以下は前章の続きである。
日本は過去原爆攻撃を受け、その威力を世界の誰よりも実感をもって理解しているにも関わらず、中国・ロシア・北朝鮮などの核保有国と、韓国のような核保有に前向きで核開発未遂の前科がある国に囲まれているのに、なぜか議論すらしない。
これは「異常なこと」だと認識すべきである。
ただ、議論だけでは間に合わない可能性のある問題もある。
日本の「海」の問題だ。
中国は胡錦濤以降、明らかに外洋志向が高まっており、原子力潜水艦を含む尋常ならざる海軍力の強化と制海権の獲得に異常なほど固執している。
そこで重要になってくるのが、沖縄と台湾だ。
地図を見ればわかる通り、中国というのは大きくカーブした日本列島に“海を塞がれるような地形”になっているため、中国海軍が太平洋側に進出するための国際海峡は「2つ」だけしかない。その1つが沖縄の『大隅海峡』で、もう1つが台湾の『台湾海峡』である。
もちろんこの海域を通常通りに航行・通過することは可能だが、この海峡は米軍の監視が行き届くほど狭いため、中国はこの地域を「軍事行動に利用することができない」という中国側の事情がある。
だから中国は将来を見据えた戦略航路として、沖縄か台湾のどちらか一方、またはその両方を絶対に手に入れておかなければならない。
そのため中国はあらゆる手段を使って沖縄や台湾を篭絡しようと手を尽くしている。
もしどちらか1つでも中国が得ることになれば、日米豪の海軍がどれだけ優秀だろうと、その海域に連なる太平洋の全てを監視することはできず、中国を抑えることは難しくなる。
アメリカ空海軍や海上自衛隊が沖縄・台湾の監視を重要視する理由はそこにあるといえる。
一方日本にとって、その海は『シーレーン』の一部である。
シーレーン(海上航路帯)とは、石油を含む日本の貿易・物流の最重要ルートであり、文字通り「日本の生命線」といえる海路である。
あらゆる物を輸入に頼る海洋国家・日本は国内経済もほぼ海上交易に依存しており、日本が生存するのに不可欠な資源である石油、石炭、天然ガス(LNG)、原子力(ウラン)も輸入依存度が100%に近いほど高い。そしてそれらはほぼ全てシーレーンを通って日本にやってくる。
もしこの海路を他国に掌握・コントロールされることがあれば、オイルショックどころか核ミサイルを使われるまでもなく日本は身動きがとれなくなってしまう。
つまり「日本の生命線であり、防衛すべき最重要海路」と「中国が野心を燃やす戦略地域」が、沖縄・台湾の周辺で重なり合っているのだ。
その意味では、沖縄はもちろん、実は“台湾を守ること”も
「日本の海を守ること(日本の生命線を守ること)」と同じ意味だといえる。(もちろん台湾は既に日本の領土ではなくなっているので、主権的な防衛はできないが)
すでに中国は台湾と沖縄を手に入れるために、もう既にあれこれ布石を打ち始めている。
たとえば彼らが「台湾や沖縄は歴史的経緯において中国の属領で文化も中国のもの」と強弁するのも今後領有を主張する時のための布石である。
台湾に関しては「中国の領土なので、台湾“省”である」と政府自ら公言し、沖縄に関しては「主権帰属は未確定だ」とお抱え学者に論文を書かせて主張している。
中国の呼称では沖縄は「大琉球」、台湾は「小琉球」とされているが、
地理的にちょうど文化的の交差点ともいえる位置にあるため、中国だけでなく、古代琉球王国の文化や東南アジアの影響も残っている。
台湾も複雑な歴史によって文化も混在する土地で、昔はオランダの植民地であり、中国、日本の占領を経て今に至る。
古来沖縄は日中で奪い合いがあったが、日清戦争で勝利した日本が正式に領土とし、米軍の占領を経て、日本に返還された。
以前は中国政府でさえ沖縄が日本領であることを公式に認めていたのだが、中国の学者はこの「返還」を認めないと言っている。
また、沖縄県石垣市の一部である尖閣諸島の周辺で資源(ガス田)が発見された途端に「尖閣諸島は中国の台湾省宜蘭県に属する」という主張まで始めている。
中国の工作活動は文化や歴史の面だけではない。
沖縄や台湾に「有り余る中国人」を入植させ、言論メディア・世論風潮・地方政治を掌握させたり、諜報・スパイ活動を行ったりする動きもある。
このような「戦略的入植」は世界一(戸籍のある者で13億人)の人口を持つ中国の得意技で、チベットやウイグルなどの少数民族を人口的に占領しただけでなく、今やヨーロッパやアメリカの一部で選挙に影響力を持ちはじめるほどまでに移民人口を拡大させている。
この稿続く。
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