特別講演では、青木先生が「生活習慣の変化と疾病構造-明治・大正・昭和の軌跡」ということで、時代における国民生活ことに食生活と栄養摂取の変化を中心に話して頂き、”今、なぜ生活習慣病なるものが世の中に蔓延しているのか”という事柄に関して、事実と疫学的一考察から論じて頂きました。
また、江戸時代に関して最近、様々なことが分かってきており、鎖国をしていた関係上、日本本来の生活を色濃く残した文化であったようです。そこまで戻れとは言いませんが(無理でしょうね)、循環型社会であった江戸時代をもう一度見つめる時代に来ているのかもしれません。
要は、政治、経済、社会、産業組織が大きく変わり、労働形態、生活水準も変化、人口なども急増すれば、生活様式や習慣が激変していくことも当然であろうと思われます。さらに、黒船襲来から明治維新により、西洋文明が雪崩のように入ってきて、日清・日露戦争、大東亜戦争を経験することで大きな流れとしては国民生活を大きく激変せざるを得なかったとお話の中で感じました。
☆生活習慣病になる図式は(先生の話を聴き私なりに)…
過去→現代(食)
伝統食(低蛋白・低脂肪・穀物野菜中心食 素食 粗食)
↓
現代食(高蛋白・高脂肪食 加工食品〈大量の添加物〉 大量消費〈満腹〉)
過去→現代(運動)
交通手段の限定(ほとんど歩行での生活 たまに公共交通機関使用 生活の中に運動があり 労働量、運動量は自然に増加)
↓
交通網、インフラの整備、交通手段の増加・普及(自家用車などでほとんど移動 日常生活でも電化製品の普及・機能向上、生活の中で体を動かす機会がほとんどなくなる 体を使う労働量、運動量の大幅減少)
大東亜戦争前:低蛋白・低脂肪食中心+それに比較し運動量が多い
=感染症や栄養失調になることが多く、体をつくる
原料である蛋白質摂取が少なかったため短命。
戦後:高蛋白・高脂肪食中心+それに比較し運動量が大幅に少ない。
=脂肪が蓄積されやすく、血液の中の糖分が上手く
利用されず、血液に脂肪や糖質が多く存在するよ
うになり、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活
習慣病が多くなる。蛋白質は十分とれているので
バランスを取れた生活をしてきた人は長命。
いろんなお話を聴けましたが、簡単~に私が要約するとこんなところでしょうか。運動、栄養、休養(睡眠)、心の在り方(ストレス)など生活習慣を改善するだけで病気というものは少なくなってくるのですよ~
戦前の食生活や運動を見習いつつ、現代の食や生活の利点を加えて、日本人の生活習慣を見直すことこそ病気にならない体をつくることであり、それは人任せではなく、各個人が意識して行わなければ解決できないということでした。
特別講演の青木國雄 先生
教育講演では、野口先生の「鍼灸をめぐるエビデンス」ということでお話をして頂きました。
EBMとは、創始者Sackettによると「入手困難な範囲で最も信頼できる根拠を把握したうえで、個々の患者に特有の臨床状況と患者の価値観を考慮した医療を行うための一連の行動指針」と定義されています。わかりやすく言葉を補うと「臨床研究などで科学的に効果が確認された治療法を、医師の経験や技量、利用可能な設備や時間などの制限を鑑みて、さらには患者さん固有の事情や意思も尊重して、総合的に判断して選択しよう」という意味の動きです。
巷の医療はもとより民間療法には「この病気はすべて治る!」「必ず治る!」「この治療法でこんなに良くなる!」と言ったような宣伝文句を出しているものがたくさん見られます。このようなもので効果が非常に高いものは少なく、どこどこ大学の誰々の研究により…あたかもエビデンスがあるように似非理論武装したものが巷に溢れているということでした。これは”認識力の歪み”が及ぼすものだというお話でした。
”人は経験から法則性を見出す能力がある”のは紛れもない事実であり、人の観察力や認識力には計り知れない可能性があると同時に、今の自分の能力としては観察力や認識力の限界があるのも事実です。そのような時に限りなく客観的に、科学的効果が確認された、信頼できるデータを基準とするEBMという考え方は、観察を重ねて法則性を見出すという患者診療本来の考え方と本質的に同じであるということです。鍼灸師がこれを取り入れ診療を行うということは効果を自己判断しがちな鍼灸師にとって大切なことでもあるでしょう。
治療効果に関しての判断に際しては、上記のような触れ込みを見てもわかるように、治療者が陥りやすい歪みのワナがあるとのことです。治療に来院されたら”何もしないよりは何かしたほうがよいと感じる使命感、患者のためになるとの思いから発する治療への期待感などなど、認知を歪める心的機制となりやすい要素が多くあるようです。
このような治療者が陥りやすい認知の歪みを先生の奥様が体験した腰痛を題材にわかりやすく説明して頂きました。そこに出てきたのが、”認知を歪ませるもの”として①バイアス②非特異的効果③偶然④インチキがあるとのことでした。④のインチキは現代の市場経済主義や利益追求など金銭欲が生み出す医療ではあってはならないものですから問題外ですが(理解しておかなければいけないことでもありますが…意外に多いのですよ世の中…)、私は特に②非特異的効果が勉強になりました。
②としては●プラセボ効果●ホーソン効果(ヒトは見られていると意識すると行動が変化する)●同時治療を行っている場合●自然経過として治っている●偶然、などがあり、どれも気をつけて患者さんに対応しないといけないと思いましたが、特に「自然経過」に関しては”本当に鍼治療の効果なのか”客観的にみる姿勢が常に必要だと認識させて頂きました。
その他、メモし忘れましたが、心理学の分野だったと思いますが”PECO”という考え方があり、それぞれ英語の頭文字をとっているのでしたが…P:どんな患者に E:何をすると C:何と比較して O:どうなるのか という当たり前と言えば当たり前なことを言っているのですが、鍼灸治療の効果を考える時はいろんな視点からみないといかんな~と思いました。
教育講演も有意義な時間でございました~
教育講演の野口善令 先生
一般口演でも、アレルギー性鼻炎、花粉症、腰痛、最新の心拍変動解析を用いて鍼治療を行い自律神経反応の評価を行う(数式がたくさん出てきて、イマイチ理解できませんでしたということは勉強不足ですね)など4題の発表があり、どれも治療と指標があり、効果が云々もさることながら、明確に理解しやすい発表であったと思いました。
私も3題に対して質問させて頂きました~って金沢から3時間かけてきたわけですから収穫して、患者さんに還元していかないといけませんしね
こちらも有意義な時間でした
すごく長くなったので、本学会で一番収穫のあったシンポジウムについては、その③でご紹介しますね。
二葉鍼灸療院 田中良和
また、江戸時代に関して最近、様々なことが分かってきており、鎖国をしていた関係上、日本本来の生活を色濃く残した文化であったようです。そこまで戻れとは言いませんが(無理でしょうね)、循環型社会であった江戸時代をもう一度見つめる時代に来ているのかもしれません。
要は、政治、経済、社会、産業組織が大きく変わり、労働形態、生活水準も変化、人口なども急増すれば、生活様式や習慣が激変していくことも当然であろうと思われます。さらに、黒船襲来から明治維新により、西洋文明が雪崩のように入ってきて、日清・日露戦争、大東亜戦争を経験することで大きな流れとしては国民生活を大きく激変せざるを得なかったとお話の中で感じました。
☆生活習慣病になる図式は(先生の話を聴き私なりに)…
過去→現代(食)
伝統食(低蛋白・低脂肪・穀物野菜中心食 素食 粗食)
↓
現代食(高蛋白・高脂肪食 加工食品〈大量の添加物〉 大量消費〈満腹〉)
過去→現代(運動)
交通手段の限定(ほとんど歩行での生活 たまに公共交通機関使用 生活の中に運動があり 労働量、運動量は自然に増加)
↓
交通網、インフラの整備、交通手段の増加・普及(自家用車などでほとんど移動 日常生活でも電化製品の普及・機能向上、生活の中で体を動かす機会がほとんどなくなる 体を使う労働量、運動量の大幅減少)
大東亜戦争前:低蛋白・低脂肪食中心+それに比較し運動量が多い
=感染症や栄養失調になることが多く、体をつくる
原料である蛋白質摂取が少なかったため短命。
戦後:高蛋白・高脂肪食中心+それに比較し運動量が大幅に少ない。
=脂肪が蓄積されやすく、血液の中の糖分が上手く
利用されず、血液に脂肪や糖質が多く存在するよ
うになり、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活
習慣病が多くなる。蛋白質は十分とれているので
バランスを取れた生活をしてきた人は長命。
いろんなお話を聴けましたが、簡単~に私が要約するとこんなところでしょうか。運動、栄養、休養(睡眠)、心の在り方(ストレス)など生活習慣を改善するだけで病気というものは少なくなってくるのですよ~
戦前の食生活や運動を見習いつつ、現代の食や生活の利点を加えて、日本人の生活習慣を見直すことこそ病気にならない体をつくることであり、それは人任せではなく、各個人が意識して行わなければ解決できないということでした。
特別講演の青木國雄 先生
教育講演では、野口先生の「鍼灸をめぐるエビデンス」ということでお話をして頂きました。
EBMとは、創始者Sackettによると「入手困難な範囲で最も信頼できる根拠を把握したうえで、個々の患者に特有の臨床状況と患者の価値観を考慮した医療を行うための一連の行動指針」と定義されています。わかりやすく言葉を補うと「臨床研究などで科学的に効果が確認された治療法を、医師の経験や技量、利用可能な設備や時間などの制限を鑑みて、さらには患者さん固有の事情や意思も尊重して、総合的に判断して選択しよう」という意味の動きです。
巷の医療はもとより民間療法には「この病気はすべて治る!」「必ず治る!」「この治療法でこんなに良くなる!」と言ったような宣伝文句を出しているものがたくさん見られます。このようなもので効果が非常に高いものは少なく、どこどこ大学の誰々の研究により…あたかもエビデンスがあるように似非理論武装したものが巷に溢れているということでした。これは”認識力の歪み”が及ぼすものだというお話でした。
”人は経験から法則性を見出す能力がある”のは紛れもない事実であり、人の観察力や認識力には計り知れない可能性があると同時に、今の自分の能力としては観察力や認識力の限界があるのも事実です。そのような時に限りなく客観的に、科学的効果が確認された、信頼できるデータを基準とするEBMという考え方は、観察を重ねて法則性を見出すという患者診療本来の考え方と本質的に同じであるということです。鍼灸師がこれを取り入れ診療を行うということは効果を自己判断しがちな鍼灸師にとって大切なことでもあるでしょう。
治療効果に関しての判断に際しては、上記のような触れ込みを見てもわかるように、治療者が陥りやすい歪みのワナがあるとのことです。治療に来院されたら”何もしないよりは何かしたほうがよいと感じる使命感、患者のためになるとの思いから発する治療への期待感などなど、認知を歪める心的機制となりやすい要素が多くあるようです。
このような治療者が陥りやすい認知の歪みを先生の奥様が体験した腰痛を題材にわかりやすく説明して頂きました。そこに出てきたのが、”認知を歪ませるもの”として①バイアス②非特異的効果③偶然④インチキがあるとのことでした。④のインチキは現代の市場経済主義や利益追求など金銭欲が生み出す医療ではあってはならないものですから問題外ですが(理解しておかなければいけないことでもありますが…意外に多いのですよ世の中…)、私は特に②非特異的効果が勉強になりました。
②としては●プラセボ効果●ホーソン効果(ヒトは見られていると意識すると行動が変化する)●同時治療を行っている場合●自然経過として治っている●偶然、などがあり、どれも気をつけて患者さんに対応しないといけないと思いましたが、特に「自然経過」に関しては”本当に鍼治療の効果なのか”客観的にみる姿勢が常に必要だと認識させて頂きました。
その他、メモし忘れましたが、心理学の分野だったと思いますが”PECO”という考え方があり、それぞれ英語の頭文字をとっているのでしたが…P:どんな患者に E:何をすると C:何と比較して O:どうなるのか という当たり前と言えば当たり前なことを言っているのですが、鍼灸治療の効果を考える時はいろんな視点からみないといかんな~と思いました。
教育講演も有意義な時間でございました~
教育講演の野口善令 先生
一般口演でも、アレルギー性鼻炎、花粉症、腰痛、最新の心拍変動解析を用いて鍼治療を行い自律神経反応の評価を行う(数式がたくさん出てきて、イマイチ理解できませんでしたということは勉強不足ですね)など4題の発表があり、どれも治療と指標があり、効果が云々もさることながら、明確に理解しやすい発表であったと思いました。
私も3題に対して質問させて頂きました~って金沢から3時間かけてきたわけですから収穫して、患者さんに還元していかないといけませんしね
こちらも有意義な時間でした
すごく長くなったので、本学会で一番収穫のあったシンポジウムについては、その③でご紹介しますね。
二葉鍼灸療院 田中良和