松本の隣に山形村という鉄道も通っていない小さな村がある。けれどここにはi Cityという郊外型総合ショッピングセンターがあり、i Cityシネマはスクリーンが六つもある、いわゆるシネコンみたいな映画館だ。
駐車場は広くてタダだし、映画館も広くて綺麗だし、人気ある。
ただ個人的には古くて汚い映画館でセガール映画とか見るのが好きなのだが・・・
まあよい。とにかくそのi Cityシネマで、オダギリジョー特集というイベントが組まれ、先週までやっていた「ビッグ・リバー」は見逃したのだけど、なんとか「パビリオン山椒魚」は観にいくことができたのだった。
すさまじくデタラメで気楽に楽しめる映画だった。
あるレントゲン技師(オダギリジョー)が、ヤクザみたいな男・香川(光石研)からオオサンショウウオのレントゲン写真を撮ってくれと依頼される。齢150にもなる国宝のオオサンショウウオ「キンジロー」は、ある財団が管理している。その財団は国宝キンジローの管理のため国から莫大な補助金を得ている。しかし最近「キンジロー」に偽物疑惑が持ち上がった。もし本物の「キンジロー」ならパリ万博で骨折した背骨に治療痕があるハズだと言う。妹の結婚資金の工面に困っていたレントゲン技師は多額の報酬と引き換えに、「キンジロー」を誘拐しレントゲン写真を撮る仕事を引き受ける。
一方でその財団を運営する四姉妹は相続問題で揺れに揺れていた。長女アキノ(麻生裕未)は香川と結婚し、財団を香川に譲ろうとする。次女、三女は猛反発。四女のあづき(香椎由宇)は父親(高田純次)から、まだ会ったことのない母親に会わせてやるから「キンジロー」を盗み出してこいと頼まれる。
そういうわけで、レントゲン技師と財団の四女は「キンジロー」誘拐の現場で運命的な出会いをするのだった。
そして長女アキノが何者かに殺されて・・・
と、ストーリーをここまで書くと、探偵がレントゲン技師に変わったちょっとヘンテコリンなハードボイルド映画みたいだ。あるいは旧家の相続を巡るドロドロの人間関係と殺意が、「犬神家の一族」みたいだったりする。
しかしこの映画はそんなにこちらの予想通りには進まない。
なにしろデタラメなのだ。
サンショウウオのレントゲン写真も、長女の謎の死もそっちのけ。レントゲン技師はあづきの幸せのため、母親探しのため、自由な世界に連れ出すため、自分勝手に動き出す。話の方向性が二転三転の末固まったかと思えば、バカバカしいギャグシーンを境に急激に方向転換してみたり、あづきとの運命の恋すら次第にどうでも良くなっていく。着地点がどこなのかまったく読めない。
けだるいハードボイルド調だったレントゲン技師もいつの間にかラテン調のワイルドで馬鹿な男に変わっている。
この馬鹿丸出しの男をオダギリジョーが伸びやかに演じている。せっかくのオダジョーになんつうことを・・・と思わせるようでいて、一瞬にしてコントロール不能になってしまった男を唖然と見つめるしかない。何をやらかすか全くわからないエントロピー最大俳優オダジョー。
香椎由宇さんは、つい「さん」付けしちゃいたくなるほど実年齢より上に見える。24くらいに見えるのだが、2006年11月現在でまだ19才。きゃぴきゃぴのギャルである。今までだって年上役をやってきたわけではないのに、いつも悩み、苦しみ、悲しみ、意地になり、疲れている女の子(悪く言えば暗い娘)を演じてきたからだ。しかしこの映画で、レントゲン撮って撮ってとはしゃぎまわる姿とか、ビルの上からオダジョーに向かって大声で呼びかけるところとか、ああやっぱり19才の普通の娘なんだな・・・と思った。
演技力のある、大型女優となる素質のありそうな彼女だが、一方で「ローレライ」で映画デビューしてしまったことで、「トンデモ女優」としての宿命も背負い込んでいる彼女。「リンダリンダリンダ」で作家性の強いミニシアター女優にスイッチするのかと思えば、「DEATH NOTE」であの竜也の彼女を務めたりと、振幅の大きい俳優活動が面白い。
本作も作家性の作品ではあるのだろうが、ヌメヌメしたオオサンショウウオを抱きしめ愛しくなでてやるところなど、流石は大物トンデモ女優・・・と思わせられる。
ジョーと由宇、どこに飛んでいくか判らない、見る者を不安にさせるスター。彼らの旬に幸か不幸か交錯してしまった本作はプチアクシデント映画として将来2人が超大物になった時、ちょっぴり価値があがるかもしれない。
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
駐車場は広くてタダだし、映画館も広くて綺麗だし、人気ある。
ただ個人的には古くて汚い映画館でセガール映画とか見るのが好きなのだが・・・
まあよい。とにかくそのi Cityシネマで、オダギリジョー特集というイベントが組まれ、先週までやっていた「ビッグ・リバー」は見逃したのだけど、なんとか「パビリオン山椒魚」は観にいくことができたのだった。
すさまじくデタラメで気楽に楽しめる映画だった。
あるレントゲン技師(オダギリジョー)が、ヤクザみたいな男・香川(光石研)からオオサンショウウオのレントゲン写真を撮ってくれと依頼される。齢150にもなる国宝のオオサンショウウオ「キンジロー」は、ある財団が管理している。その財団は国宝キンジローの管理のため国から莫大な補助金を得ている。しかし最近「キンジロー」に偽物疑惑が持ち上がった。もし本物の「キンジロー」ならパリ万博で骨折した背骨に治療痕があるハズだと言う。妹の結婚資金の工面に困っていたレントゲン技師は多額の報酬と引き換えに、「キンジロー」を誘拐しレントゲン写真を撮る仕事を引き受ける。
一方でその財団を運営する四姉妹は相続問題で揺れに揺れていた。長女アキノ(麻生裕未)は香川と結婚し、財団を香川に譲ろうとする。次女、三女は猛反発。四女のあづき(香椎由宇)は父親(高田純次)から、まだ会ったことのない母親に会わせてやるから「キンジロー」を盗み出してこいと頼まれる。
そういうわけで、レントゲン技師と財団の四女は「キンジロー」誘拐の現場で運命的な出会いをするのだった。
そして長女アキノが何者かに殺されて・・・
と、ストーリーをここまで書くと、探偵がレントゲン技師に変わったちょっとヘンテコリンなハードボイルド映画みたいだ。あるいは旧家の相続を巡るドロドロの人間関係と殺意が、「犬神家の一族」みたいだったりする。
しかしこの映画はそんなにこちらの予想通りには進まない。
なにしろデタラメなのだ。
サンショウウオのレントゲン写真も、長女の謎の死もそっちのけ。レントゲン技師はあづきの幸せのため、母親探しのため、自由な世界に連れ出すため、自分勝手に動き出す。話の方向性が二転三転の末固まったかと思えば、バカバカしいギャグシーンを境に急激に方向転換してみたり、あづきとの運命の恋すら次第にどうでも良くなっていく。着地点がどこなのかまったく読めない。
けだるいハードボイルド調だったレントゲン技師もいつの間にかラテン調のワイルドで馬鹿な男に変わっている。
この馬鹿丸出しの男をオダギリジョーが伸びやかに演じている。せっかくのオダジョーになんつうことを・・・と思わせるようでいて、一瞬にしてコントロール不能になってしまった男を唖然と見つめるしかない。何をやらかすか全くわからないエントロピー最大俳優オダジョー。
香椎由宇さんは、つい「さん」付けしちゃいたくなるほど実年齢より上に見える。24くらいに見えるのだが、2006年11月現在でまだ19才。きゃぴきゃぴのギャルである。今までだって年上役をやってきたわけではないのに、いつも悩み、苦しみ、悲しみ、意地になり、疲れている女の子(悪く言えば暗い娘)を演じてきたからだ。しかしこの映画で、レントゲン撮って撮ってとはしゃぎまわる姿とか、ビルの上からオダジョーに向かって大声で呼びかけるところとか、ああやっぱり19才の普通の娘なんだな・・・と思った。
演技力のある、大型女優となる素質のありそうな彼女だが、一方で「ローレライ」で映画デビューしてしまったことで、「トンデモ女優」としての宿命も背負い込んでいる彼女。「リンダリンダリンダ」で作家性の強いミニシアター女優にスイッチするのかと思えば、「DEATH NOTE」であの竜也の彼女を務めたりと、振幅の大きい俳優活動が面白い。
本作も作家性の作品ではあるのだろうが、ヌメヌメしたオオサンショウウオを抱きしめ愛しくなでてやるところなど、流石は大物トンデモ女優・・・と思わせられる。
ジョーと由宇、どこに飛んでいくか判らない、見る者を不安にさせるスター。彼らの旬に幸か不幸か交錯してしまった本作はプチアクシデント映画として将来2人が超大物になった時、ちょっぴり価値があがるかもしれない。
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i Cityシネマでご覧になったのですね!私もそうです~。
本当にどこかでお会いしているかもしれないですね。(笑)
この映画はまさにデタラメという言葉がぴったりの映画でしたね。^^; 何も考えずに(というか、考えたらかえって混乱するかも。。)お気楽に楽しめる映画でした♪^^
オダギリジョーが伸び伸びと演じていて、役者さんたちの熱演にかえって救われた映画かもしれないです。
すごい。長野県じゅうに出没するのですね
茅野から小布施まで守備範囲が広いです
ほんとデタラメ感が最高でした。何も考えずにというか、考える気にさせないところが凄かったです。