ワインには「熟成」という言葉がよく使われます。私も使いますね。
通常は赤ワインのタンニンがこなれて来たり、白ワインだと樽の風味が溶け込んで来たりした時を指して言う事が多いかもしれません。
シャンパンなら酵母が自己消化を起こして旨味が増したり、というのも熟成です。
しかしワインも多様です。本来なら避ける、或いは過度にならないようにする筈の「酸化」や「熱劣化」をボトリング前のワインなどに強制的にさせる事もあります。
その代表がポルトガルのマデイラ。他には南仏の酒精強化ワインのラストーなどや、スペインの南部のフォンディジョンがあります。イタリアのマルサラもそうです。
ブランディもですね。コニャックやアルマニヤック・・・・
これらは普通のワインなら劣化と呼ばれるかもしれない過度な酸化と蒸発(特にマデイラ)によって成長を遂げます。
白原料も赤原料も色は褐変します。よってすぐに「ランシオだ」と判ります。
おっと、アジアにもありますね。紹興酒=老酒です。老いた酒、つまり熟成が進んだ状態の物は茶色くなるのですね。
これらはひねた香りの後からキャラメルやアーモンドを思わせる芳醇さが湧きあがります。
デザートワインとして扱われることの多いそれらのワインは例えば粉を沢山使ったタルトや濃厚なチョコ、代表的な所ではガトーショコラなどによく合います。エスプレッソの香りとも好相性です。
私はたまに料理にも合わせます。そうです。実は料理によく合うのです。
例えばジビエです。赤身の鉄分タップリ、噛み応えのある食材ジビエは多少なりとも香りというより匂いを放つわけですが、これにランシオしたマデイラや紹興酒(そむりえ亭にはありません)は殊の外よく合います。ジビエでなくてもしっかりした赤身肉なら問題なし。
10年ほど前でしょうか、中華の世界で有名な先生が「最近の中国では食中のコニャックの消費が増えている」とおっしゃっていました。これは熟成調味料を使い、しっかりした味わいですのでコニャックの酸化熟成は向いています。つまり老酒と同じ原理です。
普通のワインで料理を頂くのは勿論のこと、中にランシオ系のワインを入れながらマリアージュを考えるのも幅が広がって楽しいものです。
ま、アルコールが強めですので万人向けでは無いのかな、とも思いますが・・・
ご興味のある方は、一度お申し出ください。
ところで「ランシオしたものある?」なんて他の店で急にいうと店員さんに気持ち悪がられますので、要注意ですよ!!