ドラマや映画で、「実はこの人が、やがて主人公の人生に大きな影響を及ぼすことになるとは、この時は思いもしませんでした、、、、」という設定がよくあります。パチパチ!
反対に、私たちの人生で、今現在深く影響を及ぼしている人が、実は以前会っていた、すれ違っていた、ということもある訳です。思い出せなかったり、気付いていないだけで。
以下、これまで何度も紹介させていただいた、『祝婚歌』で知られる吉野弘さんの私の好きな詩です。いやな事があっても、もしかして将来に意味のあることかも、、、と思えるんです。
『生命は』
吉野 弘
生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?
花が咲いている
すぐ近くまで
虻(あぶ)の姿をした他者が
光をまとって飛んできている
私も あるとき
誰かのための虻だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない
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