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竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

蛇苺いつも葉っぱを見忘れる 池田澄子

2019-05-29 | 今日の季語


蛇苺いつも葉っぱを見忘れる 池田澄子

季語は「蛇苺(へびいちご)」で夏。おっしゃる通り。たまに蛇苺を見かけても、ついつい派手な実のほうに気をとられて、言われてみればなるほど、「葉っぱ」のほうは見てこなかった。こういうことは蛇苺にかぎらず、誰にでも何に対してでも日常的によく起きることだろう。木を見て森を見ず。そんなに大袈裟なことではないけれど、私たちの目はかなりいい加減なところがあるようで、ほんの一部分を認めるだけで満足してしまう。いや、本当はいい加減なのではなくて、目が全焦点カメラのように何にでも自動的にピントがあってしまつたら、大変なことになりそうだ。ものの三分とは目が開けていられないくらいに、疲れ切ってしまうにちがいない。その意味で、人の目は実によくできている器官だと思う。見ようとしない物は見えないのだから。それにしても、やはり葉っぱを見ないできたことは気になりますね。このあたりが、人心の綾の面白さ。ならば、一度じっくり見てやろうと、まことに地味な鬼灯の花にかがみこんだのは皆吉爽雨だった。「かがみ見る花ほほづきとその土と」。その気になったから「土」にまでピントがあったのである。『いつしか人に生まれて』(1993)所収。(清水哲男)

【蛇苺】 へびいちご
◇「くちなわ苺」
名前の印象から嫌われ易いが、無毒である。バラ科の多年草で、草原や路傍など多少とも湿気のある場所に自生。4月頃、鮮やかな黄色の五弁花を開き、初夏の頃、緑色の大きな花托をもった紅い小粒の実をつける。形はいかにも苺に似ているが、固くて不味い。

例句 作者

蛇苺玉の輿とも云はれしが 松村富雄
蛇苺世を拒まねば光り得ず 齋藤慎爾
道問へば吉野訛りや蛇苺 寺島初巳
関寺の小町の塚の蛇いちご 村木佐紀夫