文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。

2018年04月13日 21時32分13秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。

2018年04月13日 21時31分03秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定

2018年04月13日 21時28分55秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査

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さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がない

2018年04月13日 21時25分54秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって

2018年04月13日 21時23分29秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである

2018年04月13日 21時21分26秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である

2018年04月13日 21時19分34秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。

2018年04月13日 21時18分29秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、

2018年04月13日 21時17分02秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。

2018年04月13日 21時14分57秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた

2018年04月13日 21時13分31秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ

2018年04月13日 21時11分59秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

2018年04月13日 21時09分15秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

文中強調は私。

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
―――――

つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う

2018年04月13日 21時06分27秒 | 日記

さっき、スマホに長谷川幸洋の、これぞ正論が配信されてきた。
検索して見れば講談社が発行しているウエブ雑誌「現代ビジネス・プレミアム」だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55245

朝日新聞「首相案件」報道に、安倍政権はこう答えるのが正解だ
そもそも、に立ち返ればいい
長谷川 幸洋
朝日は何が言いたいのか?
森友学園や陸上自衛隊のイラク日報問題に加えて、加計学園問題が再燃した。朝日新聞が4月10日付朝刊1面トップで「柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月、愛媛県職員らと面談した際に『本件は首相案件』と述べた」と報じたのだ。これは大問題なのか。

まず、朝日が報じた内容をおさらいしよう。

朝日は柳瀬首相秘書官と愛媛県など関係者の面談について「愛媛県職員が作成した文書」を入手した。文書で、柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言した、と記されていた。

また「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、…今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」との記述もあった(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445103.html)。

これは、どういう意味なのか。朝日は社説で「『首相案件』 加計ありきの疑念再び」と題して次のように書いている(https://www.asahi.com/articles/DA3S13445004.html?ref=opinion)。

―――――
〈秘書官は首相の名代として、各省庁との調整役も務める側近だ。そのキーパーソンが、特定の事業のために時間をさき、懇切丁寧に実現への手ほどきをしていたことになる。

さらに文書には、柳瀬氏に先立って面会した内閣府の幹部からも「要請の内容は総理官邸から聞いて(いる)」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と言われた、との記載もある。事実なら厚遇ぶりは明らかで、政権全体で後押ししていたと見るのが自然だ。

…政権側は、特区構想全般を推進するのが首相の意向で、「加計ありき」ではないと反論。首相自身も、学園が事業者に正式に決まる昨年1月まで、特区に手をあげていることすら知らなかったと国会で答弁した。

秘書官がその1年半以上も前に「首相案件」と認識し、助言までしたとすれば、首相らの主張には大きな疑問符がつく〉
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つまり朝日が言いたいのは、首相秘書官や内閣府幹部が「(愛媛県や今治市の構想を)政権全体で後押ししていた」。これが1点。それから「安倍首相が昨年1月まで(加計学園が特区に手をあげているのを)知らなかったという主張は疑問だ」と訴えている。

当の柳瀬氏は、報道を受けてコメントを発表し「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」、また「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません」と会談自体と文書の中身を否定している。

そもそも国家戦略特区は「首相案件」
さて、こんな事態をどうみるか。

ニュースが報じられた10日朝、私はたまたまニッポン放送の新番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(毎週月曜〜金曜、午前6時〜8時)の出演日だったので、そこで解説したが、まず首相秘書官が「首相案件」と語ったのが本当だったとしても「それで何か問題があるのか」と疑問に思う(https://www.youtube.com/watch?v=7xCdURom1lg)。

というのは、そもそも国家戦略特区という政策が当初から「安倍政権の目玉政策」であるからだ。したがって首相秘書官が「これは首相案件」と言ったとしても、なんの不思議もない。むしろ当然である。

国家戦略特区は、既得権益勢力の抵抗に遭ったりして、いきなり全国で展開するのが難しい政策課題をまず特区で手がけ、成果を見極めたうえで、やがて全国に広げるという政策手法だ。安倍政権は2013年に国家戦略特別区域法を施行し、各地からアイデアを募って随時、実行に移してきた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/)。

区域を認定するのは国家戦略特区諮問会議であり、安倍首相は議長を務めている。だから、特区を「首相案件」というのはその通りであって、何の問題もない。柳瀬氏が面談発言を否定したとしても、事実関係はその通りなのである。

ちなみに、加計学園問題に火を点けたのも朝日だった。文科省の内部メモとされた「総理のご意向」文書をめぐる昨年5月17日付の記事だ。その文書も「総理のご意向」という言葉のすぐ後に、実は「『国家戦略諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と記されていた。

つまり、内閣府が文科省に対して「首相の指示であるかのように取り繕ってはどうか」と促す話だった。逆に言えば「首相の指示」はなかったのだ。朝日はこの後段部分に黒く影を付けて読めないように加工し「総理のご意向」だけを強調していた。まさに印象操作である。

今回もほとんど同じだ。首相秘書官が「これは首相案件と語った」という記述を根拠に、あたかも「安倍首相が関与していた」かのような印象を強調している。真実は、国家戦略特区という政策自体が最初から首相案件なのである。

頭ごなしに否定するのは悪手だ

安倍首相は昨年1月まで「(加計学園が)手をあげているのを知らなかった」という点はどうか。首相は4月11日の衆院予算委員会で「知った日にちはすでに答弁した通りだ」と述べて、昨年1月20日に知ったという答弁を維持した。

「知ったのがいつか」という話は本人にしか分からない。ただ、私はいつだったにせよ枝葉末節と思う。そもそも、加計学園をめぐる疑惑の本筋は何だったのか。加計学園に「安倍首相が特別な便宜を図ったかどうか」である。そこは森友学園問題と同じだ。

この本来の疑惑については昨年、元愛媛県知事の加戸守行氏や国家戦略特区ワーキンググループ委員らの国会証言によって首相の関与が完全に否定されている。今回の文書でも、首相が便宜を図った具体的な形跡はうかがえない。

むしろ、私は「これは首相案件」という説明を、安倍政権が頭から否定し定着してしまう事態を懸念する。野党や朝日などが当初「加計ありきではないか」と指摘したとき、政権側が「加計ありきではない」と否定してしまった失敗があるからだ。

この点は昨年7月28日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52418)や四国新聞のコラム(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20170727.htm)で指摘したように「加計ありき」だったのかと問われれば、真実は「加計ありき」に決まっている。

いくら愛媛県や今治市が「獣医学部を誘致したい」と願っても、具体的な事業候補者のあてがなかったら、特区申請しても意味がないからだ。政府が認めたところで何も動かない。だから、加戸氏は「地元は最初から加計ありき」だったと国会で証言した。

しかし、だからといって「加計で決まり」だったわけではない。特区が認められ、他に事業希望者が出てくれば当然、そこも公平に審査する。ここがポイントなのだ。まして「加計ありき」と「首相が便宜を図った」という話は、本質的にまったく異なる。

政府は最初に「『加計ありき』だが『加計で決まり』だったわけではない」と説明すべきだった。だが、最初に「加計ありき」の言葉を否定してしまったために、加計学園という候補の存在も否定するはめに陥り、問題が大きくなった。ディフェンス・ライン(防御線)の設定を間違えたのである。

今回も「首相案件」という言葉をあまり強く否定すると、同じような隘路に立たされてしまう心配がある。安倍首相は4月11日の衆院予算委員会で「柳瀬氏を信頼している」という以上の答弁はしなかった。

ただ、あえて説明するのであれば、安倍政権は「もちろん初めから首相案件ですよ。それが何か?」と答えるのが正解である。もともと揚げ足取りの政権攻撃にすぎないのだから。

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