goo blog サービス終了のお知らせ 

ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

ほめ殺しと泣き落としにはご用心

2012-12-24 08:44:02 | 日記



姉:あのネェ~、お願いがあるの。聞いてくれる?

妹:イヤだ!イヤだ!私にとってお姉さんのその言葉は危険信号だわ。これまで何度も

  痛い目にあったから、今日はきっぱりと断ります。

姉:まだ何も話してないじゃない。あなたは私の妹でしょ。困っている姉を見過ごすな

  んてことはできないわよね。私はあなたが赤ちゃんの時、おしめを何度も取り替え

  てあげたのよ。

妹:また、いつものセリフね。残念ながら、私の記憶にはございません。一応、話だけ

  は聞いてあげる。でも断るからね。

  だって、私のお気に入りのセーターを貸したらコーヒーをこぼしてシミだらけにし

  たし、3日前には私の靴を履いて出かけて、ヒールを折ってしまったわ。

  だから“何かを貸して”という相談だったら絶対にお断りよ。

姉:過去のことは持ち出さないの。でも私の話を聞いてくれるのね。実は今度の日曜日、

  初デートなのよ。  ♪こまっちゃうな、デートに誘われて♪

妹:その歌、コマーシャルで聴いたような気がするわね。だけど、本当にデートなの?

  信用できないな。誰とどこへデートに行くの?ちゃんと答えられる?

姉:答えられるわよ。当たり前じゃない。相手は小学校時代に同じクラスだった平田君

  よ。場所は駅前のファミレス。

妹:平田さんなら知ってるけど、彼がお姉さんをデートに誘うとは思えないな。それに

  場所がファミレスって、ちょっと変よ。

姉:あら、変かしら?8年ぶりに開くクラス会について、話をしたいって言ってたわ。

妹:やっぱりね。それはクラス会の打ち合わせで、他にも何人か同級生が来るんでしょ。

  デートとは言えないわよ。

姉:厳しいことを言わないで。私はデートのつもりで行くんだから。

妹:ふ~ん、じゃあ、デートってことにしておくか。ところで、お願いって何なの?

姉:よくぞ聞いてくれた。私の部屋に洋服を並べてあるの。どれを着て行けばいいか、

  相談に乗ってくれないかな?

妹:そういう話なら喜んで相談に乗るわ。私のほうがおしゃれのセンスはいいからね。

--------------------------------------------------------------------------------

妹:あら、いやだ。ここに並んでいるのは私の物ばかりじゃない。いつの間に並べたの?

姉:私、陸上部だから持ってるのはジャージばかりで、デートにふさわしいオシャレな

  洋服が無いのよ。貸したくない気持ちはわかるけど、お願い、そこをなんとか。

妹:また、いつもの口癖だ。貸さないって、さっき言ったでしょ。

姉:あなたは本当にセンスがいいわね。ここにある服はどれも素敵よ。将来、ブティッ

  クを開けば、きっと千客万来だと思うな。特にこの淡いブルーのワンピースは上品

  で、初デートの洋服としては最高よね。私が着ても似合いそうじゃない?

妹:フフフ、お姉さんにほめられると嬉しいな。おっと、待った!お姉さんのほめ殺し

  には用心しなくちゃ。アブナイ、アブナイ。

姉:借りるのは今回限りにするから。ネェ、お願い。ついでなんだけど、そこにある

  バッグはこのワンピースにピッタリだから、これもなんとか貸してくれないかな?

  姉の初デートを応援してよ、貸してくれないと、本当にこまっちゃうの、グスン。

妹:得意のほめ殺しと泣き落としの術で攻めてきたか。そのワンピースはまだ一度も着

  ていないのよ。また汚されたら大変だから、やっぱりイヤよ。

姉:そこをなんとか!ついでにバッグもなんとか!私のお願いを聞いて!

妹:姉の初デートか~。いつも私の弱いところを突いてくるのよね。

  今回も、また何かをしでかしそうな予感がするわ。困ったお姉さんだこと。

  う~ん、わかった。貸してあげる。ア~、言っちゃった。

姉:ありがとう!やっぱり持つべきものは優しい妹よね。デートの帰りに、駅前のお店

  であなたの好きなクッキーを買ってきてあげるね。

妹:はいはい、美味しいクッキーをお待ちしていますよ。でも、お願いだから、食べ物の

  シミをつけたりしないでね。気をつけてよ。

姉:心配いらないわ。

妹:その一言も、私を不安にさせるってことに全く気付いていないのね。ア~ァ。