TABI天使日記

天使になったカナダのアジリティ犬と、ママ・パパの日常

幼子二人の命を奪ったものは

2001-06-09 09:54:03 | インポート
大阪の小学校の凄惨な事件をネットニュースで知った矢先、ここカナダでも
日本人による殺人事件があり社会を騒然とさせていることを耳にした。

カルガリーで、23歳の日本女性が15ヶ月の息子を殺害しアパートに放置。
さらに3ヶ月の娘も殺害したのちビニール袋で包み川に遺棄した疑いで逮捕された。

彼女は数年前に留学生として来加、英語を学んでいたが、そのうちカナダ人男性と
知り合い結婚、二人の子持ちに。だが育児に疲れ、犯行に及んだもよう。
アパートの住人が腐敗臭に気づき、管理人が容疑者宅を訪れて幼児の死体を発見、
警察に通報した。夫とは別居中だったという。
男の子の死体は司法解剖にまわされ、女の赤ちゃんの死体捜索は今後も続く。

とまあ、一見してふつーの育児ノイローゼ殺人である。
しかし、この事件の受け取り方は日本とカナダで異なる。

日本では、母子無理心中というのは昔からよくあることだ。貧困その他の理由で、
「いっそこの子を殺して私も」と人生に見切りをつける母親、また子供を殺した
ものの自分は死にきれず自首する母親の事件は、日本人なら何回か新聞やテレビで
報道されたのを見た経験があるだろう。
そして、日本人ならたいてい「罪のない子供が犠牲になって気の毒だが、母親も
さぞつらかったのだろう」と、我が子を手にかけざるをえなかった女性の気持ち
を推し量り、同情するのがふつうではないだろうか。

だが、カナダ人にとって、いかなる理由があるにせよ母親たるものが我が子を
殺すというのは、情状酌量の余地のない罪なのである。
しかもこの事件では、一人は部屋で腐乱死体、もう一人は川のどこかに沈んでいる。
「母親が我が子を二人も殺し、死体を遺棄」するなんて、カナダ人の想像を絶する
極悪犯罪なのだ。
たいていの猟奇殺人には慣れっこになっているカナダのメディアが、異例の
センセーショナルな取り上げ方でこの事件を報じたのは、こうした背景がある
からだ。

カナダだって育児ノイローゼになった女性による事件がゼロというわけではない。
だが、以上の理由でこの日本女性に対する世間の目は一段と厳しく、今後裁判で
彼女の弁護は難しいものとなろう。陪審員制度をとるこの国で、日本的感情や
風土の違いをいかに説明したとしても、彼女に有利な情報となる可能性はとても
少ない。

今後もこの事件のなりゆきを注目したい。


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