こんにちは。駿台シンガポール校です。
今回は古語の「敬語」に注目したいと思います。
現代語の敬語の使い方もイマイチ……と言う人は、古語の敬語を学習する中で現代語の敬語についても学び直しましょう。
さて、古文の世界の敬語ですが、近世以前は厳格な身分社会でしたから、当然言葉もかなり厳密に使用されます。例えば、尊敬語・謙譲語・丁寧語といった現代語にもある敬語の分類以外にも、尊敬語を二重に用いる「最高敬語(二重敬語)」や天皇やその皇后・院にしか用いない「絶対敬語」また、天皇が自分自身に用いる「自敬表現」なんてのもありました。複雑な敬語表現や語法については高校に進学してから学ぶとして、ここではひとつだけ「知って得する敬語法」を学びましょう。
それは「尊敬語は偉い人の行動につく」ということです。まあ、当たり前のことですが、これが何に役立つかというと、特に高校入試の古文問題に特有の「主語は何ですか問題」にです。
次の文をみてください
上に候ふ御猫は、かうぶりにて、命婦のおとどとて、いみじうをかしければ、かしづか➀せ給ふが、端に出でて臥したるに、乳母の馬命婦、「あなまさなや。②入り給へ」と③呼ぶに、日のさし入りたるに、ねぶりてゐたるを、おどすとて、「翁丸、いづら。命婦のおとど食へ」と④言ふに、まことかとて、痴れ者は⑤走りかかりたれば、おびえまどひて、御簾の内に⑥入りぬ。朝餉の御間に、上⑦おはしますに、御覧じて、⑧いみじうおどろかせ給ふ。猫を御懐に⑨入れさせ給ひて、
これは清少納言の『枕草子』の一節です。帝がかわいがっていた猫を、同じく宮中で飼われていた翁丸という犬が、猫の飼育係の女房にけしかけられて噛みつこうとたところ、折しも朝食を食べていた帝がそれを見て激怒するというシーンです(その後その女房はお役御免となり、翁丸は追放されてしまいます)。
ここでの登場人物は、上(帝)、猫(1行目にあるようにこの猫は従五位下(かうぶり)という官位までもらい命婦のおとどなんていう呼び名まであります)、馬命婦(猫の飼育係)、翁丸(犬)です。
さて、みなさんは本文の➀~⑨の主語がどの登場人物かわかりますか?
勘のいい人ならもうわかっていると思いますが、
➀⑦⑧⑨が帝、③④が馬命婦、②⑥が猫、⑤が翁丸
です。
実はこれ、敬語を知っていると主語が帝である箇所は一瞬でわかります。なぜなら➀⑦⑧⑨には「せ給ふ」「おはします」という尊敬語(最高敬語)が使われているからです。
他の箇所は「呼ぶ」や「言ふ」など普通の言い方になっていますね。
ちなみに②の「入り給へ」は猫が主語なのに「給へ」という尊敬語(補助動詞)がついていますが、これはこの猫が帝の寵愛をうけていて、官位もあるためだと思われます(おそらくこの猫は日本の歴史上唯一官位の与えられた猫だと思います)。
このように敬語を覚えていると人物特定に非常に役に立つのです。
ただ、敬語と言っても結構な数がありますので、まずは「給ふ(お与えになる・~なさる)」「おはす(いらっしゃる)」「のたまふ(おっしゃる)」「思す(お思いになる)」「大殿ごもる(お休みになる)」「聞こす(お聞きになる)」などの基本的な尊敬語を覚え、徐々に謙譲語などを覚えていけばいいかと思います。
そして、主語の問題が出れば傍線部に敬語がついているかをチェックし、ついていれば選択肢の中でどれが敬語がつくような人物かを考えればいいのです。
いかがでしょうか?
主語の特定問題は毎年多くの高校で問われますので、敬語は必要な知識として覚えておきましょう。また、解釈に関する選択問題でも問われている箇所に敬語があれば、選択肢の中にその敬語の訳が入っているものが正解の条件を備えているということになります。
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駿台シンガポール校M.K