NHKのテレビ番組「里山シリーズ」で、岩手県遠野の「馬搬道」が紹介されました。
撮影場所は雪に覆われた杉林。伐採した杉の丸太を馬に引かせて、林の間を縫うように
進んで行く人馬一体の姿。これを「馬搬(ばはん)」と言うそうです。
そして、この馬搬によってできた道が「馬搬道」。この馬搬が近年見直されているとか。
重機に劣らぬ馬力。一度に数本の丸太を運びます。馬の身幅の広さがあれば、樹木の
間を上手にすり抜け、小さな倒木やガレキも平気でまたいで歩きます。
重機を使うには樹木を伐採しなくてはなりませんが、馬搬ならばその必要がありませ
ん。森をむやみに傷つけずに済むのです。
定点カメラによって、良く手入れされた杉林の中を、多くの動物たちが行き来している
状況が映し出されていました。
最初に現れたのは「ウサギ」。おやっ、動物村の「ミミ」?ピョンピョンとうさぎ跳びを
しながら通り抜けて行きました。次に現れたのは「タヌキ」。もしかして「ポン吉」?
トボトボと道の端を歩きながら通り過ぎていました。最後に映し出されたのは
「キツネ」。これはもう「コン太」に違いない。馬搬道の真ん中をキョロキョロしながら
歩いて行きました。テレビを見終えた時の私の気持ちを想像してみてください。
まるで愛しい人にひょっこりと出会えたような、ほんわかと暖かい気分に浸りました。
ミミ :私がテレビに映ったらしいわよ。人間には見つからないようにしているのに、
テレビって怖いわね。
ポン吉:僕も映っていたそうだね。馬搬道は雪がしっかり固まっているから、とても歩き
やすいんだよ。でも、これからは気を付けなきゃいけないな。
コン太:テレビで撮影しているなら、もっと堂々と歩けば良かったな。でも、あの道が
人間と馬が作ったものだとは知らなかったよ。
ミミ :何であの日、私たちは馬搬道を歩いたんだっけ?
ポン吉:確か、長老の家に集まったんじゃなかったかな。
コン太:そうだ、長老の家だ。ポン吉が言うように雪の時は馬搬道が一番歩きやすい
から、ついついあそこを通ってしまうよね。
ミミ :そうよ、長老のお誕生日だったんだわ。あの日はいっぱいお話を聞かせてもらっ
て楽しかったね。
でもテレビに映ったことは長老に話しておいた方がいいと思うよ。
ポン吉:もう、あの道は通るなと言われるかもしれないね。
コン太:やっぱり、堂々と歩かず、注意してキョロキョロと周りを見て歩くことにする。
ミミ :でも、こんなに住みやすい森は人間が手入れをしてくれるから存在するのよね。
だから、少しは感謝しなけりゃいけないのかな。
ポン吉:確かにそうだよ。良く整備された杉林は僕たちにとっても嬉しいことだね。
でも人間には会いたくないな。
コン太:ウン、その通り。