詩人の谷川俊太郎さんは92歳、最近では脚がおぼつかなく
なり車いすで日常を送っている、コラム二ストのブレイディ
みかこさんとの往復書簡形式の「その世とこの世」で18通
の言葉の逢瀬を重ねた。
そのなかで谷川さんは肌感覚として死が近づいて来ている、
若い頃の明快なこの世ではなくて、あの世に近づいていくプ
ロセスとして「その世」があるんじゃないかと述べている、
さらにおむつをはいている近況を詩のなかで赤裸々に告白し
ている「これを身につけるのは九十年ぶりだから違和感があ
ると思ったら、かえってそこはかとない懐かしさが蘇ったの
は意外だった」
おむつで始まりおむつで終わる、私の両親もそうだった、父
は認知症から持病の悪化で入院、半年間のおむつの生活、母
も認知症になり介護付き老人ホームに入居して2年間のおむ
つの生活、谷川さんの詩を読んで一周回って赤ちゃんに近づ
くことを両親は、どんな思いでいたのだろうかと時々振り返
ることがある。