広島三越では毎月1日に全体朝礼がある。全社員が1階の正面玄関前に作られた演壇の前に集まる。9時45分から店長(珍しく女性店長)の話を聞くのだ。前月の成績や効果があった事、また、反省点など。丁度、私の売り場が朝礼会場になっている。私も「フム、フム」と解ったような解らないような顔をして一緒に聞いている。
二日目からのアルバイトの「M」さんが付いてくれた。私と同い年の背の高い女性だった。この人が残り五日間も私の所に付いてくれるはずであった。気分をほぐす為、子供の事や家族の事、御主人の仕事の事などを面白可笑しく聞き出し、親近感を持ってもらった。ところが、翌日、朝10時半になっても出勤してこない。「どうしたんだろう、事故でもあったのだろうか?」と心配していると社員さんから「今朝、御主人が亡くなって来れなくなった。」と言う。「えっ!」絶句である。昨日は笑いながら「主人の仕事も大変で私が外貨獲得でアルバイトに来ているんです」と冗談を言っていたのに。人のことは解らない。明日は我が身か?その分今を大切に生きて行かなくては。
いろいろ、ハプニングの一日で、迫り来る台風のため三越も閉店時間を繰り上げ6時半閉店。何故か早く閉まるというと、儲けたような気になり、嬉しくなる。閉店後、三越の担当社員の「Sさん、Tさん」と居酒屋で恋愛談義でした。
印象的だったのは、外で雨が少し降り始めた頃、盲目のお客様が、玄関でお店に入って来たお客様とすれ違った時「外から来た人、雨の匂いがする。」と言っていた事だ。私達には感じない音や匂いをかぎ分ける事が出来るのだろう。その一言を聞いて感心してしまった。