ダイニング・ウィズ・ワイン そむりえ亭

料理にワインを
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 樋口誠

デキャンタの目的

2011年09月10日 05時35分49秒 | ワインの事

ワインを扱う中でデキャンタという技術があります。

ボトルのワインをデキャンタ(カラフェともいう器)に移し替えることを指します。

これには幾つかの目的があります。

1:古いワインのボトルの底に溜まっている(意図的に集めている)沈殿物をボトルに残すべく上澄みの美味しい部分のみをデキャンタに移し替える。

2:セラー温度から移し替えることで温度を上げる。(場合によっては冷やしたデキャンタに移すことで温度を下げる場合もある)

3:移し替えることで空気接触を促進して飲み頃に近づける。

などがあります。

若いワインを扱うことの多い現在では、が最も多い目的でが続きます。また若いワインでも沈殿物が無い、とは限りませんので同時に沈殿物もチェックします。

さて、より早く酸化を促し、美味しいワインにするにはどの様な技術が必要でしょうか?

一つはデキャンタの内壁に薄い膜状にワインを流すことです。これにより同じ容積のワインが広い面積で酸素と接触することになります。

もう一つはボトル全部をデキャンタせず、必要量のみ最初にデキャンタし、残りは後からする方法です。全部を一気に行うと、最後のほうはデキャンタの口から入った液面までの距離が短く、十分に広がらないので効果を得にくいのです。

さて私は以前もう一つの方法を試みていました。

高い位置からデキャンタする、というものです。これはあるマンガでも描写されていたようですね。今ちょっとした流行になっています。

高い位置からデキャンタ口までの距離があるので効果があるはず、というのがその理由です。

しかし、この方法が果たして効果があるのか、と疑問に思い実験したことがあります。

デキャンタ口から遠くない位置からゆっくり液体を広げるようにデキャンタしたのと、高い位置から落としたものを飲み比べるのです。

結果は低い位置から液体を広げる方法の勝ちでした。

何故か?

つまり高くから落としたデキャンタまでの間の液体は、細くひも状になっていて酸化がほとんど進まないですし、また、デキャンタに近づくにつれ、速度が上がりより細い糸状になって落ちていくのです。それはデキャンタ内でも同じで速く滑り落ちていきますから結果は望めません。

勿論、効果はあるのです。が、低い位置からゆっくりデキャンタしたほうが、より若いワインの覚醒には向いているのですね。

お客様からも「あのマンガみたいにする必要はあるのか?家でも練習したらいいか?」などと聞かれますが、どうぞ、普通にゆっくりしてください。

但し、ちょっとのコツがあります。家で実践したい方は、どうぞ私のやり方を見に来てください。「見たい!!」とおっしゃって頂ければ、一日何回もやっていますので、「今からしますよ!!」ってお声をお掛けします。

とはいうものの、ワインによっては全くデキャンタの必要のないものもありますので御注意を!!!