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竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

千代田区の柳は無聊みどりの日 大畠新草

2019-05-04 | 今日の季語


千代田区の柳は無聊みどりの日 大畠新草


季語は「みどりの日」。東京都千代田区は、お隣りの中央区と並んで定住者が少ない。夜間の人口は激減する。「昭和35年の12万人(住民基本台帳人口)をピークに区の人口は減り続け、平成11年1月には3万9千567人となっています。人口の減少により、地域のコミュニティが衰退し、生活関連の商店が減少するなど、区民生活に大きな影響を与えています」(千代田区ホームページ)。戦後いちはやく麹町区と神田区が合併してできた区だが、焼け野原だった当時の人口が3万人ほどだったそうだから、ほぼそのレベルに戻ってしまったわけだ。したがって、平日はビジネスマンなどでにぎわう街も、休祝日にはさながらゴーストタウンと化してしまう。私は皇居半蔵門前の放送局で働いていたので、この言い方は誇張ではない。食堂なども店を休んでしまうので、ホテルのレストランで高いランチを食べなければならなかった。掲句はそんな祝日の千代田区を詠んでいて、私などには大いに腑に落ちる。「みどりの日」というのに、せっかく青々としている「柳」も「無聊(ぶりょう)」のふうだ。みずみずしいはずの街路の柳も、なんとなくだらりと垂れ下がっているだけのような……。今日は昭和の時代には天皇誕生日だったので、千代田区千代田1-1というアドレスを持つ皇居の溢れんばかりの「みどり」も、句の背景に滲んで見える。昭和も遠くなりにけり。この句には、ちらりとそんな隠し味が仕込まれていると読んだ。『新版・俳句歳時記』(2001・雄山閣出版)所載。(清水哲男)

今日は令和天皇の即位を祝賀する一般参賀の日
早朝から5万人もの行列ができたという
この日が昭和の日でもある偶然におどろくばかり  (小林たけし)

【みどりの日】 みどりのひ
4月29日。昭和天皇逝去にともない、天皇誕生日をそのまま祝日として残し、自然を愛された昭和天皇を偲ぶ日とした。
例句 作者
和服着て身のひきしまる緑の日 酒井春青
書に倦めば水遣りに出てみどりの日 宮岡計次
昭和史のおほかたを生きみどりの日 千手和子
水神へ走る水音みどりの日 平井さち子
天皇の日や少年は樹を降りず 菅原鬨也
傷ふかき山いくつ見てみどりの日 村沢夏風