昨日仕事中にいとこから電話。
「婆ちゃん急変したん。」
取り急ぎ休みを貰い、お約束している担当様やご家族に電話して延期していただく。簡単な事務処理・・・そんなことが終わらないうちに、ばあやんのひ孫から電話。
「今聞いたところで、今から俺も行く・・・あ、待って電話。(もしもし・・・え?)姉ちゃん、もう急がなくていいよ。今・・・やって・・・。」
携帯と家電を交互に扱いながら、教えてくれたのは「間に合わなかった」という事実。
病院へ行くと、すでに死後の処置が始まっていた。状態が安定していたので付き添いの姉ちゃんは必要品を買い物に出ていて、その間の急変だったらしい。大阪のおばたちが部屋の前に着いた途端の事で、やはりばあやんは叔母を待っていたのだろう。
婆やんの顔はとても穏やかで綺麗だった。
ばあやんは思い返してみても、怒った顔を見たことがなかった。沢山苦労をしてきたはずなのに、いつだって人の心配ばかりして、いつだって笑顔で
「ばあやんは幸せじゃ」
が口癖だった。家はいつでもオープンで、親類といわず他人といわず野良猫でも勝手に上がりこんで平気な家だった。居心地のいい家はばあやんの人徳である。
父とばあやんが姉弟であっても、似てると思ったことはなかったが、寝込んでから食事を嫌がって顔をしかめたり、吸引の後睨んだような顔をしたときに、変な話だが父に似てると思った。
長い長い一日。ばあやんの大好きな着物姿で昨日よりも綺麗な穏やかな顔になったばあやんを送り出した。ぼんやりとばあやんの綺麗な遺影を見ていて、ふといとこたちが見ている展示物に目が行った。そこには一組の古いはがきが展示されていた。
それはばあやんのだんな様が戦地から送っていたはがきで、戦死の通知の後に届いたらしい。仏壇の下に大切にしまってあったらしいが、奇跡的にインクもほとんど劣化していない。用紙もはがきではない、ダンボールらしかった。まだ乳飲み子のおばを膝に抱いたまま、このはがきに涙したばあやん。何故あんなに穏やかだったのだろう。なぜ、幸せといい続けることが出来たのだろう。私はいつだってばあやんに甘えていた。そしてばあやんはいつだって無条件で受け止めてくれた。
ばあやん。一度くらいめんどいこと言うても良かったのに。しんどい時のあの険しい顔が、本当はいつも我慢していただけで、ばあやんの中にあったのではないだろうか。それとも、100年近い時間がすべてを美しく昇華させたのだろうか。
いや、たぶんばあやんは本当に幸せだったのだろう。そして私たちがばあやんの心を受け継ぐことで、それを証明していけるかも知れない。
ばあやん。そっちにはじいやんだけじゃなく、うちの父ちゃんもおるけん。残していく子供や孫やひ孫や玄孫も心配だろうけど、そっちでもまた世話の焼けることよね。ご冥福をお祈りします。
合掌。
「婆ちゃん急変したん。」
取り急ぎ休みを貰い、お約束している担当様やご家族に電話して延期していただく。簡単な事務処理・・・そんなことが終わらないうちに、ばあやんのひ孫から電話。
「今聞いたところで、今から俺も行く・・・あ、待って電話。(もしもし・・・え?)姉ちゃん、もう急がなくていいよ。今・・・やって・・・。」
携帯と家電を交互に扱いながら、教えてくれたのは「間に合わなかった」という事実。
病院へ行くと、すでに死後の処置が始まっていた。状態が安定していたので付き添いの姉ちゃんは必要品を買い物に出ていて、その間の急変だったらしい。大阪のおばたちが部屋の前に着いた途端の事で、やはりばあやんは叔母を待っていたのだろう。
婆やんの顔はとても穏やかで綺麗だった。
ばあやんは思い返してみても、怒った顔を見たことがなかった。沢山苦労をしてきたはずなのに、いつだって人の心配ばかりして、いつだって笑顔で
「ばあやんは幸せじゃ」
が口癖だった。家はいつでもオープンで、親類といわず他人といわず野良猫でも勝手に上がりこんで平気な家だった。居心地のいい家はばあやんの人徳である。
父とばあやんが姉弟であっても、似てると思ったことはなかったが、寝込んでから食事を嫌がって顔をしかめたり、吸引の後睨んだような顔をしたときに、変な話だが父に似てると思った。
長い長い一日。ばあやんの大好きな着物姿で昨日よりも綺麗な穏やかな顔になったばあやんを送り出した。ぼんやりとばあやんの綺麗な遺影を見ていて、ふといとこたちが見ている展示物に目が行った。そこには一組の古いはがきが展示されていた。
それはばあやんのだんな様が戦地から送っていたはがきで、戦死の通知の後に届いたらしい。仏壇の下に大切にしまってあったらしいが、奇跡的にインクもほとんど劣化していない。用紙もはがきではない、ダンボールらしかった。まだ乳飲み子のおばを膝に抱いたまま、このはがきに涙したばあやん。何故あんなに穏やかだったのだろう。なぜ、幸せといい続けることが出来たのだろう。私はいつだってばあやんに甘えていた。そしてばあやんはいつだって無条件で受け止めてくれた。
ばあやん。一度くらいめんどいこと言うても良かったのに。しんどい時のあの険しい顔が、本当はいつも我慢していただけで、ばあやんの中にあったのではないだろうか。それとも、100年近い時間がすべてを美しく昇華させたのだろうか。
いや、たぶんばあやんは本当に幸せだったのだろう。そして私たちがばあやんの心を受け継ぐことで、それを証明していけるかも知れない。
ばあやん。そっちにはじいやんだけじゃなく、うちの父ちゃんもおるけん。残していく子供や孫やひ孫や玄孫も心配だろうけど、そっちでもまた世話の焼けることよね。ご冥福をお祈りします。
合掌。