読書日和

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朝日新聞吉田調書、従軍慰安婦捏造報道 謝罪に至る経緯

2014-09-13 19:55:50 | 政治
8月5日、朝日新聞が「いわゆる従軍慰安婦」の自社の報道について、一部を嘘報道であったと認め、取り消すという事件がありました。
朝日新聞が32年前に報じ、その後も度々報じてきた吉田清治という男の「旧日本軍が朝鮮女性を強制連行して”従軍”慰安婦にした」という内容のものです。
同社は2日間に渡って一面で特集を組み、大規模な報道を展開したのですが、そこには謝罪の言葉がありませんでした。
私は8月10日に「朝日新聞がついに従軍慰安婦の嘘を認める」という記事を書き、事件の経緯とツイッターでの反応などをご紹介しました。

朝日新聞は長年に渡り「極悪非道な旧日本軍が嫌がる朝鮮女性達を無理やり強制連行していって性奴隷にした(従軍慰安婦)」という、反日左翼思想全開の報道をしていました。
慰安婦自体はいましたが、当時の軍人を上回る高い給料を貰っており、奴隷のように扱われていたということもなく、従軍ではなく「募集慰安婦」です。
朝日新聞のせいで、世界から私達の先人(私の年代では祖父の代になります)は女性を性奴隷として扱う極悪非道な人達という言われなき汚名を着せられてしまいました。

8月15日、自民党の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」で、朝日新聞の捏造・嘘報道の問題が取り上げられました。
以下、その場でのジャーナリストの櫻井よしこさんの言葉の一部を紹介します。

『朝日新聞の姿勢として極めておかしなことがある。
何ゆえに、日本国の過去と現在と未来に対してこんなひどい中傷や言われなきことを報道した責任について、
社長自ら、もしくは編集局長自ら表に出てきて釈明し謝罪しないのか。
5日の一面には、朝日があたかも被害者であるかのようなことを書いている。
「言われなき中傷」を浴びたのは日本国だ。先人たちだ。私たちだ。未来の子どもたちだ。朝日ではない。
私は、朝日はまず、1つ2つやるべきことをやった上で、廃刊にすべきだと考えている


しかしこれでもまだ朝日新聞は謝罪しません。
ツイッターでは朝日新聞への怒りの声が収まることなく連日沸き起こっていました。
そうこうしているうちに今度は、朝日新聞が5月20日に報道した東京電力福島第1原発の吉田昌郎元所長の聴取結果書(吉田調書)を巡るスクープ記事が捏造ではないかとの疑いが出てきました。
朝日新聞は5月20日の朝刊で、「吉田調書を独占入手した」とし、「吉田所長の命令に反し、東京電力社員の9割が逃げ出した」と報道しました。
この朝日新聞の報道は海外でも大きく取り上げられ、世界から「韓国のセウォル号の事件で乗客を置いて逃げ出した船長と似たようなものではないか」という印象を持たれてしまいました。

しかしこの後、事件が起きます。
朝日新聞の独占入手だった吉田調書について、産経新聞も入手。
8月18日、産経新聞は「命令違反の撤退なし」と報じ、朝日新聞の報道と全く逆の報道が展開されることになりました。
また、ジャーナリストの門田隆将さんの寄稿「朝日新聞は事実を曲げてまで日本人をおとしめたいのか」も掲載。
ここで国民から「朝日新聞の報道は捏造ではないのか」という疑いの声が強まります。
朝日新聞は「名誉と信用を傷つけられた」として産経新聞社とジャーナリストの門田隆将さんに対し抗議書を送りつけるなど強気な姿勢を見せていましたが…
この後、事態が大きく動くことになります。

8月25日、この事態を見て菅義偉官房長官が吉田調書を公開することを表明しました。
この展開、朝日新聞にとっては衝撃の展開だったことでしょう。
ツイッターで朝日新聞が真っ青になっているのを表す分かりやすい画像があったので以下にご紹介します。

朝日新聞、真っ青になるの図
   

冗談抜きに、この青ざめた社旗のような心境だったと思います。
「もはやこれまで。調書が公開されたら捏造が白日のもとに晒される…謝罪するしかない」と思ったのではないでしょうか。
チェックメイトという状態です。

8月30日には読売新聞と毎日新聞も「命令違反の撤退はない」と報じ、いよいよネットをせずテレビと新聞しか情報源のない層にも朝日新聞の捏造報道のことが知れ渡り、朝日新聞に逃げ場はなくなっていました。
読売新聞は8月5、6日の朝日新聞の”従軍”慰安婦特集の後、同社の長年に渡る報道姿勢について連日特集を組んで猛批判していて、その流れで吉田調書の捏造報道についても追及を始めていました。
面白かったのが毎日新聞で、同社は朝日新聞とともに長年日本を貶めるために活動してきた反日左翼仲間なのですが、自分達のほうにも火の粉が飛んでくるのを恐れたのか、寝返って朝日新聞批判に転じていました。
これもまた醜悪な姿です。

さらに朝日新聞の醜態は続きます。
ジャーナリストの池上彰さんが朝日新聞で書いているコラムで「いわゆる従軍慰安婦」を巡る同社の報道について、「検証は不十分」と断罪し、「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と書き、寄稿しようとしました。
しかし朝日新聞がこれを阻止し、コラムを掲載せずに握りつぶしてしまいました。
これを受け池上彰さんはコラムの連載打ち切りを申し入れ、その事態が表沙汰になり、波紋を広げることになります。
国民から『朝日新聞は日頃「表現の自由」「報道の自由」「言論の自由」を声高に振りかざしているのに、自分達に都合の悪い言論は封殺するのか』と批判が殺到。
批判を受け後日、コラムは掲載されることになりました。
この事件は政府が吉田調書公開を表明した後のことで、既に万事休すだった朝日新聞にとってさらに追い討ちになりました。

9月11日、吉田調書の公開日でもあるこの日、朝日新聞の謝罪会見が行われました。
会見の場に出てきたのは、8月15日に櫻井よしこさんが言っていた木村伊量(ただかず)社長と、杉浦信之取締役編集局長。
ついにこの二人が国民の前に引きずり出されました。
杉浦信之氏は取締役を解任され首が飛び、木村伊量社長も改革の道筋を付けたら早急に進退について決断するとのことです。
また、この日の謝罪会見は吉田調書の捏造報道についてでしたが、合わせて慰安婦特集で謝罪がなかった件と池上彰さんの件についても謝罪していました。

9月11日のこの日、ニッポン放送のラジオ番組「ザ・ボイス そこまで言うか!」に生出演した安倍晋三首相は、「(朝日新聞の)誤報によって多くの人が苦しみ、国際社会で日本の名誉が傷つけられたことは事実と言ってもいい」と発言。
「一般論として申し上げれば、報道は国内外に大きな影響を与え、我が国の名誉を傷つけることがある」とも指摘しました。

事実をねじ曲げてまで日本を批判したい。
とにかくいかにして日本を批判し、貶め、ぶっ潰す方向に持っていくか。
この一点のみが朝日新聞社の行動原理であり、「反日左翼新聞」「売国左翼新聞」と呼ばれる由縁がここにあります。

反日のためには捏造も偏向も当たり前で、国民に絶大な影響力を持つ自分達が報道してしまえば嘘であろうとそれが真実、これが朝日新聞の思考回路です。
朝日新聞が32年前に仕掛けた”従軍”慰安婦なる嘘報道。
これは先人の名誉に関わることです。
32年後の今、ようやく一部を嘘報道であったと認め取り消しましたが、既に朝日新聞による嘘報道が世界中に拡散されてしまっています。
それによって日本が被った損害は計り知れません。
先日既に朝日新聞抗議デモが勃発し、9月21日にも朝日新聞本社のある東京銀座・築地で抗議デモが予定されているようです。
国民の朝日新聞への怒りは頂点に達しています。
私も櫻井よしこさんと同じく、朝日新聞にはまず世界に向けて自社の報道が嘘だったことをきちんと発信させ、その後は廃刊にすべきだと思います。
最低な反日新聞社、倒産して日本から消えてなくなってほしいです。




「サマーウォーズ クライシス・オブ・OZ」土屋つかさ

2014-09-12 23:59:59 | 小説
今回ご紹介するのは「サマーウォーズ クライシス・オブ・OZ」(著:土屋つかさ 原作:細田守)です。

-----内容-----
ネット上の仮想世界OZ(オズ)で、”キングカズマ”として名を馳せる佳主馬は(かずま)は、ちょっとドジなアバター【マキ】と出会う。
しかも【マキ】の本体である真紀は佳主馬がいるネットカフェの隣席におり、彼女が兄から預かったデータを狙う男たちに襲われていた!
真紀を助けた佳主馬は、男たちから逃げるうちにそのデータがOZに莫大な被害をもたらすものだと知るのだった。
真紀とOZを守るため、佳主馬と”キングカズマ”は戦いに挑む!!

-----感想-----
「サマーウォーズ」からのスピンオフ作品となります。
世界中の人が集い楽しむことができる、インターネット上に構築された世界最大の仮想世界「OZ(オズ)」が舞台の作品です。

ゴールデンウィーク初日の土曜、キングカズマこと池沢佳主馬はネットカフェに来ていました。
OMC(OZ・マーシャルアーツ・チャンピオンシップ)は現在OZで最も人気のある格闘技スポーツ。
年4回日本選手権が行われていて、ちょうど「OZマーシャルアーツチャンピオンシップトーナメント日本選手権2010spring(春大会)」が開催されるところです。
そのOMCで世界チャンピオンの座に君臨しているのがキングカズマ。
昨年夏の大会でOMCの世界チャンピオンになり、秋、冬の大会でもチャンピオンベルトを防衛しています。

OZは、いろんな人が作った小さなコンピュータープログラムの塊、コンポーネントと言う物の集合体。
また、OZには世界中の企業が参入していて、特にショッピングエリアの店舗の数は莫大で、ショッピングモールを単位に数えても軽く数万はあるとのことです。
まさに世界最大の仮想世界というわけです

佳主馬が来ていたネットカフェの隣の席に、山之手真紀という女の子がいました。
OZで真紀のアバター【マキ】が困っている現場に佳主馬のアバター【カズマ】が遭遇し、途方にくれていた真紀が「なんでこんなに動きにくいのよっ、ここはっ!!」と叫び声を上げたら、その声が佳主馬のすぐ隣の席から聞こえてきたというわけです。
真紀は高校三年生で佳主馬は中学一年生です。
佳主馬は真紀に終始ドキドキドギマギしっ放しで、その姿が何とも微笑ましかったです^^
「サマーウォーズ」ではクールなキャラだったのでこんなキャラだったかな?と思いました(笑)
佳主馬が真紀の個室にお邪魔し、困っている【マキ】を操作して助けていたら、突然個室の扉が乱暴に開かれ、鳥居と大久保という謎の男二人組が押し入ってきます。
「山之手祐司から預かっているデータがある筈だ。寄越せ」と言ってきます。
突然の事態に驚く二人でしたが、佳主馬が真紀を連れて逃げ、その場は無事に逃げ切ることができました。

真紀から事情を聞くと、兄の山之手祐司はもう一人の天才プログラマー、織田善夫とともにOZマーシャルアーツの大元のプログラム群となる「MAコンポーネント」の作者で、OMCの世界では凄く有名な人だと分かります。
現在は二人とも株式会社OZマーシャルアーツスタジオの取締役兼主任設計者(メインアーキテクト)とのことです。
真紀はその兄から
「24時間経っても俺から連絡が無かったら、添付ファイルを同僚の織田に届けてくれ。直接渡す事。絶対にOZ経由で送らないでくれ。この携帯も今後もOZに接続するな。頼む」
とメールを受けていました。
極めて重要なデータを預かっていたのです。
謎の男二人組はそれを奪おうとしていました。

葵の紋所のアバターの、イエヤスという謎の人物も登場。
このイエヤスが鳥居と大久保に指令を出し真紀の持っているデータを奪おうとしている黒幕です。

ちなみにファイルの中身はOZビジネスエリアのMAコンポーネントの管理パスワード。
OZにあるのはショッピングエリアだけではなく、世界中の企業がオフィスを出しているビジネスエリアもあります。
OZは数千数百のプログラムコンポーネントの集合体から出来ていて、それぞれのコンポーネントには管理パスワードが設定されていて、そのパスワードを知っていれば、対応するプログラムを自由に修正する事が出来ます。
山之手祐司は、以前から会社内に裏切り者がいると考えていました。
その裏切り者が不正にプログラムを修正し、不正な金儲けをする可能性が高いと考え、山之手祐司は咄嗟にパスワードを書き換え、それを真紀に託したようでした。

逃げる佳主馬&真紀と、追ってくる鳥居&大久保。
現実世界だけでなく、OZの世界でも戦いが繰り広げられました。
イエヤスが送り込んだ、【カズマ】をも超える恐るべきアバター、シャドウラビットなる強敵も登場。
久しく見ない強敵を前に”キングカズマ”こと佳主馬はワクワクし、果敢に戦っていきますが、しかし…

さらに、OMCエリアのエリアマスターの一人である「KK」の存在。
作中で「KK」はよく佳主馬たちを助けてくれました。
その正体は、「サマーウォーズ」を読んでいると感づくと思います。

そして「サマーウォーズ」でも活躍していた陣内(じんのうち)家の16代目当主・陣内栄が今作でも大活躍していました
登場期間は短いのですが存在感が圧倒的に凄かったです。
ご先祖様の旗印、六文銭(三途の川の渡り賃が六文銭。戦って死ぬ事も厭わない、不惜身命の決意を表していた)について語る場面も印象に残りました。

『格闘家に本当に必要な物、それは、相手の呼吸を聞く耳、そして相手との間合いを計る目だ。常に敵の次の行動を読み、適切な間合いに入っていれば、どんな戦いでも負けはせん』
新潟の万助おじいちゃんが佳主馬に教えてくれたこの格闘家の極意は良いなと思いました。
鳥居&大久保やシャドウラビットとの戦いでもこの教えを生かして戦っていました。
そして、イエヤスとの対決でも。
終盤でアバター「イエヤス」の現実世界での正体が明らかになるのですが、イエヤスとの対決はまさにOZの世界がクライシス(危機)になるような激しい展開になりました。
しかし、OZの世界には”キングカズマ”がいます。
イエヤスの暴走を止めるため、最後の戦いへと臨んでいきます。

池沢佳主馬にスポットを当てたこの作品、楽しく読むことができました。
現実世界での佳主馬と真紀の奮戦、OZの世界でのキングカズマの戦いぶり、佳主馬の真紀への恋心など見所満載で良いスピンオフ作品だったと思います


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「不思議プロダクション」堀川アサコ

2014-09-10 23:50:26 | 小説
今回ご紹介するのは「不思議プロダクション」(著:堀川アサコ)です。

-----内容-----
青森の弱小芸能事務所に所属するものまね芸人、シロクマ大福、25歳。
将来への不安と迷いを抱える彼のもとには、仕事のオファーはないのに、なぜか不可思議な事件解決のオファーはひっきりなし。
悪戦苦闘しながらも、個性豊かなメンバーと共に解決へ向けて立ち向かうのだが……。
ちょっぴりおとぼけ、ちょっぴりファンタジーのエンタメミステリー。

-----感想-----
作者の堀川アサコさんが青森県出身ということもあり、この作品は青森県が舞台です。
青森が舞台の小説を読んだのは初めてかも知れません。

青森県に、伏木プロダクションという芸能事務所があります。
バブル景気の頃、遅咲きの実力派女優として活躍し出していた伏木貴子が後に立ち上げた事務所です。
伏木貴子は自分が女優としてずっと活動するより、芸能事務所のほうに興味がありました。
今では常にシャネルのエゴイストという香水の香りを振りまく美魔女社長となっています。

伏木プロダクションには100人を超えるタレントがいます。
しかしそのほとんどが本職とは別の趣味の名人で、長年会社の花見や忘年会を盛り上げてきた芸達者が、リタイア後に一念発起して芸能事務所に登録してみたというレベルのタレントが100人中の90人を占めるとのことです。

その伏木プロダクションに所属する芸人に、シロクマ大福という男がいます。
25歳で本名は北村大地。
得意のイタコおろしをはじめとして、大物芸能人から鳥から獣など、色々なものまねができます。
しかし、売れていません。
本人も東京に打って出る度胸はなくて、青森で細く食いつないでいくよりないと考えています。

物語は以下の四話で構成されています。

第一話 ものまね
第二話 超能力
第三話 イリュージョン
第四話 降霊術

どの話にも、伏木プロダクションに所属する芸人が関わってきます。
そしてミステリー要素あり、ホラー要素あり、ファンタジー要素ありの、不思議な事件が起こります。
このミステリー、ホラー、ファンタジーの3つは「幻想郵便局」「幻想映画館」「幻想日記店」の幻想シリーズに代表されるように、堀川アサコさんの小説では頻繁に登場している三大要素です

第一話は、ものまね芸人シゲタシゲルを巡る物語。
銀杏銀座商店街の恒例イベントの夏祭りで毎年大福はものまね芸人としてステージに上がっていたのですが、今年はその役をシゲタシゲルという男に取られてしまいました。
いじける大福。
しかもシゲタシゲルのものまねの上手さは驚異的なレベルで、大福も完敗を認めるほどでした。
しかしステージに三人の闖入者たちがやってきて事態は一変。
酔っ払っている三人は
「おまえ、よくこんなところに顔が出せたな。偉そうに壇の上に上がる前に、おれたちに云うことがあるんじゃないのか?謝ることがあるんじゃないのか?」
とシゲタシゲルに絡んできました。
三人を押さえるために夏祭りの会場は混乱し、やがて混乱が収まった時にはシゲタシゲルの姿は消えていました。

さらに次の日、伏木プロダクションに昨夜とは別のシゲタシゲルを名乗る人物がやってきて事態はますます混乱。
本物のシゲタシゲルはこちらで、昨夜のシゲタシゲルは偽者でした。
そして伏木社長に命じられ、大福がにせシゲタシゲルを捕まえるために動くことになります。
伏木プロダクション所属のタレント、ソフィアちゃんのアドバイスにより、にせシゲタシゲルがおニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」を歌いながら、歌声を松田聖子と郷ひろみとミック・ジャガーに次々変えていくという離れ業をやっていたことから、にせシゲタシゲルの謎を解く鍵は29年前、1985年にあると考えます。
ちなみにソフィアちゃんは「女装の麗人」という芸で全国区の人気を持っています。

第二話は、伏木プロダクションにマジシャンとして籍を置くクロエが登場。
クロエはスピカというファッションビルの6階で占いショップをやっています。
黒髪のショートで黒いワンピースで黒ブーツという黒ずくしで、いかにも占い師な風貌です。

日々占いの研鑽を積んでいると、姿を見ただけでその人の心の重さが判るようになってくる。
というのは印象的でした。

このお話では、ホラー要素が怖かったです
クロエの占いショップと同じ階に、オモチャのナイトーというオモチャ屋があります。
そこに勤める新入社員の篠井早菜(さな)に、「どーこ」という謎の子供の声が聞こえてきます。
それ以来、早菜は幻覚のようなものを見るようになりました。
オモチャのナイトー社長の内藤正樹が乗っているスクーターがバランスを崩して交通事故に遭う幻覚を見たら、実際にそのとおりのことが起きました。
さらに、売り場にある本来着信音など鳴るはずのないオモチャの電話が突然鳴り出し、早菜が恐る恐る受話器を耳に当ててみると、聞こえてきたのはまたしても「どーこ」という謎の声。
これは思わずゾッとしました。

この話には雪田宝飾社長夫人の雪田瑞恵という人も登場していて、気になる人でした。
マオカラーのワンピースという描写があり、どんなワンピースなのか気になるところでした。
調べてみるとマオカラーとは襟型の一種で、中国の人民服に見られるような立ち襟とのことです。
マオとは中国の元主席・毛沢東の名前(マオツォートン)から由来しています。
カラーは襟の部分のことを言います。
さらにドレープをふんだんに使った白いカーディガンとあり、どんなカーディガンだろうと思い調べたらよく見る洒落たカーディガンが出てきて納得しました。
ゆったりとしたカーディガンを「ドレープカーディガン」と言うようです。
そんな洒落た装いの、クロエが「オリエンタルの淑女」と名づけた雪田瑞恵が、物語に強く関わってきます。

「大人はね、自分で自分を育てるの。育つ気がない人は、大人も子どもも変わりませんよ」
伏木社長のこの言葉も印象に残りました。


第三話は、伏木プロダクションの秘蔵っ子であるヒロトが登場。
ヒロトは「デイジー」というロックバンドでボーカルをしています。
デイジーは実力のあるバンドですが、メンバーのルックスも良いことから、アイドルグループとしての売り方もあると伏木社長は考えています。
そして、デイジーの全国進出によって自分も東京に連れていってほしいと考えています。

この話では津軽半島にある寒村の十字村が舞台になります。
そしてヒロトが恋をしてしまった須崎千英梨という女性と、「ひかり島」という謎の島が物語に大きく関わってきます。

「ひかり島に捕まれば、帰れなくなる」

ファンタジー要素とホラー要素のある物騒な島を巡る事件に、村おこしイベントに出演していた大福とソフィアちゃんも巻き込まれていきます。


第四話は、シロクマ大福こと北村大地の物語。
両親が就活スーツを持って、大福のアパートに押しかけてきます。
そしていつまでも売れないものまね芸人などしていないで、会社に就職しなさいと言ってきます。
叔母の連れ合いの取引先の「加納商店株式会社」という会社で営業職の欠員ができたので、大福をコネ入社させてやるとのことです。
4日後に面接があるから準備を万端にしておけと言って両親は去っていきますが、大福は気乗りしません。

この物語には「フェミおじさん」という女装したおじさんが登場します。
いつもワンピースやボレロやミュールに身を包み道を歩いているものすごい不審人物なのですが、このおじさんの正体が意外なところで明らかになり驚くことになりました。

また、大福が最も得意とする芸である「イタコおろし」が活躍する話でもあります。
伏木社長が所属している新時代倶楽部という社交クラブの納涼会で大福がイタコおろしを披露したのですが、
みんなウケて大いに笑っている中、郷坂りつ子と郷坂志保理の二人だけが全く笑わずにいたのが目に留まりました。
そしてその後、郷坂りつ子の屋敷に呼び出されます。
郷坂りつ子は明治時代に菓匠・故郷堂を創業した初代店主の孫娘で現在は隠居しています。
故郷堂は地元の人間にとって手土産の定番のお店とのことです。
郷坂志保理は、りつ子の孫娘で高校生です。

郷坂りつ子は大福のイタコおろしを見て本当に霊を降ろせると勘違いし、亡くなった息子の魂を降ろしてほしいと頼んできます。
当然できるわけないのですが、あまりの必死な頼みに霊を降ろしているふりだけでもしてあげようと大福がイタコおろしをすると、どんな力が働いたのか、なんと本物のイタコの降霊術のようなことができてしまいます。
そこで大福は、亡くなった息子、郷坂真次について何とも奇妙な光景を見ました。
それを境に、大福は車に轢かれそうになったり、歩道橋から突き落とされたりして、身に危険が迫るようになります。
不穏な気配が迫る中、郷坂りつ子の息子の死の真相が明らかになっていきます。

この物語には「蝶々は一頭、二頭と数える」とあり、これは知らなかったので驚きました。
そして夾竹桃雀(キョウチクトウスズメ)という迷彩柄のような緑色の蝶々(正式には蛾)も物語に大きく関わっていました。


各章ごとに、伏木プロダクションに所属しているタレントが事件に遭遇していました。
どの話も新たに登場する人物それぞれに不思議なことが次々と起こっていきます。
そのテンポが早く、いったいどんな話になるのか全く予想がつきませんでした。
ひとつの事件が解決するのは早いですが、すぐに次の事件が起こっていきます。
しかもいずれもホラーチックでちょっと怖かったです。
やはり堀川アサコさんの作品らしく、ミステリー、ホラー、ファンタジーの三大要素が折り重なった面白い物語になっていました。
また新たな作品も読んでみたいと思います


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「キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇」石田衣良

2014-09-07 23:51:59 | 小説
今回ご紹介するのは「キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇」(著:石田衣良)です。

-----内容-----
誰にだって忘れられない夏の一日があるよな―。
高校時代のタカシには、たったひとりの兄タケルがいた。
スナイパーのような鋭く正確な拳をもつタケルは、みなからボスと慕われ、戦国状態だった池袋をまとめていく。
だが、そんな兄を悲劇が襲う。
タカシが仇を討ち、氷のキングになるまでの特別書き下ろし長編。

-----感想-----
この作品はシリーズ一作目の「池袋ウエストゲートパーク」から2年ほど遡った時代の話です。
真島誠と安藤崇は高校二年生で、季節は夏
夏休みになる直前から物語は始まっていきます。
語り手は池袋ウエストゲートパークシリーズと同じく誠が務めています。
まだ安藤崇はGボーイズ(ギャングボーイズ)のキングではなく、Gボーイズ自体存在していません。

マコトとタカシには忘れられない夏の終わりの一日があります。
そしてそれは同時にタカシのひとりきりの兄、安藤猛の命日でもあります。
この物語はタカシがどう兄のタケルの仇を討ち、池袋のキングになったのかの物語です。

マコトとタカシは都立豊島工業高校に通っています。
生徒の三分の一が学校をドロップアウトする不良の名門校で、喧嘩や他校との出入り(争いごと)は当たり前とありました

マコトとタカシが学校をサボって訪れた東急ハンズの裏にあるゲームセンター。
そこでは田宮さん(通称ミヤさん)という都立豊島工業高校卒の二つ上の先輩で、タカシの兄・タケルの友達がアルバイトで働いています。
この田宮さんとの会話で、タケルの人物像が明らかになってきます。
タケルはマコトたちの高校のボクシング部元主将で、ライト級で高校総体(インターハイ)2位になった実力者です。
今はときどきアルバイトをしながら、ふらふらしているとありました。

序盤はタカシについてちょっとひ弱なふうに語られていました。
けっして肉づきはよくない。薄い板のようなガキの背中。
やつの声は控え目なので、ゲーセンではひどくききにくい。
このちょっとひ弱な印象のタカシがどんなふうに池袋のキングになっていったのか、とても興味深かったです。

この夏、東京では繁華街ごとにチーマーのヘッドが巨大組織を作り始めていました。
池袋のチームはとなりの新宿と抗争を繰り返しています。
また、池袋は渋谷のチームと友好関係を結んでいて、新宿は練馬のチームとタッグを組んでいるとのことです。
まだGボーイズが結成される前、池袋には数十のチームがあり、それぞれがばらばらに活動していました。
それが街同士の抗争で危機に直面し、組織をしっかりと構成して対抗する必要が出てきました。
そしてそんな戦国時代の池袋をまとめようとしているのが、タカシの兄のタケルでした。
「池袋のノブナガ・オダ」という表現が印象的でした

またタカシについてさらに驚いたのが、
タカシは兄貴とは逆で、暴力沙汰の起こりそうな場所には絶対に近づかなかった。なんでもタカシはガキのころ喘息気味で、おふくろさんから激しい運動は禁じられていたそうだ。
とあったこと。
これも信じられないような話で、池袋のキングとのギャップに驚きました。

ここ二ヶ月ほど、池袋では「ノックアウト強盗」による事件が続いていました。
別名「KOキッド」とも呼ばれ、夜道を歩いていると、向こうから歩いてきたガキがすれ違いざまにいきなりパンチを放ち、相手の会社員や大学生をノックアウトし、財布から金だけ奪って去っていくという強盗事件で、これが五件も連続して起きていました。
そしてタケルはその犯人がタカシなのではないかと心配していました。
タケルがタカシにボクシングの技を教えていて、しかも最近タカシは夜になると出かけていたからです。
タケルはマコトにタカシの様子をそれとなく観察してくれないかと頼んできます。

「タカシの器は底がしれない。兄貴の欲目かもしれないが、ボクシングだって本気でやれば、あいつのほうが才能はある」
この言葉が示すように、兄は弟の才能に気づいていました。
しかしもしかするとその才能をノックアウト強盗に使っているかも知れず、不安を感じてもいます。

タケルとタカシには、安藤華英(はなえ)という病気がちのお母さんがいます。
マコトとタカシが入院している病院にお見舞いに行った時、華英がマコトにお願いをしてきました。
「タカシはほんとは誰よりもやさしくて、人の痛みがわかる子なの。だから、マコトくん、もしあの子が人の道をそれそうになったら、あなたに引きもどしてほしい。間違ったことをしたら、身体を張ってとめてあげてほしいの」
自分の死期が近いことを悟っている華英からマコトへの、遺言のようなお願いでした。
マコトはそれを引き受けます。

その頃、ノックアウト強盗の手口が変わりました。
本編でおなじみの池袋署少年課の刑事、吉岡からその話を聞き、新たな手口のタイミングから見てマコトはタカシへの疑いを持ちました。

一方街の抗争のほうは、埼玉から東京のチームを潰しにやってきている双子の板倉兄弟が派手に暴れていました。
埼玉ライノーズというチームを率いています。
兄のケイジはキックボクシングの使い手、弟のセイジは得物を使い、マコトたちの先輩の田宮さんが病院送りにされた相手をこの二人は病院送りにしていました。

そしてついに池袋ギャングボーイズ、Gボーイズが結成されます。
結成式の場所は西口公園、ウエストゲートパークです
Gボーイズの初代ボスには安藤猛が就任しました。

東口に西武、西口に東武、池袋にくることのないやつはそう覚えておくといい。だいたい世のなかは反対にできている。
これは何だか良い表現だと思いました

やがてノックアウト強盗、”KOキッド”の正体が分かります。
この頃、タカシもGボーイズのメンバーに入っていました。
そしてついに、タケルとのお別れの時が来ます。

おれの人生最大の後悔はあのときだ。あのとき、タケルを無理やりうちに誘っていれば、あんなことにはならなかったんじゃないか。おれとおふくろは何度もその話をした。

Gボーイズの初代ボス、タケルの死。
タカシはタケルの仇を討つことを決意します。
決着がつく頃には、池袋ギャングボーイズ、Gボーイズのキング・崇が誕生していました。

今回は「キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇」ということでタカシがキングになるまでの物語だったのですが、マコトの目線で語られていただけにマコトの物語でもありました。
池袋の絶対的な存在、キング・崇のただ一人の友達、真島誠。
二人が駆け抜けた高校時代の青春の物語、面白かったです

シリーズ11作目の「憎悪のパレード」ではかなり無理のある政治主張をマコトに語らせていて、読んでいて驚きました。
この作品は大丈夫なのかと少し心配だったのですが、幸いこの作品ではそういったことはありませんでした。
変に石田衣良さんの政治主張をマコトに語らせると作品が壊れてしまうので、やめておいたほうが良いのではと思います。


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「植物図鑑」有川浩

2014-09-06 17:58:53 | 小説
今回ご紹介するのは「植物図鑑」(著:有川浩)です。

-----内容-----
お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。
咬みません。躾のできたよい子です―。
思わず拾ってしまったイケメンは、家事万能のスーパー家政夫のうえ、重度の植物オタクだった。
樹という名前しか知らされぬまま、週末ごとにご近所で「狩り」する風変わりな同居生活が始まった。
とびきり美味しい(ちょっぴりほろ苦)“道草”恋愛小説。

-----感想-----
主人公は河野さやか。
25歳のOLです。
ある日、さやかが仕事を終えて帰ってくると、マンションの前の植え込みに男が倒れていました。
手持ちの現金も尽き、お腹が空いて行き倒れていたとのことでした。
男は「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」などと言ってきます。
そしてさやかはこの男を部屋に上げ、食事とお風呂を提供してあげました。
さやかは自炊をあまりしないため、カップラーメンでしたが。
それにしても冒頭からとんでもない展開だなと思いました

次の日さやかが起きてくると、男は既に起きて朝食を作ってくれていました。
何しろさやかは自炊をしないので食材がほとんどないのですが、男はキッチンにかろうじてあった玉ねぎと卵だけで料理を作っていました。
しかもこれが美味しく、さやかは男の料理の腕に驚きます。
男は行く当てもなく、アルバイトをしながら各地を放浪していたようで、さやかは部屋を後にしようとする男を「行く当てがないならここにいないか」と引き止めます。
さやか的には情が移ってしまったようで、さらに料理も上手く、しばらくその上手い料理を食べたいと思ったようでした。
男は樹木の樹と書いてイツキという名前で、苗字のほうは本人が嫌っているらしく、言いませんでした。
イツキという名前以外には苗字も、どこから来たのかも分からないまま、二人の同居生活が始まっていきます。

樹は植物への造詣が深く、半端ではなく詳しいです。
週末になると二人で出かけ、山菜や野草を取りに行くようになります。
そこで樹の植物への知識が大活躍で、まるで博士のようでした。

「雑草という名の草はない。すべての草には名前がある」
という昭和天皇の名言があるのですが、作中ではこの言葉が何度も出てきました。
道端に生えているどんな草にも名前はあり、しかも面白い名前のものもあり、興味深かったです。
「ヘクソカズラ」、「スカシタゴボウ」などがありました。

出かけて取ってきた山菜や野草は、樹が料理してくれます。
最初はツクシ、フキ、フキノトウから始まって、実にたくさんの山菜や野草の料理が登場しました。
料理の場面は楽しく、次はどんなものを作るのかと興味を持ちました。
「クレソン」や「アップルミント」がその辺に自生しているのも驚きでした。
高知県馬路村のゆずポン酢が出てきた時は先日「県庁おもてなし課」を読んだばかりだったので「あの村のゆずポン酢か」とすぐにイメージが湧きました

さやかと樹の前をセキレイが走っていく場面があったのですが、その場面を見たら私もセキレイが見たくなりました。
両足で人間みたいに速く走る鳥とのことです。

「ワラビ」と「イタドリ」についての話も興味深かったです。
「イタドリ」は特に高知県の人に親しまれている山菜で、全国的な知名度はワラビのほうが上ですが、味はイタドリのほうが圧倒的に上とのことでした。
徳島や愛媛では最初イタドリを食べる文化がなかったらしく、高知から業者が軽トラで遠征してきてイタドリを収穫していくのを不思議そうに眺めていました。
やがて「もしかして食べたら美味いんじゃないか」と思い食べてみたら美味しかったようで、徳島や愛媛でもイタドリを食べるようになりました。
山菜にまつわるこんな話も語られていたので読んでいて面白かったです。

「食材、特に野菜ってこれはこうとか使い方を頭で限定しないほうが面白いものができたりするんだよ」
樹のこの言葉が示すように、「レタスの味噌汁」という変わった味噌汁も出てきました。
作中では「食べてみると軽く火の通ったレタスの食感は味噌汁によく合った」とあり、どんなものなのか一度飲んでみたい気もします。

そしてこの物語では恋愛の書き方がとんでもなく甘ったるかったです
そこは好みによって評価が分かれるところだと思います。
甘すぎる恋愛とさまざまな山菜や野草が印象的な一冊でした。


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「有頂天家族」森見登美彦 -再読-

2014-09-05 01:11:50 | 小説
再読でも全く色あせない面白さでした。
今回ご紹介するのは「有頂天家族」(著:森見登美彦)です。

-----内容-----
「面白きことは良きことなり!」が口癖の矢三郎は、狸の名門・下鴨家の三男。
宿敵・夷川(えびすがわ)家が幅を利かせる京都の街を、一族の誇りをかけて、兄弟たちと駆け回る。
が、一族はみんなへなちょこで、ライバル狸は底意地悪く、矢三郎が慕う天狗は落ちぶれて人間の美女にうつつをぬかす。
世紀の大騒動を、ふわふわの愛で包む、傑作・毛玉ファンタジー!

-----感想-----
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下鴨神社糺ノ森(ただすのもり)。
ここに主人公・矢三郎たちの住み処があります。

物語の語り手は狸の名門下鴨家の三男、下鴨矢三郎。
四兄弟で長兄は矢一郎、次兄は矢二郎、弟は矢四郎といいます。
狸達は人間に化けて行動することがしばしばあります

天狗と狸と人間の三つ巴。
それが京都の街の大きな車輪を廻していて、この物語の重要な要素になっています。

父・下鴨総一郎はかつて洛中の狸界をまとめ上げた大狸であり、狸界のトップ「偽右衛門(にせえもん)」の称号を持っていました。
しかしそんな大狸も数年前「狸鍋」にされて食べられてしまいました。
総一郎を鍋にして食べたのは狸界にとっての天敵「金曜倶楽部」。
金曜倶楽部とは大正時代から続いている秘密の会合で、ひと月に一度、金曜日に開かれることからその名がついたと言われています。
金曜倶楽部では毎年忘年会で「狸鍋」を食べるのが恒例で、それゆえに狸達からは忌み嫌われ恐れられています。

矢三郎たち下鴨家の狸の恩師であるのが「赤玉先生」こと如意ヶ嶽薬師坊(にょいがたけやくしぼう)。
この人は「天狗」です
「赤玉」とは赤玉ポートワインが大好きで飲みまくっているところに由来しています
京都には狸のほかに天狗もたくさん住んでいて、鞍馬山の鞍馬天狗が最も名高くエリート達が集っているとのことです。
如意ヶ嶽薬師坊も有名な天狗で、往年の時代には天狗らしく好き放題威張り散らし暴れ散らし鞍馬天狗達とも張り合っていました。
しかし、そんな栄光の時代も今は昔。
今ではかつての力はほとんど失われ、出町柳の「コーポ桝形」というアパートで寂しく暮らしています。
「往年の大天狗も寄る年波には勝てんのか」という言葉が印象的でした。

金曜倶楽部に「弁天」という女の人がいます。
元々は鈴木聡美という名前で、かつて琵琶湖のほとりを歩いていたところを赤玉先生に連れ去られて京都へやってきました。
そして赤玉先生から天狗教育を施されて天狗への道を歩んでいくのですが…
やがて師である赤玉先生を追い落とすことになります。
「先生が絵に描いたような没落の運命を辿る一方、まるで天秤の反対側が持ち上がるようにして弁天は力をつけていった」とありました。
金曜倶楽部七人衆の一人にして天下無敵のやりたい放題な天狗・弁天の誕生です。

金曜倶楽部の最初の会合は鴨川沿いの納涼床で開かれていました。
私は納涼床を体験したことはないのでどんなものなのか興味深かったです

「偽電気ブラン」は「夜は短し歩けよ乙女」にも出てきた怪しげなお酒
狸界で広く愛飲され、人間の中にも隠れ常飲者が多いと言われる、東京浅草の「電気ブラン」をまねて造った秘酒です。
今作ではこのお酒の製造工場の存在が明らかになります。

弁天と矢三郎の会話はリズミカルで面白いです。
「狸のくせに」
「狸であったらだめですか」
「だって私は人間だもの」

「あなたが喧嘩を売ってくれたら、私喜んで買うのに」
「とんでもない」
「そうしたら捕まえて忘年会の鍋にしてやるわ」
「またそんな無茶を」

意外とこの二人は仲が良いなと思います。
弁天は矢三郎のことを「食べちゃいたいほど好き」と言っているので、いずれ狸鍋にされてしまう日が来る可能性もありますが

六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)境内の古井戸に、次兄の矢二郎がいます。
その姿はなんとカエル
矢二郎は父・総一郎の死以来すっかり覇気をなくし、ついに狸であることをやめ、井戸の中の蛙になることを選びました。
しかも蛙の姿が板につきすぎてもう元の姿に戻ることもできません。
次男の矢二郎は井戸の中の蛙、三男の矢三郎は阿呆なことを好むひねくれ者、四男の矢四郎は超臆病な坊っちゃんで、長男の矢一郎が「なぜ俺の弟たちはこんなに役に立たない奴ばかりなんだ!」と嘆いていたのが面白かったです(笑)

矢三郎達の祖母の話も少し出てきました。
矢二郎が「あんな性悪クソばばあ」と言っていたので、矢二郎との仲は悪そうです。
もしかしたら続編にこの祖母が出てくるのかも知れません。

そして下鴨家の宿敵、夷川家の存在。
総一郎の弟である夷川早雲を筆頭に、その息子の呉二郎と呉三郎、通称「金閣」「銀閣」の阿呆の双子兄弟が出てきます。
矢三郎曰く、「狸界随一の阿呆兄弟」とのことです。
その下にもう一人「海星」という妹がいるのですが、こちらは口は悪いものの下鴨家を目の敵にしているわけではないようです。
ちなみに矢三郎のかつての許嫁でもあります。

如意ヶ嶽の「二代目」についても、少し触れられていました。
絶縁状態になっている赤玉先生の息子で、これもきっと続編に出てくると思います。
聞くところによると弁天と対決するらしいのでどうなるのか楽しみです。

向かうところ敵なしでやりたい放題な弁天にも、ちょっと気になる一面があります。
本人曰く「月が綺麗だと、なんだか哀しくなっちまうのよ、私は」とのことで、しきりに「哀しい」「哀しい」と言っていました。
さらには夜の六道珍皇寺の井戸にもやってきて、井戸を覗きながら涙を流していました
ちょうどその時井戸の中には矢二郎のほかに矢三郎も泊まりにきていて、二人で弁天の様子を伺っていました。
弁天がなぜ泣いていたのかも続編で明らかになるかも知れません。

そして狸が主役の物語だけに、化け合戦が最高に面白かったです
矢三郎が立ち寄った蕎麦屋で、突然壁を埋めていたメニューの札がメンコのように裏返り出します。
そこに書かれているのは「捲土重来」「捲土重来」「捲土重来」。

捲土重来―ひとたび敗北した者が勢いを盛り返し、ふたたび攻め来たること。

まさかの逆襲が矢三郎を襲います。
さらに、世を捨て井戸の中の蛙になった矢二郎が叫ぶこの言葉。
「捲土重来!」
この場面はかなり良いなと思います。
再読でもすごくワクワクした気持ちになりました。
物語がラストに向かって劇的に動くことを予感させる捲土重来でした。

「面白きことは良きことなり!」は父・下鴨総一郎の口癖でもあり、矢三郎の口癖でもあります。
何かミスしてしまった時に言う「なあに、これもまた阿呆の血のしからしむるところだ」もしかり。
最高に面白い狸たちの物語、早く続編が読みたいなと思います


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久しぶりの晴れ

2014-09-02 22:08:27 | ウェブ日記
今日は久しぶりに朝から晴れていました
朝の天気予報によると清々しく晴れるのは実に9日ぶりとのことでした。
土日に少し晴れ間が見られたくらいで、ここしばらく曇りや雨の日が多かったですからね
久しぶりに朝から綺麗な晴れが見られて私も嬉しかったです^^

雨の日は何となく気持ちもどんより沈んでしまいます。
ここ数日はそんな日ばかりだったので気分の晴れない日が続いていました
そこで気分転換のためにここ数日ご飯をちょっと奮発しています
美味しいものでも食べて気分を盛り上げようと思いました。
土日は家に居ると気分が沈みそうだったので気分転換に外に出るようにしていました。
2日連続でスターバックスカフェに寄っていました。
ちょっとした気分転換が大事だなと感じています

8月の下旬から曇りや雨の日ばかりになって、気温も30度を下回ったり25度を下回ったりする日が続きました。
気候的には完全に秋雨のようになっていました。
残暑をあまり実感しないまま9月に入ってしまい、何だか不思議な気がします。
今年はこのまま秋になっていくのでしょうかね。
あまり曇りや雨の日が多いと困るので、ほどほどにしてほしいなと思います。