三遊亭円朝を知らなくても、「カランコロン、カランコロンと下駄の音・・・」で知られているお露と
新三郎のコワ~イお噺はご存知でしょう。
これが円朝の代表的な怪談噺『牡丹燈籠』なんです。
『怪談 牡丹燈籠』は、人気を博した円朝の落語を脚本家の大西博行が劇化し、1974年に
文学座で初演され、杉村春子の代表作の1つになりました。
このたび、段田安則さんら新メンバーが渋谷のシアターコクーンで上演。
中日(なかび)に観てきました。
ダイナミックな活劇で知られる劇団☆新感線のいのうえひでのりの演出。
若い浪人の新三郎に瑛太、幽霊になったお露に柴本幸。
貧しいながら睦まじく暮らしていた伴蔵(段田安則)とお峯(伊藤蘭)の夫婦ですが
ひょんなことから運命が狂うのです。
お国(秋山菜津子)と源次郎(千葉哲也)は、愛欲が絡んで血塗られた末路をたどります。
ありきたりの怪談劇ではなく、3組の男女を中心にして人間模様が描かれています。
人間の業や欲が明かになる世話物的な部分は、現在風でわかりやすい。
とはいえ、しっとりとした人間ドラマが、いのうえの手に掛かると劇画になる。
ロックが大音響で流れ、立ち回りこそないが、無数の”仕掛け”があり、盆を使って、
テンポのよさもありますが、世話物の雰囲気が皆無。
もっと座り心地のよい舞台に仕上げてほしい。
前半は説明的すぎるし、後半は、お峯(伊藤蘭)の嫉妬だけが前面に出て、
伴蔵(段田安則)の殺意が上がらない。2人とも怒鳴り過ぎ。もっと抑えた芝居をしてほしい。
お国の秋山菜津子は淋しい女の感情を出して上出来。
ことに小料理屋「笹谷」の酌婦になってからが秀逸。
お米の梅沢昌代には存在感がありました。
お露の柴本幸はともかく、瑛太(↑画像)の新三郎はおいしい役。
舞台初出演だそうですが、これではイケメン人形にすぎない。
もう一度出直してきてほしい。やはり映像の人。
ちなみに観客の8割が瑛太ファンとおぼしき若い女性だった。
人気スターさえ出ていれば、客席は満員になるという時代でもない
でしょう。
いつもならハードロックに激しい殺陣と様式美の『いのうえ歌舞伎』だが、
今回は、下野したどこかの政党のように、”ぬるま湯”に浸かった『牡丹燈籠』であった。
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