夜ごと 見つめているうちに 月を恋したサギ草は
もっと お空に近づいて 胸の想いを伝えたい
だけど 動けぬサギ草は 虚しく夜空を 見上げるばかり
ある日の夕べ 激しい雨で あたり一面 水浸し
今夜は月に会えないと 意気消沈のサギ草は
地面にできた水たまり 虚ろな心で 見つめてた
ところが深夜に 雲が切れ 足もとに月が現れた
こんな近くに 恋しい月が
早く 告白したいのに
胸は高鳴り 体は震え なかなか言葉が出てこない
モジモジ 恥じらう そのうちに
風に吹かれたサギ草の 影が揺らめき 月にキス
もう それだけで十分と
満足しながら 見上げた空に
月が もひとつ 浮かんでた
いつものように 高い場所
恋しい月が ふたつもあって
ちょっと 戸惑う サギ草は
首をかしげた そのあとで
弾んだように うなずいた
足もとの月は 分身ね
私の想いに 気付いた月が
オシャレな仕掛けをしたのだわ
私も いつか この翼
精一杯に 羽ばたかせ
あなたのお傍に 飛んで行く
夢でもいいから 飛んで行く