画像はトランプ柄の鉢。
日本のモノには無い、なんとも50's風なカッコイイ柄と形。
詳細はこちら。
トランプと言えば思い出されるのが「ダンディー」という手品師の事です。
もう数十年になりますが、学校生活に馴染めず、
高校をドロップアウトした私はひょんな事から知り合った芸人の仲間達と
日本全国を旅しておりました。
「ダンディー」はその中でもリーダー的存在で、得意な芸はトランプマジック。
かなり高齢だったがその華麗な技は正にダンディー。
「キ印」というあだ名のバイオリンが得意なイケメン。
私は「ひとり四十八手」というネタがあり
元々は一発ギャグなのだが、後にキ印のバイオリンに合わせて
節を付けるとドッカンドッカンとウケる様になり、
駆け出しの芸人ながらもなかなかの人気でした。
そしてマッチョが売りの「のぼるさん」。
その立派な大胸筋を自在に動かすという芸が得意であったが
しかしお客さんにしょっちゅう「ムキムキマンのヒトですか?」と聞かれるのが嫌で
何か他の、オリジナリティーのある芸を模索していた。
左右の乳首の先に赤と白の旗を付け、
「赤上げて、白上げて、赤下げないで白下げない」などとやってみたり
乳首にマッチ棒が何本乗るか、とか
胸毛に火を点けてその上にかざしたフライパンで目玉焼きを作る、
など色々やってみたが、どうもイマイチ、パッとしない。
ところで、のぼるさんは元々、少しばかり手癖が悪い様で
一緒に回っている芸人仲間の荷物が無くなると
のぼるさんがちゃっかり拝借している事が度々あった。
その頃、私達が使う宿は「男はつらいよ」で寅さんが泊まる様な
昔ながらの商人宿であった。
紅一点の私だが芸人仲間は女としては見ておらず
下着なんかも同じ部屋に平気で干していた。
ある日、私の「ひとり四十八手」の中でも一番人気のあるギャグ「帆かけ舟」を
本当の帆かけ舟の上でやるという深夜番組の企画があって
とある海辺の町に仲間と泊まった時の事だ。
田舎の町なのでテレビの撮影だと言うと大勢の人がやって来て
四十八手の歌はキ印の美しいバイオリンの音色でシモネタである事を忘れさせ
最後には町の人達も一緒に大合唱になった。
「♪ペリー提督やって来た~♪
♪乗ってた黒船、帆かけ舟~♪
♪国を開いて股開け~~♪」
こんなしょうもない歌を老若男女、小学生まで歌っているのを
果たして放送できるのだろうか。
そんな懸念もあったがそれ以上に町の人達と心が通った事が嬉しかった。
そしてその夜。
みんなが寝静まった頃に何かゴソゴソと気配を感じて私は目を覚ました。
窓際にマッチョなシルエットが浮かんでいる。
「そこにいるの、のぼるさん・・・?」
シルエットの動きが止まる。
何かただならぬ気配を感じ、電気を付けると・・・
のぼるさんが私のブラジャーを着けているではないか!!
「キャ~~~ッ!!」
私の悲鳴で他の芸人が起き出した。
「お前、何してるんだよ!!」
「のぼるがブラしてるぞ!!」
みんな怒るというより呆れて大笑いである。
するとのぼるさんの大胸筋は恥ずかしさで緊張したせいなのか
ピクピク動き、更にはググ~ッと盛り上がってきた。
するとブラジャーのストラップの付け根がちぎれ、
ホックがはじけ飛び、レースが裂け、
私のブラジャーは無惨にもビリビリに破れてしまった。
北斗の拳のケンシロウみたいである。
笑い死にしそうな程の私たち3人に対して
のぼるさんは顔を真っ赤にして下を向いている。
大胸筋だけでなく、身体全体がぷるぷると震えだした。
そしてキ印がのぼるさんを指さして「お前変態だなーーーっっ!!」
と、言ったその瞬間!!
のぼるさんは、キ印に殴りかかった。
元々マッチョで力が強いのぼるさんである。
ダンディーと私が必死に止めようとしたがが、
カーッとなったのぼるさんを押さえるのは無理であった。
殴られたキ印は柱に頭を打ち・・・そして最悪の事態に・・・・。
収録したVTRは当然お蔵入り、私は芸人を辞めた。
もちろん、のぼるさんに殺意は無かった。
紛れもなく事故であった。
のぼるさんは過失という事で執行猶予が付き
その後はダンディーと一緒に芸人を続けていた。
しかしあの事故以来、のぼるさんは全く口をきけなくなってしまった。
「赤上げて・・」も出来ない。
「乳首にマッチ棒」も無言では何の面白味も無く
そこで考えたネタは、ブラジャーを破ったのをヒントに
胸に巻き付けた鎖を引きちぎる芸だった。
だがダンディーがそんな芸は長続きしないだろうと
自分のトランプマジックをのぼるさんに教えていた。
それから数年後。
高齢だったダンディーは最近亡くなったらしい。
芸人を辞めたは良いがそれ以来打ち込める事も見つからず
悩み続けていた私は、例の海辺の町に行ってみた。
どこからか、聞き覚えのある歌が聞こえてくる・・・。
「♪ペリー提督やって来た~♪
♪乗ってた黒船、帆かけ舟~♪
♪国を開いて股開け~~♪」
広場で遊んでいる子供達が歌っているのだ。
ひとり四十八手の帆かけ舟は結局TVで流れる事も無かったので
あの日、ロケを見に来て一緒に歌ってくれた子なのだろう。
私の胸に熱いものがこみ上げてきた。
窮屈な高校生活を飛び出した小娘に芸を教えてくれた仲間達と
一緒に旅した日々・・・・。
私は芸人として辛い終わり方をしたが
のぼるさんはダンディーに励まされ、
一生懸命トランプマジックを勉強していた。
今ではいっぱしのマジシャンだろう。
私も頑張ろう、やるっきゃない!!
そう心に誓った。
その日の夜、テレビをつけると白塗りのメイクをした男性が
トランプマジックをやっている。
「へ~、『なるほど!ザ・ワールド』も色々やるなぁ・・」
そう思いながらぼんやり見ていた。
トランプマンと名乗るマジシャンは一言も言葉を発せず
華麗な動きで周りの人々を魅了している。
すらりとしたスタイルで、紳士的な物腰。
その華麗なトランプさばきは誰かに似ている・・・・。
私は気付いた。
あのダンディーに似ているのだ!
そうか、このしゃべらないトランプマンはのぼるさんなんだな・・・。
トランプマンがその正体を明かさない訳はそんな経緯から察していただきたい。
あの白塗りメイクの下に隠された辛い過去を乗り越え頑張っている
のぼるさん・・いや、トランプマンを私は心から応援している。
・・・と、フェデリコ・フェリーニの名作映画「道」を
元にくだらない話を考えてみました。
日本のモノには無い、なんとも50's風なカッコイイ柄と形。
詳細はこちら。
トランプと言えば思い出されるのが「ダンディー」という手品師の事です。
もう数十年になりますが、学校生活に馴染めず、
高校をドロップアウトした私はひょんな事から知り合った芸人の仲間達と
日本全国を旅しておりました。
「ダンディー」はその中でもリーダー的存在で、得意な芸はトランプマジック。
かなり高齢だったがその華麗な技は正にダンディー。
「キ印」というあだ名のバイオリンが得意なイケメン。
私は「ひとり四十八手」というネタがあり
元々は一発ギャグなのだが、後にキ印のバイオリンに合わせて
節を付けるとドッカンドッカンとウケる様になり、
駆け出しの芸人ながらもなかなかの人気でした。
そしてマッチョが売りの「のぼるさん」。
その立派な大胸筋を自在に動かすという芸が得意であったが
しかしお客さんにしょっちゅう「ムキムキマンのヒトですか?」と聞かれるのが嫌で
何か他の、オリジナリティーのある芸を模索していた。
左右の乳首の先に赤と白の旗を付け、
「赤上げて、白上げて、赤下げないで白下げない」などとやってみたり
乳首にマッチ棒が何本乗るか、とか
胸毛に火を点けてその上にかざしたフライパンで目玉焼きを作る、
など色々やってみたが、どうもイマイチ、パッとしない。
ところで、のぼるさんは元々、少しばかり手癖が悪い様で
一緒に回っている芸人仲間の荷物が無くなると
のぼるさんがちゃっかり拝借している事が度々あった。
その頃、私達が使う宿は「男はつらいよ」で寅さんが泊まる様な
昔ながらの商人宿であった。
紅一点の私だが芸人仲間は女としては見ておらず
下着なんかも同じ部屋に平気で干していた。
ある日、私の「ひとり四十八手」の中でも一番人気のあるギャグ「帆かけ舟」を
本当の帆かけ舟の上でやるという深夜番組の企画があって
とある海辺の町に仲間と泊まった時の事だ。
田舎の町なのでテレビの撮影だと言うと大勢の人がやって来て
四十八手の歌はキ印の美しいバイオリンの音色でシモネタである事を忘れさせ
最後には町の人達も一緒に大合唱になった。
「♪ペリー提督やって来た~♪
♪乗ってた黒船、帆かけ舟~♪
♪国を開いて股開け~~♪」
こんなしょうもない歌を老若男女、小学生まで歌っているのを
果たして放送できるのだろうか。
そんな懸念もあったがそれ以上に町の人達と心が通った事が嬉しかった。
そしてその夜。
みんなが寝静まった頃に何かゴソゴソと気配を感じて私は目を覚ました。
窓際にマッチョなシルエットが浮かんでいる。
「そこにいるの、のぼるさん・・・?」
シルエットの動きが止まる。
何かただならぬ気配を感じ、電気を付けると・・・
のぼるさんが私のブラジャーを着けているではないか!!
「キャ~~~ッ!!」
私の悲鳴で他の芸人が起き出した。
「お前、何してるんだよ!!」
「のぼるがブラしてるぞ!!」
みんな怒るというより呆れて大笑いである。
するとのぼるさんの大胸筋は恥ずかしさで緊張したせいなのか
ピクピク動き、更にはググ~ッと盛り上がってきた。
するとブラジャーのストラップの付け根がちぎれ、
ホックがはじけ飛び、レースが裂け、
私のブラジャーは無惨にもビリビリに破れてしまった。
北斗の拳のケンシロウみたいである。
笑い死にしそうな程の私たち3人に対して
のぼるさんは顔を真っ赤にして下を向いている。
大胸筋だけでなく、身体全体がぷるぷると震えだした。
そしてキ印がのぼるさんを指さして「お前変態だなーーーっっ!!」
と、言ったその瞬間!!
のぼるさんは、キ印に殴りかかった。
元々マッチョで力が強いのぼるさんである。
ダンディーと私が必死に止めようとしたがが、
カーッとなったのぼるさんを押さえるのは無理であった。
殴られたキ印は柱に頭を打ち・・・そして最悪の事態に・・・・。
収録したVTRは当然お蔵入り、私は芸人を辞めた。
もちろん、のぼるさんに殺意は無かった。
紛れもなく事故であった。
のぼるさんは過失という事で執行猶予が付き
その後はダンディーと一緒に芸人を続けていた。
しかしあの事故以来、のぼるさんは全く口をきけなくなってしまった。
「赤上げて・・」も出来ない。
「乳首にマッチ棒」も無言では何の面白味も無く
そこで考えたネタは、ブラジャーを破ったのをヒントに
胸に巻き付けた鎖を引きちぎる芸だった。
だがダンディーがそんな芸は長続きしないだろうと
自分のトランプマジックをのぼるさんに教えていた。
それから数年後。
高齢だったダンディーは最近亡くなったらしい。
芸人を辞めたは良いがそれ以来打ち込める事も見つからず
悩み続けていた私は、例の海辺の町に行ってみた。
どこからか、聞き覚えのある歌が聞こえてくる・・・。
「♪ペリー提督やって来た~♪
♪乗ってた黒船、帆かけ舟~♪
♪国を開いて股開け~~♪」
広場で遊んでいる子供達が歌っているのだ。
ひとり四十八手の帆かけ舟は結局TVで流れる事も無かったので
あの日、ロケを見に来て一緒に歌ってくれた子なのだろう。
私の胸に熱いものがこみ上げてきた。
窮屈な高校生活を飛び出した小娘に芸を教えてくれた仲間達と
一緒に旅した日々・・・・。
私は芸人として辛い終わり方をしたが
のぼるさんはダンディーに励まされ、
一生懸命トランプマジックを勉強していた。
今ではいっぱしのマジシャンだろう。
私も頑張ろう、やるっきゃない!!
そう心に誓った。
その日の夜、テレビをつけると白塗りのメイクをした男性が
トランプマジックをやっている。
「へ~、『なるほど!ザ・ワールド』も色々やるなぁ・・」
そう思いながらぼんやり見ていた。
トランプマンと名乗るマジシャンは一言も言葉を発せず
華麗な動きで周りの人々を魅了している。
すらりとしたスタイルで、紳士的な物腰。
その華麗なトランプさばきは誰かに似ている・・・・。
私は気付いた。
あのダンディーに似ているのだ!
そうか、このしゃべらないトランプマンはのぼるさんなんだな・・・。
トランプマンがその正体を明かさない訳はそんな経緯から察していただきたい。
あの白塗りメイクの下に隠された辛い過去を乗り越え頑張っている
のぼるさん・・いや、トランプマンを私は心から応援している。
・・・と、フェデリコ・フェリーニの名作映画「道」を
元にくだらない話を考えてみました。