(写真はジュンク堂書店広島駅前店にて)
島本理生さんはこれまでの生涯で芥川賞の候補に四回、直木賞の候補に二回なり、二回目に直木賞候補に上がった「ファーストラヴ」でついに直木賞を受賞しました。
六回の激闘の記録は次のようになります。
また六作品と、それぞれの回の受賞作で私が読んで感想記事を書いたものはリンクを貼っています。
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2003年1月第128回芥川賞(19歳) 「リトル・バイ・リトル」 受賞作「しょっぱいドライブ」(著:大道珠貴)
2004年1月第130回芥川賞(20歳) 「生まれる森」 受賞作 「蹴りたい背中」(著:綿矢りさ) 「蛇にピアス」(著:金原ひとみ)
2006年7月第135回芥川賞(23歳) 「大きな熊が来る前に、おやすみ。」 受賞作 「八月の路上に捨てる」(著:伊藤たかみ)
2011年7月第145回直木賞(28歳) 「アンダスタンド・メイビー(上)」「アンダスタンド・メイビー(下)」 受賞作 「下町ロケット」(著:池井戸潤)
2015年7月第153回芥川賞(32歳) 「夏の裁断」 受賞作 「火花」(著:又吉直樹) 「スクラップ・アンド・ビルド」(著:羽田圭介)
島本理生さん生涯最後の芥川賞候補作
2018年7月第159回直木賞(35歳) 「ファーストラヴ」 直木賞を受賞
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19歳の若さで「リトル・バイ・リトル」で2003年1月第128回芥川賞の候補になったことで、島本理生さんは同世代の作家の中ではトップクラスの実力者として認識されたようです。
しかし1年後の2004年1月第130回芥川賞では同学年の綿矢りささんと金原ひとみさんに受賞を阻まれ、綿矢りささんの「蹴りたい背中」を読んだ私は作品として「蹴りたい背中」の方が心に迫るものがあると思いました。
「アンダスタンド・メイビー」「夏の裁断」「ファーストラヴ」の三作品はどれも芥川賞、直木賞の受賞に相応しい名作だと思います。
「アンダスタンド・メイビー」は池井戸潤さんの「下町ロケット」、「夏の裁断」は又吉直樹さんの「火花」、羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」に敗れ、「下町ロケット」と「火花」を読んだ私は島本理生さんの作品がこれらの作品に負けているとは思わないです。
上回っているのではと思うくらいで、候補作同士の力量が接近している場合、芥川賞や直木賞を受賞できるかはその時々の選考委員の好み次第なところもあるのではと思います。
「アンダスタンド・メイビー(下)」の感想記事では普段ならまず書かないようなことまで書きました。
これは作品に込められた心理描写がそれだけ凄まじくて書かずに通り過ぎるのが無理だったためで、そうさせたのは紛れもなくこの作品の凄さです。
「夏の裁断」で臨んだ2015年7月第153回芥川賞では32歳になり、サッカー選手の生涯最後のワールドカップのような年齢だなと思います。
サッカー選手は32~34歳くらいが最後のワールドカップになる印象があります。
「夏の裁断」を最後に島本理生さんは純文学(芥川賞系の作品)からの卒業を表明し、ついに芥川賞を受賞することはできませんでした。
これ以降本格的にエンターテインメント文学(直木賞系の作品)に路線を変更します。
(写真はジュンク堂書店広島駅前店にて)
そして今年の7月、ついに第159回直木賞を受賞しました。
受賞の前に私がジュンク堂書店広島駅前店で「ファーストラヴ」を買った時は「第159回直木賞候補作」だった帯が受賞後に訪れたら「第159回直木賞受賞作」になっていたのが嬉しかったです
第159回直木賞の候補になったのを知った時、何としても受賞してほしいという思いが強く湧き起こりました。
私の中でいつしか島本理生さんの芥川賞直木賞の受賞が悲願になっていたことに気づきました。
最初の芥川賞候補から15年、長かったですがついに受賞できて本当に良かったです。
これからも島本理生さんの書く作品を楽しみにしています