10月4日(日)、石川県チャリティー100km歩行大会のサポート活動を終え、その足で会場である石川県立盲学校へ直行しました。これが車中が温かく何か危険なスイマ~が襲ってくるような感じで少し運転が怖かったですね。
◎日 時:平成21年10月4日(日) 午前10時~12時
◎内 容:
・講演会;周産期における健康管理
~助産師から見た周産期ケア~
金沢医科大学看護学部 教授 落合富美江 先生
・鍼灸・医療最新ニュース
司会の中田先生(右)と落合先生(左)
今月は講演会としまして、助産師の立場から落合先生に周産期における健康管理についてお話をして頂きました。妊娠した後の健康診断の内容、妊娠期の内分泌系(ホルモン)の変化、それに伴い身体に起こりうる病気、妊娠期の母体の変化、マイナートラブル(不快症状)、その発症率と頻度、妊娠期に多くみられる症状、分娩期の体調管理、産痛部位、現在の出産様式、産褥期の健康管理、その支援、などの話があり、最後の〆として周産期管理と東洋医学という内容で話して頂きました。1時間という限られた時間でしたが、情熱的に話して頂きました。
その情熱的な話であったせいで15分ほど超過してしまいました。私たちとしては様々な話を聴くことができ得した気分でした。
落合先生 熱く語る
助産師に大切なことは「胎児の異常と正常を見極めること」であることを冒頭に強調されて話されていました。これは鍼灸師にも通じることであろうと思います。まず身体の正常な状態を知って、患者様の状態が正常な生理的状態から、何がどれだけ逸脱しているかを判断することは身体を診るときの基本ですから。
また、もう一つ強調されていたのは、妊婦さんの体重管理の問題。妊娠高血圧症候群や妊娠中の糖尿病は注意しなければいけない症状ですが、妊娠中にあまりにもダイエットしを過ぎて体重を落としすぎると、胎児に栄養がいきわたらなくなってしまいます。昔は3000g以上の赤ちゃんがほどんどでしたが、最近は、3000g以上の赤ちゃんは稀であり、3000g以下の赤ちゃんがほとんどだそうです。それに、妊娠中にダイエットをやり過ぎ、生まれてきた3000g以下の赤ちゃんのコホート研究があり、それによると、成長した時に生活習慣病にかかる割合が多いという報告もあるそうです。妊婦さんは適正な体重増加こそ大切であるということでした。
妊婦さんは生理的な体の変化により様々な不快症状が出てきます。易疲労感、全身倦怠感、強い眠気(この3つは90%以上の確率で発症)、腹部の締め付け感、頻尿など辛い症状も出てきます。これら全身性の症状やイライラなど精神性の症状にはhcGというホルモンの関与が強いということでした。また、つわり、静脈瘤、腹部・背部痛、手足のしびれ、不眠、皮膚掻痒感、おりもの、などの症状も出てきますが、これらは妊婦さんには特別の症状ではなく、起こりうる普通の状態であるということでした。このような時は鍼灸マッサージ治療が効果を発揮するんでしょうね。妊婦さんや女性の性周期や体の変化、あるいは視床下部、脳下垂体、大脳など広い視野で女性をみて診療を行えば、良好な効果を得ることができると感じました。
最後に落合先生ご自身が指圧を受けて体調管理されていることと、指圧・マッサージと助産ケアの書籍なども信用ある機関から発刊されているとのお話が紹介され、鍼灸マッサージは妊娠期から産褥期にかけての妊婦さんのケアや助産ケアに活用できる治療方法であるとのお話があり心強い言葉でした。
当院においても、不妊治療でよい結果を得られた方においても、”つわり”の治療や妊娠期におけるケアをさせて頂いている経験(私は鍼治療が主です)からも、鍼灸マッサージ治療は、妊娠期あるいは妊娠後の女性の体調管理に適しているものと感じます。
質疑応答では、私は妊婦さんを治療するにしても卵巣-子宮などホルモン系だけ考えるのではなく、視床下部-脳下垂体-大脳モノアミンなどの中枢器官を考えて診療にあたることが大切だと思うという質問をさせて頂きました。
また質問とともに、6月に行われた埼玉での(社)全日本鍼灸学会学術大会において、WHO・ユニセフによりBFH(Baby Friendlly Hospital 赤ちゃんにやさしい病院;WHO・ユニセフが世界に推奨している「母乳育児成功のための10カ条」を長期にわたり尊重し実践している病院が対象となるもので、2009年8月現在で日本には61施設の病院が認定されています)に認定されている愛媛県立中央病院の産婦人科において、産褥期の女性に鍼灸治療を行ったところ良好な結果が得られたという発表があったことをお話させて頂きました。
鍼灸マッサージ治療は、女性にやさしい、子供にやさしい治療なんですよね
講演会終了後、その他の報告事項がありました。その中で、私は先月行われた、一般社団法人 生体調整機構制御学会のシンポジウムの中、司会の黒野先生が話された「医療の現状、鍼灸師の現状(私が勝手につけた題名)」の話というか、参加報告をさせて頂きました。
世界の医療の流れ、日本の医療の現状、統合医療という医療の中での鍼灸、統合医療に関する国の取り組み、その流れを踏まえ鍼灸師は何をしなければならないかというような話をしました。詳細はブログの報告にも書いてありますのでご参照を
自分の治療方法が一定の効果があり患者に喜んでもらえばそれ勝るものはないのかもしれません。しかし、それが鍼灸のすべてだと思いこんでしまっては真実が見えなくなってしまいます。そんな人がこの業界には多いような気がします。患者に最高の鍼灸医療を行うには常に臨床現場に学び、自分以外に学ぶ向上心が必要です。まして、世界の医療の流れ、日本の医療の流れ、その中で鍼灸医療がおかれている立場、鍼灸師はどうなのか、そこに目を向けて自己研鑽している鍼灸師は日本にどれだけ存在するのでしょうか(かくいう私も日々反省です)。
統合医療という分野は、テーラーメード医療であり、患者中心の、患者個々人を尊重した国民のための医療を追求していこうとする流れです。医師や学者が中心となっていますが、その中に鍼灸医療も含まれます。この研究が進むと鍼灸医療は認められるが、鍼灸師は認められないという危機感、というより現実が「今そこにある危機」であることを認識しないと、私たちの立場が将来たいへんなことになるということです。
患者様のためにより良い鍼灸医療を提供するためには、常に向上心を持って道を追求していくことが重要です。「治ったからそれでいい」「自分さえお金が儲かればいい」では、これからは厳しい現実が待っているでしょう。最低でも鍼灸学会に入り学会に参加し、日々常に勉強し、そのような仲間が周囲にたくさんいることが大切です。鍼灸師自身が、現実を踏まえ「今」何をなすべきか。「今」どのような認識と意識をもって鍼灸医療に取り組むべきかを考える時期だと思います。
そのような話をさせて頂きました。
終了後、午後1時から4時半まで金沢市鍼灸マッサージ師会の理事会があり、充実した 楽しい 乳酸がたっぷり溜まった そんな有意義な 一日でした~
二葉鍼灸療院 田中良和
◎日 時:平成21年10月4日(日) 午前10時~12時
◎内 容:
・講演会;周産期における健康管理
~助産師から見た周産期ケア~
金沢医科大学看護学部 教授 落合富美江 先生
・鍼灸・医療最新ニュース
司会の中田先生(右)と落合先生(左)
今月は講演会としまして、助産師の立場から落合先生に周産期における健康管理についてお話をして頂きました。妊娠した後の健康診断の内容、妊娠期の内分泌系(ホルモン)の変化、それに伴い身体に起こりうる病気、妊娠期の母体の変化、マイナートラブル(不快症状)、その発症率と頻度、妊娠期に多くみられる症状、分娩期の体調管理、産痛部位、現在の出産様式、産褥期の健康管理、その支援、などの話があり、最後の〆として周産期管理と東洋医学という内容で話して頂きました。1時間という限られた時間でしたが、情熱的に話して頂きました。
その情熱的な話であったせいで15分ほど超過してしまいました。私たちとしては様々な話を聴くことができ得した気分でした。
落合先生 熱く語る
助産師に大切なことは「胎児の異常と正常を見極めること」であることを冒頭に強調されて話されていました。これは鍼灸師にも通じることであろうと思います。まず身体の正常な状態を知って、患者様の状態が正常な生理的状態から、何がどれだけ逸脱しているかを判断することは身体を診るときの基本ですから。
また、もう一つ強調されていたのは、妊婦さんの体重管理の問題。妊娠高血圧症候群や妊娠中の糖尿病は注意しなければいけない症状ですが、妊娠中にあまりにもダイエットしを過ぎて体重を落としすぎると、胎児に栄養がいきわたらなくなってしまいます。昔は3000g以上の赤ちゃんがほどんどでしたが、最近は、3000g以上の赤ちゃんは稀であり、3000g以下の赤ちゃんがほとんどだそうです。それに、妊娠中にダイエットをやり過ぎ、生まれてきた3000g以下の赤ちゃんのコホート研究があり、それによると、成長した時に生活習慣病にかかる割合が多いという報告もあるそうです。妊婦さんは適正な体重増加こそ大切であるということでした。
妊婦さんは生理的な体の変化により様々な不快症状が出てきます。易疲労感、全身倦怠感、強い眠気(この3つは90%以上の確率で発症)、腹部の締め付け感、頻尿など辛い症状も出てきます。これら全身性の症状やイライラなど精神性の症状にはhcGというホルモンの関与が強いということでした。また、つわり、静脈瘤、腹部・背部痛、手足のしびれ、不眠、皮膚掻痒感、おりもの、などの症状も出てきますが、これらは妊婦さんには特別の症状ではなく、起こりうる普通の状態であるということでした。このような時は鍼灸マッサージ治療が効果を発揮するんでしょうね。妊婦さんや女性の性周期や体の変化、あるいは視床下部、脳下垂体、大脳など広い視野で女性をみて診療を行えば、良好な効果を得ることができると感じました。
最後に落合先生ご自身が指圧を受けて体調管理されていることと、指圧・マッサージと助産ケアの書籍なども信用ある機関から発刊されているとのお話が紹介され、鍼灸マッサージは妊娠期から産褥期にかけての妊婦さんのケアや助産ケアに活用できる治療方法であるとのお話があり心強い言葉でした。
当院においても、不妊治療でよい結果を得られた方においても、”つわり”の治療や妊娠期におけるケアをさせて頂いている経験(私は鍼治療が主です)からも、鍼灸マッサージ治療は、妊娠期あるいは妊娠後の女性の体調管理に適しているものと感じます。
質疑応答では、私は妊婦さんを治療するにしても卵巣-子宮などホルモン系だけ考えるのではなく、視床下部-脳下垂体-大脳モノアミンなどの中枢器官を考えて診療にあたることが大切だと思うという質問をさせて頂きました。
また質問とともに、6月に行われた埼玉での(社)全日本鍼灸学会学術大会において、WHO・ユニセフによりBFH(Baby Friendlly Hospital 赤ちゃんにやさしい病院;WHO・ユニセフが世界に推奨している「母乳育児成功のための10カ条」を長期にわたり尊重し実践している病院が対象となるもので、2009年8月現在で日本には61施設の病院が認定されています)に認定されている愛媛県立中央病院の産婦人科において、産褥期の女性に鍼灸治療を行ったところ良好な結果が得られたという発表があったことをお話させて頂きました。
鍼灸マッサージ治療は、女性にやさしい、子供にやさしい治療なんですよね
講演会終了後、その他の報告事項がありました。その中で、私は先月行われた、一般社団法人 生体調整機構制御学会のシンポジウムの中、司会の黒野先生が話された「医療の現状、鍼灸師の現状(私が勝手につけた題名)」の話というか、参加報告をさせて頂きました。
世界の医療の流れ、日本の医療の現状、統合医療という医療の中での鍼灸、統合医療に関する国の取り組み、その流れを踏まえ鍼灸師は何をしなければならないかというような話をしました。詳細はブログの報告にも書いてありますのでご参照を
自分の治療方法が一定の効果があり患者に喜んでもらえばそれ勝るものはないのかもしれません。しかし、それが鍼灸のすべてだと思いこんでしまっては真実が見えなくなってしまいます。そんな人がこの業界には多いような気がします。患者に最高の鍼灸医療を行うには常に臨床現場に学び、自分以外に学ぶ向上心が必要です。まして、世界の医療の流れ、日本の医療の流れ、その中で鍼灸医療がおかれている立場、鍼灸師はどうなのか、そこに目を向けて自己研鑽している鍼灸師は日本にどれだけ存在するのでしょうか(かくいう私も日々反省です)。
統合医療という分野は、テーラーメード医療であり、患者中心の、患者個々人を尊重した国民のための医療を追求していこうとする流れです。医師や学者が中心となっていますが、その中に鍼灸医療も含まれます。この研究が進むと鍼灸医療は認められるが、鍼灸師は認められないという危機感、というより現実が「今そこにある危機」であることを認識しないと、私たちの立場が将来たいへんなことになるということです。
患者様のためにより良い鍼灸医療を提供するためには、常に向上心を持って道を追求していくことが重要です。「治ったからそれでいい」「自分さえお金が儲かればいい」では、これからは厳しい現実が待っているでしょう。最低でも鍼灸学会に入り学会に参加し、日々常に勉強し、そのような仲間が周囲にたくさんいることが大切です。鍼灸師自身が、現実を踏まえ「今」何をなすべきか。「今」どのような認識と意識をもって鍼灸医療に取り組むべきかを考える時期だと思います。
そのような話をさせて頂きました。
終了後、午後1時から4時半まで金沢市鍼灸マッサージ師会の理事会があり、充実した 楽しい 乳酸がたっぷり溜まった そんな有意義な 一日でした~
二葉鍼灸療院 田中良和