アメリカでは、ガン治療をめぐる長い葛藤の中、ガン治療に対する捉え方が市民、国ともに変化してきます。最後にその辺りをみていきたいと思います。
病気にかかると現代医療にまずかかる。というのは日本でも考えることなくそうする方が多いと思います。アメリカでは、医療の大きな変化の中、どのような状態にあるのでしょうか。アメリカでは毎年、国民全体が治療を受けた医療機関、医療費などの内容を調査しています。
≪現代西洋医学の側から代替医療が注目され始めたのは、1990年にアメリカで行われた研究がきっかけであった。実に42.1%にものぼるアメリカ人が代替医療を利用しているという調査結果が発表され、医学界に衝撃を与えたのだ。
アメリカにおける代替医療の利用者数は、90年には6000万人であったが、97年には8300万人と38%も急増した。医療機関を訪れる回数に関しても、大きな変化がみられている。現代西洋医学を行う病院や医院への受診回数は、90年から97年にかけては、ほぼ横ばいあった。一方、同じ時期に代替医療への受診回数は大きく増加した(『代替医療』 蒲原聖可 著 中公新書)≫
アメリカの医療界に大きな地殻変動が起きたわけです。国民も様々な情報や真実を知り、より自分にあった、身体に優しい、本来の人間のあるべき姿に戻す医療を選択していったということでしょう。
西洋医学が得意である分野は西洋医学へ、東洋医学を含めた代替医療で信用があり、それにより身体が回復に向かう分野に関しては代替医療へと、国民が自らの意思で選択できるような流れになってきたんだろうと思います。
しかし、アメリカの場合は日本のような公的保険制度とは違い、あくまでも民間の保険会社が医療の分野ではほとんどのシェアを占めます。現在でも医療保険を受けられない、いわゆる貧困層が4800万人もいるとされていますので、そのあたりも考えておかなければならないかもしれません(余談ですが…)。
≪めざましいばかりの代替医療の台頭です。さらにそれを決定的にしたのが1992年でした。この年、アメリカの国民が代替医療に費やした年間費用が、通常医療の病院に支払ったそれを初めて上回ったのです。何であれ、科学的な証明を重視する実証主義的傾向の強いのがアメリカ人です。そのアメリカ人たちが、それまでの現代西洋医学側から、”非科学的”と排斥されていた代替医療へと、自ら選択の方向を変えたわけです。
こうした流れを受け、同じ92年にアメリカ政府もまた画期的な一歩を踏み出しました。日本の厚生労働省にあたるNIH(国立衛生研究所)に「代替医療部」が初めて設置されたのです。そして、それが国立ガン研究所(NCI)などと同格の国家機関である「国立補完代替医療センター」(NCCAM)に昇格しました。この点について、前出の森山氏はその著書の中でこう記しています。
〈この代替医療部は、それぞれの代替療法の有効性を研究し、評価に値するものに対して支援を送ることを目的に設置されました。これまでハーバード大学、カリフォルニア大学、スタンフォード大学など全米13か所の大学や研究所に個別のテーマを振り分け、さまざまな代替療法の検証と推進に力を入れるなど、積極的な活動を行っています。
1992年当初の予算は300万ドルでしたが、2001年には8600万ドルまで増額。2002~2004年は2億ドルに増額する計画が決まっています。…中略…
アメリカは今や官民一体となった、”代替療法先進国”であり、通常療法一辺倒の西洋型医療だけでなく、代替医療を取り入れ「統合医療」への道を歩み始めているのです。〉
こうして見てくると、なぜアメリカでガンの罹患率も死亡率も低下してきたのか、よくおわかり頂けたと思います。しかし、先ほども少し触れたように、アメリカも決して一朝一夕でそうなったわけではありません。現代西洋医学(通常医療)と代替医療との長い闘いの歴史を経ています。≫
アメリカでは現在、莫大な予算で鍼治療を含めた代替医療の研究(検証)がなされています。アメリカの経済は日本よりも厳しい状況下にあり、また、今まで超エリートである知識層が富を築きあげ、貧富の差たるや日本の比ではありません。その人たちが富を築いたから、このような研究もできたことなのかもしれませんが、知識人だけで国が成り立っているわけではありません(おっと、また余談になりました~)。
ガン治療から始まった医療の取り組みは、アメリカの医療を変化させ、人々がより良い医療を受けることができるように長い時間をかけて熟成されてきました。患者中心の医療であり、一人一人にあったオーダーメードの医療ができる基盤が官民ともに出来あがってきたということでしょうか。
鍼灸治療をみると、アメリカの場合は鍼治療が主であり灸治療はほとんど行われていないようです。また、ほとんどが日本式ではなく、中国式の鍼の方法で行い研究されてきています。でも、最近は、日本の繊細で、痛みがなく、浅い鍼も見直されてきているようです。また、欧米の場合では、医師あるいは、医師と同じくらいの教育を受け認定された者が鍼を打ちます。
日本では、近年、鍼灸を含めた代替医療の研究が各大学において研究されており、厚生労働省や文部科学省もそれに助成をしています。日本代替医療学会でも国より援助をもらい代替医療の仕分けのためかどうか分かりませんが研究、検証が行われています。昨年11月には厚生労働省の主導で、東京女子医大の大野准教授のもと、がんに関する代替医療の研究が3年計画で結果を出す目的でプロジェクトが進行中です。東洋医学や鍼灸医学の評価方法の研究などもなされています。
アメリカから、あるいは、日本の代替医療を含めた鍼灸医療の流れをみると、私たち(鍼灸師)が生き残っていくためには何をしなければいけないか考える時期なんだろうと感じます。本当に、事業仕分けではありませんが、国家資格のある鍼灸師にも仕分けや振り分けのされる時代がやってきて、保険や様々な分野での立場に差別化が行われる可能性もあるのかなと考えます。
その差別化の基準は、常に学会などの学術大会に参加し、あるいは業団の講習会に出て自己研鑽をして、自己の鍼灸師としての資質を向上させているかどうかだと思います。学術、技能、あるいは人間性と常に勉強する姿勢が重要なのだと感じます。そして洋の東西を問わず、自分が足らない医学的知識を常に吸収していくことが、来るべき医療あるいは鍼灸界の変革の時に、慌てず、余裕をもって、自分の生活を積極的に守るために必要な条件ではなかろうかと思うのです。
”諸行無常のひびきあり”なんて昔から言われています。人間の身体も、社会も、地球も、宇宙も常に変化しています。それが常です。今まで見てきたガン治療もそうですが、今の現実、そして本来そうあるべき姿や真実を把握し、次の段階へ常に成長していくことが人間の使命であるとも感じます。ガン治療もこれから変化するでしょう。医療界も、鍼灸界も変化するでしょう。そして国民の皆様が本当のこと(真実)を知り行動する時も来るでしょう。
その時に、残るのは未来を見据え、努力の種をたくさん蒔いた人でしょう。そこに芽が出て、葉が生い茂り、綺麗な花が咲くのだと思います。それが、どの世界においても”本物”になるために必要なことだと思いますね。
「ガン治療」というテーマからいろいろ考えてみました。日本のガンが減らない理由の大きな要因が分かって頂けたかと思います。現代西洋医学を批判しているのではありません。医療は人間の身体を扱います。人間の身体も自然の一部です。大自然は人間が創造(想像)する事柄に関係なく、ただ大自然(宇宙)の法則にしたがって淡々と現象が現れてきます、それが真実なのだと思います。その真実に従うことが医療の本来の姿であり、無理のない、心と体に優しい医療だと感じます。それが病氣にならない、健康な人生の実現に繋がっていくのでしょう
「なぜ、日本のガン患者やガン死亡率が減らないのか?」、少し気合いが入り①~④と長くなってしまいました。 最後までお読み頂きましてありがとうございます。
これからも”ガン”に関してはしっかり勉強していきたいと思っております
引用文献:『がんを治す「仕組み」は あなたの体の中にある」 真柄俊一 著
二葉鍼灸療院 田中良和
病気にかかると現代医療にまずかかる。というのは日本でも考えることなくそうする方が多いと思います。アメリカでは、医療の大きな変化の中、どのような状態にあるのでしょうか。アメリカでは毎年、国民全体が治療を受けた医療機関、医療費などの内容を調査しています。
≪現代西洋医学の側から代替医療が注目され始めたのは、1990年にアメリカで行われた研究がきっかけであった。実に42.1%にものぼるアメリカ人が代替医療を利用しているという調査結果が発表され、医学界に衝撃を与えたのだ。
アメリカにおける代替医療の利用者数は、90年には6000万人であったが、97年には8300万人と38%も急増した。医療機関を訪れる回数に関しても、大きな変化がみられている。現代西洋医学を行う病院や医院への受診回数は、90年から97年にかけては、ほぼ横ばいあった。一方、同じ時期に代替医療への受診回数は大きく増加した(『代替医療』 蒲原聖可 著 中公新書)≫
アメリカの医療界に大きな地殻変動が起きたわけです。国民も様々な情報や真実を知り、より自分にあった、身体に優しい、本来の人間のあるべき姿に戻す医療を選択していったということでしょう。
西洋医学が得意である分野は西洋医学へ、東洋医学を含めた代替医療で信用があり、それにより身体が回復に向かう分野に関しては代替医療へと、国民が自らの意思で選択できるような流れになってきたんだろうと思います。
しかし、アメリカの場合は日本のような公的保険制度とは違い、あくまでも民間の保険会社が医療の分野ではほとんどのシェアを占めます。現在でも医療保険を受けられない、いわゆる貧困層が4800万人もいるとされていますので、そのあたりも考えておかなければならないかもしれません(余談ですが…)。
≪めざましいばかりの代替医療の台頭です。さらにそれを決定的にしたのが1992年でした。この年、アメリカの国民が代替医療に費やした年間費用が、通常医療の病院に支払ったそれを初めて上回ったのです。何であれ、科学的な証明を重視する実証主義的傾向の強いのがアメリカ人です。そのアメリカ人たちが、それまでの現代西洋医学側から、”非科学的”と排斥されていた代替医療へと、自ら選択の方向を変えたわけです。
こうした流れを受け、同じ92年にアメリカ政府もまた画期的な一歩を踏み出しました。日本の厚生労働省にあたるNIH(国立衛生研究所)に「代替医療部」が初めて設置されたのです。そして、それが国立ガン研究所(NCI)などと同格の国家機関である「国立補完代替医療センター」(NCCAM)に昇格しました。この点について、前出の森山氏はその著書の中でこう記しています。
〈この代替医療部は、それぞれの代替療法の有効性を研究し、評価に値するものに対して支援を送ることを目的に設置されました。これまでハーバード大学、カリフォルニア大学、スタンフォード大学など全米13か所の大学や研究所に個別のテーマを振り分け、さまざまな代替療法の検証と推進に力を入れるなど、積極的な活動を行っています。
1992年当初の予算は300万ドルでしたが、2001年には8600万ドルまで増額。2002~2004年は2億ドルに増額する計画が決まっています。…中略…
アメリカは今や官民一体となった、”代替療法先進国”であり、通常療法一辺倒の西洋型医療だけでなく、代替医療を取り入れ「統合医療」への道を歩み始めているのです。〉
こうして見てくると、なぜアメリカでガンの罹患率も死亡率も低下してきたのか、よくおわかり頂けたと思います。しかし、先ほども少し触れたように、アメリカも決して一朝一夕でそうなったわけではありません。現代西洋医学(通常医療)と代替医療との長い闘いの歴史を経ています。≫
アメリカでは現在、莫大な予算で鍼治療を含めた代替医療の研究(検証)がなされています。アメリカの経済は日本よりも厳しい状況下にあり、また、今まで超エリートである知識層が富を築きあげ、貧富の差たるや日本の比ではありません。その人たちが富を築いたから、このような研究もできたことなのかもしれませんが、知識人だけで国が成り立っているわけではありません(おっと、また余談になりました~)。
ガン治療から始まった医療の取り組みは、アメリカの医療を変化させ、人々がより良い医療を受けることができるように長い時間をかけて熟成されてきました。患者中心の医療であり、一人一人にあったオーダーメードの医療ができる基盤が官民ともに出来あがってきたということでしょうか。
鍼灸治療をみると、アメリカの場合は鍼治療が主であり灸治療はほとんど行われていないようです。また、ほとんどが日本式ではなく、中国式の鍼の方法で行い研究されてきています。でも、最近は、日本の繊細で、痛みがなく、浅い鍼も見直されてきているようです。また、欧米の場合では、医師あるいは、医師と同じくらいの教育を受け認定された者が鍼を打ちます。
日本では、近年、鍼灸を含めた代替医療の研究が各大学において研究されており、厚生労働省や文部科学省もそれに助成をしています。日本代替医療学会でも国より援助をもらい代替医療の仕分けのためかどうか分かりませんが研究、検証が行われています。昨年11月には厚生労働省の主導で、東京女子医大の大野准教授のもと、がんに関する代替医療の研究が3年計画で結果を出す目的でプロジェクトが進行中です。東洋医学や鍼灸医学の評価方法の研究などもなされています。
アメリカから、あるいは、日本の代替医療を含めた鍼灸医療の流れをみると、私たち(鍼灸師)が生き残っていくためには何をしなければいけないか考える時期なんだろうと感じます。本当に、事業仕分けではありませんが、国家資格のある鍼灸師にも仕分けや振り分けのされる時代がやってきて、保険や様々な分野での立場に差別化が行われる可能性もあるのかなと考えます。
その差別化の基準は、常に学会などの学術大会に参加し、あるいは業団の講習会に出て自己研鑽をして、自己の鍼灸師としての資質を向上させているかどうかだと思います。学術、技能、あるいは人間性と常に勉強する姿勢が重要なのだと感じます。そして洋の東西を問わず、自分が足らない医学的知識を常に吸収していくことが、来るべき医療あるいは鍼灸界の変革の時に、慌てず、余裕をもって、自分の生活を積極的に守るために必要な条件ではなかろうかと思うのです。
”諸行無常のひびきあり”なんて昔から言われています。人間の身体も、社会も、地球も、宇宙も常に変化しています。それが常です。今まで見てきたガン治療もそうですが、今の現実、そして本来そうあるべき姿や真実を把握し、次の段階へ常に成長していくことが人間の使命であるとも感じます。ガン治療もこれから変化するでしょう。医療界も、鍼灸界も変化するでしょう。そして国民の皆様が本当のこと(真実)を知り行動する時も来るでしょう。
その時に、残るのは未来を見据え、努力の種をたくさん蒔いた人でしょう。そこに芽が出て、葉が生い茂り、綺麗な花が咲くのだと思います。それが、どの世界においても”本物”になるために必要なことだと思いますね。
「ガン治療」というテーマからいろいろ考えてみました。日本のガンが減らない理由の大きな要因が分かって頂けたかと思います。現代西洋医学を批判しているのではありません。医療は人間の身体を扱います。人間の身体も自然の一部です。大自然は人間が創造(想像)する事柄に関係なく、ただ大自然(宇宙)の法則にしたがって淡々と現象が現れてきます、それが真実なのだと思います。その真実に従うことが医療の本来の姿であり、無理のない、心と体に優しい医療だと感じます。それが病氣にならない、健康な人生の実現に繋がっていくのでしょう
「なぜ、日本のガン患者やガン死亡率が減らないのか?」、少し気合いが入り①~④と長くなってしまいました。 最後までお読み頂きましてありがとうございます。
これからも”ガン”に関してはしっかり勉強していきたいと思っております
引用文献:『がんを治す「仕組み」は あなたの体の中にある」 真柄俊一 著
二葉鍼灸療院 田中良和