチーム医療として協力していくべきであると提言されていました。

しかし日本の医学・医学会の実情では鍼灸師は軽視され、チーム医療に入れない方向に進んでいます。日本心療内科学会の職種分類が示され、鍼灸師は分類にも入っていないということでした。また、日本統合医療学会(IMJ)の認定対象者というものも示され、鍼灸師は認定師としての対象となっていますが、”ただし”(社)全日本鍼灸学会の認定鍼灸師であるこという条件が付されているということです(ちなみに、あん摩・マッサージ・指圧師の条件は(財)東洋療法研修試験財団の生涯研修終了証を受けたもの)。同じ認定師でも鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師にだけ条件が付されているというところを皆様考えてほしいとのことでした。一定の研修を受け常に向上心を持ち自己研鑽を行っているということを形で表していかないと医療としては認められないということでしょう。

また、統合医療学会は、医師や医学者が中心となって西洋医学が中心となって、かつ、伝統医療などの代替医療の利点を生かし、評価方法を検討し、科学的根拠を見出して「国民のための医療の道」、テーラーメード医療を構築しようと2000年の創設から活動している学会です。もし、統合医療がある程度かたちになり、鍼灸師が医療に入れる条件として様々な要求がなされた場合、それに対応できる学問、技術を兼ね揃えた鍼灸師が何人いるのでしょうか。自分の胸にも手を当て考えると、先の先のことを考えれば「今」からやっておかないと遅いなと危機感を感じたのでした。

東洋医学教育に関しては、欧米やオーストラリアや中国、韓国では鍼灸治療はすべて医師あるいはそれに準ずるレベルのものが行うことになっています。中国や韓国では、中医学専門の大学で学び、難関な試験に合格してはじめて資格が与えられます。この資格の社会での信頼は高く、尊敬される職業の一つとなっているということでした。
日本ではWHOより東洋医学教育のレベル向上を要求されていましたが、大学医学部で2単位以上の東洋医学教育を組み込むことを法制化したことにより、厚生労働省、文部科学省ともに一応の結論付けをしようとしています。しかし、鍼灸師養成教育機関での教育、あるいは卒後教育の高度化は行おうとしていません。というお話もありました。
また、1998年に厚生労働省が、経営の不安定化や質の低下を懸念して、新設の専門学校の申請を認めなかった問題の裁判が福岡地裁で行われ、その厚生労働省の対応を取り消す判決が出てから14校であった学校が96校(2009年4月調べ)に増設され、教師の質の低下、卒業後の鍼灸師の格差が問題となっているとのことでした。

鍼灸診療は本来、中医学がうたっている全科の症状に対する能力があるにもかかわらず、多くは五十肩や腰痛など整形外科領域の範疇にとどまっているのが鍼灸界の現状であるということも話がありました。全世界に拡がりつつある鍼灸診療において日本の行政、日本の鍼灸師は遅れをとっていることを認識すべきであることも強調されていました。自分さえよければそれでいい、という考えは捨てないと鍼灸師が行う鍼灸診療の未来は…なんでしょうね。これは患者様を診るときにも繋がってくる考え方だと思います。一人一人が鍼灸診療の未来をつくっていく原動力であり、逆に言うと厳しい言い方かもしれませんが足手まといになるのかもしれません。それだけ世の中(医療、経済、社会)大きな流れで常に変化しているということですね。

東北大学医学部や他の大学の医学部でも東洋医学教育が組み込まれています。漢方中心ですが鍼灸も入っています。統合医療の一部として鍼灸が医療に組み込まれた時に、鍼灸医療は統合医学の中で活きていくが、鍼灸師がその中でチーム医療を担って活きていくことができるか考えておくことも必要でしょう。あり得ない話でもないと思います。

統合医療に関して世界で起こっていることということで、①伝統医学や鍼灸、マッサージなど患者中心の医療である統合医療が注目されてる ②統合医療を利用する市民が世界に拡がっている ③各国政府が統合医療を推進している ④治療から予防・健康の医療へ変換している ⑤新しい健康産業を育成している ということでした。
各国政府が行っていることとして、①大学や病院に統合医療学科や部門を開設し、教育、研修、臨床を支援している ②国立および州立の統合医療センターを開設している ③統合医療を軸とした健康産業を育成し、健康都市を開発している ということでした。
それを受け、わが国が行うべきこととして、①統合医療の実態を調査する調査委員会の設立 ②調査研究費の支援 ③統合医療センターを開設 ④大学、病院に統合医療学科、あるいは部門の開設 などでした。

このような状況では、やはりおのおの鍼灸師としてのレベルを高め、常に向上心を持ち臨床に(患者様に)向かわなければいけないな~と心が引き締まる思いでした。


司会の黒野保三 先生


シンポジストの先生方

内容が豊富でもう少し書いておきたいのですが、長文になりましたので、さらにさらに、その4へ続くので、お付き合いお願いしま~す。

二葉鍼灸療院 田中良和
コメント (1)
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