個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
個人的にはハズレなし鉄板巨匠のズウィック。
しかも欧米映画では鉄板ネタともいえるホロコーストもの。
期待しないわけが無い。
が、しかし、一本の映画とするにはストーリーが浅かった。
要約すると、「ユダヤ人たちがホロコーストを逃れ森で大勢で暮らしていたらドイツ軍に見つかりましたが、なんとか逃げ切りました・・・」という話。そこに「一旦は仲違いして袂を分かった兄弟が仲直りする話」を加えたもの。ぶっちゃけそれだけの話。
エンドロールの前に、スーパーで語られるところによると、「その後、三男はソ連軍に入隊するが戦死。次男と長男はアメリカに渡り運送業を営んだ」らしい。
その後日談の方が面白そうだ。(ちょっとエドワード・ズウィックの「レジェンド・オブ・フォール」を連想させる)
史実がどうだったかは知らないが、ドイツの敗戦、スターリンの粛正、アメリカへ移住・・・と考えるだけでワクワクものの大河ドラマになりそうじゃないか。
あんなB級感漂う対戦車バトルなど中盤の山場程度におさえて、3時間超の超大作大河歴史ドラマにすりゃ良かったのに・・・
といってもズウィックらしい面白さ優先の展開と、どっしり地に足着いた感のある画面は見応えある。
カメラはどっしりと据えられていたずらに動かず、ロケ地の自然やでかいオープンセットをじっくりと見せる。いにしえのハリウッド大作のような懐かしさと安定感。
そして社会性やメッセージ性を犠牲にしてでも娯楽性を優先せずにはいられないようなワクワク感もズウィックの魅力だ。「ブラッド・ダイヤモンド」なんて何よりも冒険活劇として魅力的な映画だった。
本作でも定期的に入る戦闘イベントのおかげで中だるみしない。
その戦闘イベントも盛り上げに腐心しているのが感じられ好感がもてる。
たとえば以下のシーン。
武器を奪うためトラップしかけてドイツのオートバイ兵一名をやっつける。しめしめと思ったら将校とその取り巻きが乗ったワーゲンがやってくる。なんとか隠れてやり過ごそうと思ったが、将校の立ちションが顔にかかってキレて全員やっつけ作戦に変更。なんとか倒した、と思ったら今度は機関銃搭載の兵員輸送車が兵士満載でやってくる。
こんな感じに、これでもか、これでもか、とアクションシーンは大いに盛り上げる。そんなサービス精神がズウィックの魅力だ。
それにユダヤ人の難民キャンプ生活でも人間の本性が垣間見えて面白かった。
やはり食料の確保こそが生きる手段であり、食料を得るものこそが組織を支配する。
食料を得て、薬を得るためなら、自分ら以外の誰を不幸にしてもかまわない、と言わんばかりの、きれいごとなしの行動原理に生きる執念を見る。やってることは山賊と変わらないが、死ぬか生きるかの瀬戸際で正義など不要だ。
ペニシリンを奪う場面で次男が言う台詞が印象深い。
「コミュニズム、シオニズム、ファシズム・・・薬が手に入るなら何でもいい」
生きることこそが目的で主義など二の次なんである。
そうは言っても、彼らはユダヤ教をバックグラウンドにした結束力でナチスの猛攻から逃げ切る。ナチスの地獄の迫害は彼らに生きる執念を叩き込み、結果として世界最強の民族を作ってしまったんじゃないかと思わせる映画であった。
ボンド史上最も陰湿陰険非情なボンドを演じたダニエル・クレイグ。今までのボンドイメージからかけ離れたボンドだっただけに、本作のような役回りでも「ボンドがナチスと闘ってる」的観方に陥らなくて済んだ。
とは言うものの、食料配給ルールを勝手に変えた奴を、裁判なし、問答無用の公開射殺する場面では、さすが殺しのライセンスの持ち主よのう・・・と007では感じなかったボンドらしさを感じてしまったのだった。
「リトル・ダンサー」だったジェイミー・ベル君のたくましくなった姿を観ていると、ケンシロウが再会したバットに言った「男の顔になったな」という台詞を思い出すのだった。
[追記]
音楽は我がひいき作曲家のジェームズ・ニュートン・ハワード。本作で見事にアカデミー賞候補となったがまた候補止まりだった。
「シンドラーのリスト」を意識したのかしてないのか知らないが、本作の音楽でもソロヴァイオリンをフィーチャーした音楽が全編を物悲しく歌い上げる。彼らしくメロディラインのはっきりしない曲だが、デリケートな題材だけに主張しすぎない曲調がよくマッチしている。
ほんでもって戦闘スペクタクルシーンは「待ってました聴かすぜ鳴らすぜ」と盛り上げつつも「でも必要以上に出しゃばらないぜ」とここでも映画との適度な距離を保っている。うまい。映画音楽職人だ。主張しないことが主張となっている。
エンドクレジットの間もじっくりと聞き込んで飽きることがない。エンドクレジットは終わるのを待っているんでなく、ジェームズ・ニュートン・ハワードのコンサートにでも来たような感覚に浸れる。
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個人的にはハズレなし鉄板巨匠のズウィック。
しかも欧米映画では鉄板ネタともいえるホロコーストもの。
期待しないわけが無い。
が、しかし、一本の映画とするにはストーリーが浅かった。
要約すると、「ユダヤ人たちがホロコーストを逃れ森で大勢で暮らしていたらドイツ軍に見つかりましたが、なんとか逃げ切りました・・・」という話。そこに「一旦は仲違いして袂を分かった兄弟が仲直りする話」を加えたもの。ぶっちゃけそれだけの話。
エンドロールの前に、スーパーで語られるところによると、「その後、三男はソ連軍に入隊するが戦死。次男と長男はアメリカに渡り運送業を営んだ」らしい。
その後日談の方が面白そうだ。(ちょっとエドワード・ズウィックの「レジェンド・オブ・フォール」を連想させる)
史実がどうだったかは知らないが、ドイツの敗戦、スターリンの粛正、アメリカへ移住・・・と考えるだけでワクワクものの大河ドラマになりそうじゃないか。
あんなB級感漂う対戦車バトルなど中盤の山場程度におさえて、3時間超の超大作大河歴史ドラマにすりゃ良かったのに・・・
といってもズウィックらしい面白さ優先の展開と、どっしり地に足着いた感のある画面は見応えある。
カメラはどっしりと据えられていたずらに動かず、ロケ地の自然やでかいオープンセットをじっくりと見せる。いにしえのハリウッド大作のような懐かしさと安定感。
そして社会性やメッセージ性を犠牲にしてでも娯楽性を優先せずにはいられないようなワクワク感もズウィックの魅力だ。「ブラッド・ダイヤモンド」なんて何よりも冒険活劇として魅力的な映画だった。
本作でも定期的に入る戦闘イベントのおかげで中だるみしない。
その戦闘イベントも盛り上げに腐心しているのが感じられ好感がもてる。
たとえば以下のシーン。
武器を奪うためトラップしかけてドイツのオートバイ兵一名をやっつける。しめしめと思ったら将校とその取り巻きが乗ったワーゲンがやってくる。なんとか隠れてやり過ごそうと思ったが、将校の立ちションが顔にかかってキレて全員やっつけ作戦に変更。なんとか倒した、と思ったら今度は機関銃搭載の兵員輸送車が兵士満載でやってくる。
こんな感じに、これでもか、これでもか、とアクションシーンは大いに盛り上げる。そんなサービス精神がズウィックの魅力だ。
それにユダヤ人の難民キャンプ生活でも人間の本性が垣間見えて面白かった。
やはり食料の確保こそが生きる手段であり、食料を得るものこそが組織を支配する。
食料を得て、薬を得るためなら、自分ら以外の誰を不幸にしてもかまわない、と言わんばかりの、きれいごとなしの行動原理に生きる執念を見る。やってることは山賊と変わらないが、死ぬか生きるかの瀬戸際で正義など不要だ。
ペニシリンを奪う場面で次男が言う台詞が印象深い。
「コミュニズム、シオニズム、ファシズム・・・薬が手に入るなら何でもいい」
生きることこそが目的で主義など二の次なんである。
そうは言っても、彼らはユダヤ教をバックグラウンドにした結束力でナチスの猛攻から逃げ切る。ナチスの地獄の迫害は彼らに生きる執念を叩き込み、結果として世界最強の民族を作ってしまったんじゃないかと思わせる映画であった。
ボンド史上最も陰湿陰険非情なボンドを演じたダニエル・クレイグ。今までのボンドイメージからかけ離れたボンドだっただけに、本作のような役回りでも「ボンドがナチスと闘ってる」的観方に陥らなくて済んだ。
とは言うものの、食料配給ルールを勝手に変えた奴を、裁判なし、問答無用の公開射殺する場面では、さすが殺しのライセンスの持ち主よのう・・・と007では感じなかったボンドらしさを感じてしまったのだった。
「リトル・ダンサー」だったジェイミー・ベル君のたくましくなった姿を観ていると、ケンシロウが再会したバットに言った「男の顔になったな」という台詞を思い出すのだった。
[追記]
音楽は我がひいき作曲家のジェームズ・ニュートン・ハワード。本作で見事にアカデミー賞候補となったがまた候補止まりだった。
「シンドラーのリスト」を意識したのかしてないのか知らないが、本作の音楽でもソロヴァイオリンをフィーチャーした音楽が全編を物悲しく歌い上げる。彼らしくメロディラインのはっきりしない曲だが、デリケートな題材だけに主張しすぎない曲調がよくマッチしている。
ほんでもって戦闘スペクタクルシーンは「待ってました聴かすぜ鳴らすぜ」と盛り上げつつも「でも必要以上に出しゃばらないぜ」とここでも映画との適度な距離を保っている。うまい。映画音楽職人だ。主張しないことが主張となっている。
エンドクレジットの間もじっくりと聞き込んで飽きることがない。エンドクレジットは終わるのを待っているんでなく、ジェームズ・ニュートン・ハワードのコンサートにでも来たような感覚に浸れる。
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