先日、東京メトロ銀座線の青山一丁目駅で視覚障害者の男性がホームから転落し死亡するという痛ましい事故がありました。心よりお悔み申し上げます。首都圏の電車ホームには、ホームドアの設置が進められていますが、まだ整備されていない駅も多いのが現状です。
もう7年前くらいになりますが、「DIALOG IN THE DARK」(以下DID)というイベントに参加し、目の見えない世界を一時的に体験したことがあります。DIDはドイツで生まれたイベントで、今までに世界39カ国で開催されています。日本では1999年から開催され、これまで17万人以上が体験しているそうです。
参加者は真っ暗闇の世界に放り込まれ、視覚障害者のアテンドを頼りに、歩みを進めます。心細い中、チームメンバーと手をつなぎ、声を出し合い、誰かの存在を確かめ合いながら、いくつかのミッションをこなすイベントです。暗闇の世界では、5感が鍛えられていない私たちが弱者となり、平らな地面を歩くだけでも心細く、目の前に置かれた飲み物を飲むだけでも勇気が必要でした。たった90分間のイベントでしたが、日頃の自分がいかに視覚に頼っているかを実感させられます。イベント中は頼もしかった視覚障害者が、イベント終了後には電気をつけるスイッチの場所さえ分からない弱者となる瞬間を目の当たりにし、弱者を形成するのは社会の在り方だと思い知る契機となりました。
経験は今までの固定概念を覆すのに有効です。関心がある方は、ぜひ参加してみてください。DIDは現在も東京(渋谷)・大阪(梅田)で開催中です。
(con)