ポン吉:お~い、早く来てくれ。変な生き物が苦しんでいるよ。
ミミ :近づかない方がいいんじゃない。ネェ、コン太さん。
コン太:僕もそう思うよ。何か悪いことが起きそうな予感がするな。
ポン吉:何言ってんだ。苦しそうに泣いているんだぞ。助けない訳にはいかないだろう。
君は一体誰なの?
川太郎:僕・・・カッパの川太郎・・・早く川まで連れてって・・・
ポン吉:川まで連れていけばいいんだね。
ミミ :でも、どうやって川まで連れていくの?汚いし、気持ち悪いよ。
コン太:川まで触らずに運ぶ方法はないかな。
ポン吉:いい考えがある。2本の太い木の枝と何かのツルと大きな葉を探して、担架を
作るんだ。そしたら触らずに運べるよ。
川太郎:クックッ苦しい。水をくれ。早く川まで・・・(ガクッ)
コン太:大変だ。死んじゃうかもしれない。早く担架を作ろう。ミミは持っている
水筒の水を飲ませてね。
ミミ :分かった。ほら、口を開けて!
ポン吉:ダメだよ。動かないから口を手で開けて流し込むんだ。僕たちは担架を作る
ので手伝えないぞ。頼むよ、ミミ。
ミミ :やだな。でもやる。この小枝を使って口を開ければいいんだ。
やるわよ。さあ、飲んで!キャ~、腕が動いて水筒が顔の上に落ちた。
川太郎:水だ!水だ!口よりも頭を濡らしてくれ!頼む。
ミミ :分かった。頭の禿げているところにひびが入って痛そう。そこを濡らせばいい
のね。
川太郎:あ~、少し楽になった。でも、水が少ない。もっと欲しいよ。
ミミ :ゴメン、これしかないの。担架はまだできないのかな~。
ポン吉:待たせたね、できたよ。川太郎君、この担架に乗ってね。背中にあるのは甲羅
かな?コン太、甲羅に手をかけて担架に乗せるぞ。ヨイショ、
コン太、しっかり持ってくれ。転ぶなよ。
コン太:ヨイショ、まかしとけ。エッサ、ホイサ。エッサ、ホイサ、
あれ?これは猿のエン坊の掛け声だな。まっ、いいか!
コン太:川が見えたぞ。川太郎君、もうすぐだ。頑張れ!
ポン吉:川に着いたぞ。どうしたらいいんだい。
川太郎:早く川の中に放り投げてくれ。そしたら、元気になれるんだ。
ポン吉、コン太:よし、担架ごと放り投げるぞ。え~い!(ドボ~ン!ブクブク!)
ミミ :川太郎さんが川から浮かんでこないわ。溺れて死んじゃったのかな。
全員 :川太郎ク~ン。どこに行ったの?
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川太郎:みんなありがとう。三人は命の恩人だ。
ミミ :わあ~、ビックリした。急に後ろから声が聞こえた。
コン太:驚かすなよ、腰が抜けそうになったよ。あれ~、ずいぶんキレイになって、
さっきの姿と全然ちがうね。本当に川太郎君なの。
川太郎:これが本当の僕の姿だよ。川へ戻る道を間違えて水のない場所を長く歩いた
から、脱水症になってしまったんだ。助けてくれて、本当にありがとう!
お礼に君たちの望みをひとつずつ叶えてあげるよ。何でも言ってみて。
ポン吉:そうだな~、僕は野球でホームランを打ったことがないから打ちたいナ。
コン太:僕はテストで80点以上取ったことがないから、80点の答案用紙が見たいナ。
ミミ ::私は・・・私は、自分のお部屋が欲しいの。でも絶対ムリよね。
川太郎:よくわかった。みんなの夢が叶えられるように応援しよう。
でも、約束して欲しいことがある。みんなの夢が叶うまで、僕の事も、
今日の出来事も誰にも話さないで欲しいんだ。約束してくれるね。
全員 :約束する。誰にも言わないよ。
川太郎:それではお別れだ。もう二度と会うことはないと思うけど、皆の事は忘れない
よ。本当にありがとう。さようなら。・・・(ドボン)
ミミ :さようなら。行っちゃった。私たちも帰りましょう。
ポン吉:カッパって変な生き物だけど、良いヤツでよかったね。
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コン太:ポン吉、嬉しそうだね。何か良いことがあったの?僕も良いことがあったんだ。
ポン吉:ヘッヘッヘ。ホームランを打ったんだよ。二塁打を打ったら、悪送球があって、
三塁に行ったんだ。そこでまた、悪送球があって本塁を踏んだんだ。
ランニングホームランさ。初めてのホームランで嬉しくて、コン太に話しに
きたんだ。コン太の良いことってなに?
コン太:テストで85点を取って先生に褒められたんだ。クラスで一番の点数だぞ。
川太郎君が応援すると言ったから、80点採れるかもしれないと思って、
一生懸命勉強したんだよ。
ミミ :二人で何を話してるの?ネェ、聞いて。私、自分の部屋が持てるのよ。
お父さんが新しいお家を作るから、ミミの部屋も作ってあげると言ってくれ
たの。うれしい!
ポン吉:「望みをひとつ叶えてあげる」という川太郎君の言葉が全部実現したね。
コン太:ネェ。長老に話しに行こうよ。初めて見たカッパのことをもっと知りたく
なったよ。
ポン吉:長老なら何でも知ってるし、もう夢が叶ったから誰かに話してもいいんだよね。
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全員 :長老、こんにちは。
ポン吉:今日は川に住んでいるカッパのことについて聞きに来たよ。
長老 :仲良し三人組だな。川に住むカッパだって?誰から聞いたのかな。
カッパはね、人間が作った伝説や古い民話に出てくる生き物で、頭はお皿の
ように丸く禿げていて、背中には亀のような甲羅をもっていると言われてい
るね。でも実際にはいないんだよ。想像上の生き物で、誰も見たことがない
んだ。水辺に住んでいて、人間の子どもの足を引っ張って、川の中に引きず
り込む悪い奴だとか、たちの悪いイタズラをするという話が多いね。
ポン吉:僕たちはそのカッパに会ったんだよ。そして命を助けたんだ。本当だよ。
そしたら、夢を叶えてあげると言ってくれて、本当にその夢が実現したんだ。
カッパは良いヤツだったよ。
長老 :ハッハッハ。そんなはずはないぞ。誰かに騙されているんじゃよ。
この世の中にいない生き物なんだぞ。みんな、しっかりしろよ。
夢の実現だって、偶然じゃろ。
コン太:長老は僕たちの話をぜんぜん信用していないな。
ミミ :ウン、いくら話しても信用してくれそうもないわね。今日は帰ろうよ。
全員 :長老、また来ますね。さようなら。
ポン吉:また、川太郎に会いたいね。僕たち本当に助けたんだよね。間違いないよね。
コン太:でも、長老はカッパが想像上の生き物で、皆は騙されていると言うし,
自信が無くなってきたな。
ミミ :私もよ。あれは夢だったのかな。長老は今まで間違ったことを言ったことがな
いから、長老からあんなふうに言われると自信がなくなってくるわ。
ポン吉:他の人に言っても信用してもらえないから、やっぱり僕たちだけの秘密に
しようね。
コン太、ミミ:分かった。秘密にしよう。
ポン吉:今度は元気な川太郎君に会いたいナ~。