Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

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悼    歌舞伎界の至宝 中村芝翫さんご逝去

2011-10-21 | 演劇

            人間国宝 文化功労者 日本芸術院会員 

 

   「神谷町!!」

歌舞伎座の舞台で芝翫さんが登場すると、きまってそんな大向うがかかったものだ。

東京では役者が住んでいる町名を云うのが慣例だとしても、芝翫さんに掛る「大向う」には、昔からの"ならわし”が今も息づいている。


歌舞伎界を支えた名女形が逝った。 83歳だった。


ことし9月1日に新橋演舞場で出演した「秀山祭九月大歌舞伎」の淀君が最後の舞台になった。

それも初日だけの舞台で、2日目以降は長男の福助が代役を務めた。

淀君は驕慢で、気位が高く、女王のような風姿は芝翫さんにピッタリの役だった。

二男の橋之助が裸武者を演った当時から、芝翫さんの淀君を見ているから、半世紀ちかく芝翫の淀君と付き合ったことになる。


古風で、「位」と「気品」とを兼ね備えた女形は、芝翫さんのほかに知らない。

丸本歌舞伎は云うに及ばず、世話もの、書きものなど、数々の名舞台を見てきた。

いずれも品と格のある舞台であった。


『九段目』の戸無瀬、『十種香』の濡衣、『盛綱陣屋』の微妙、『道明寺』の覚寿。

世話ものでは『文七元結』の角海老の女将、書きものでは『お江戸みやげ』のお辻など。

芝翫さんの名舞台を挙げれば、月並みな言葉ですが、枚挙にいとまがありません。


また芝翫さんは大の競馬好きで知られています。

入院中に100円で買った馬券が最後は80万円になったという。

勘三郎(←娘婿)さんたちに「お前たちには3000円しかやらないよ!!」といったそうだ。

「ケチだね」と勘三郎さん。

これをきいて私は『お江戸みやげ』で芝翫さんが扮したお辻というケチ婆さんを連想した。

12月の「京の顔見世」で、お辻をこんどは三津五郎さんが務める。


新しくなる歌舞伎座の開場、孫勘太郎さんの勘九郎襲名を控えて、芝翫さんの口上を楽しみにしていたのに残念でなりません。

どうぞ天上界でゆっくりおやすみください。そしてこれからの歌舞伎界を見護ってやってください。        合掌                                                                                     

 

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