竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

花嫁のように鯉くる梅雨の入り 和田浩一

2021-06-11 | 今日の季語


花嫁のように鯉くる梅雨の入り 和田浩一

花嫁のように来る鯉
見事な緋鯉、あるいはいたいけな小さな緋鯉か
作者は自分の娘の姿にかぶさって思えるのだろうか
あまり深読みしないで良いのだろうと思う
梅雨の入り が微妙な心理に取り合わせて絶妙
(小林たけし)


【入梅】 にゅうばい(ニフ・・)
◇「梅雨に入る」 ◇「梅雨の入」 ◇「梅雨入」(ついり) ◇「梅雨入」(つゆいり)
本来は立春から135日目、ほぼ6月11、12日頃を入梅としたが、最近では気象庁の「梅雨入り宣言」に基くのが慣習で、年毎に差異があり、又地域によっても梅雨の時期は異なる。梅雨はほぼ1ヶ月続く。

例句 作者

多機能を使いこなせず梅雨入かな 山中佐津喜
抽出しの軋む音して梅雨に入る 浅見芳枝
日本も日本人も梅雨に入る 國定義明
梅雨に入る水のにほひの永平寺 國定義明
梅雨の入り持病に一日付合ぬ 山根貞子
梅雨入りの囁き羅漢石の耳 進藤清
梅雨入りを前に身軽な山である 山口木浦木

麦飯のところどころでよいとまけ 篠原信久

2021-06-09 | 今日の季語


麦飯のところどころでよいとまけ 篠原信久

季語の麦飯が初夏の季語だと納得するまでに時間を要する
麦秋からの連想が浮かぶが
絶滅寸前の季語なのかも知れないと思う

掲句も古い記憶を呼び覚ましての作だろう
(小林たけし)


麦飯(むぎめし) 初夏
【子季語】すむぎ
【解説】
裸麦や大麦を米に混ぜて炊いた飯。近年では加圧して押し麦にしたものを炊き込む。麦の収穫は五月から七月頃。麦はビタミンB類が多く滋養に優れる。とろろ汁をかけて食べると美味。宮崎の冷や汁に麦飯は欠かせない。

【例句】 作者
京まではまだ二日路や麦の飯 草斧「新華摘」

夕陰の新麦飯や利休垣 一茶「八番日記」

春燈の消ゆることない懺悔室 たけし

2021-06-07 | 入選句


春燈の消ゆることない懺悔室 たけし



2021/06/06 の朝日新聞 栃木俳壇 

石倉夏生せんせいの選をいただきました



投句日が春季だったので現在とは違う季節感になりました



若い頃の協会での懺悔の体験が蘇っての発想でした

城門に銃弾の跡青嵐 服部伶子

2021-06-06 | 今日の季語


城門に銃弾の跡青嵐 服部伶子

城址の散策に城門の銃痕を発見した
おりからの南風に青葉が大きく揺れる
一気に時空をこえて城のさわめきを共有する
(小林たけし)


【青嵐】 あおあらし(アヲ・・)
◇「風青し」 ◇「青嵐」(せいらん)
初夏の青葉のころに吹きわたる爽やかなやや強い風のこと。「夏嵐」とも。概ね南寄りの風である。「せいらん」とも読むが「晴嵐」と紛らわしいので「あおあらし」と読まれることが多い。同じ南の風でも「南風」(みなみ・はえ)の方が生活に密着した語であると言える。

例句 作者

とまり木に老いける鷲や青嵐 水原秋櫻子
なつかしや未生以前の青嵐 寺田寅彦
カルメンの振り向く視線青嵐 小髙正子
下京を過ぎてしばらく青嵐 桂信子
光芒としての蛇口や青嵐 永井江美子
切符ふと落すメトロの青嵐 榎本愛子
四方みな山見ゆ二階青嵐 境初子
壮行の日もよ鎮守の青嵐 鈴木節子(道標・俳句人)
夏嵐机上の白紙飛び尽す 正岡子規

緑陰や輪ゴム千個に射抜かるる 渋川京子

2021-06-05 | 今日の季語


緑陰や輪ゴム千個に射抜かるる 渋川京子

青葉の重なりの作る木漏れ日を
作者は「輪ゴム」と表意する
夥しいその木漏れ日に気持ちよく射抜かれている
なんともしあわせな時間
(小林たけし)


【緑蔭】 りょくいん
◇「翠蔭」(すいいん)
茂った青葉が作り出す蔭をいう。炎暑の中にあって木蔭に一歩入った時の心地良さは格別のものがある。木洩れ日を浴び、時には涼風も吹く中で、人々は読書や語らいなど、思い思いに憩う姿が見受けられる。

例句 作者

緑陰の傀儡ひとりにひとつづつ 五島瑛巳
緑陰の笑顔そんなにさびしきか 齊藤美規
緑陰もまたおちつかず揚羽蝶 桂信子
緑陰やアルキメデスの話など 野木桃花
緑陰や水際に魚の匂ひして 桂信子
緑陰をよろこびの影すぎしのみ 飯田龍太
裏道に緑陰が見えそこへゆく 桂信子

六月とは遠くの牛の傾きなり 塩野谷仁

2021-06-04 | 今日の季語


六月とは遠くの牛の傾きなり 塩野谷仁

難解句ととらえるかは読者次第だ
六月の夏とは言えない独特の季節感は
なににも例えられない不思議な怪しいものがある
作者は作者だけの六月を主張している
これこそが心象というものなのだろうと納得する
(小林たけし)


六月】 ろくがつ(・・グワ・・)
6月は俳句の上では仲夏になる。緑も深まり、夏らしさが目について来ると同時に梅雨入りの時期でもある。

例句 作者

六月のしあわせ集む孫の婚 松本夜誌夫
六月のピアノを置いて嫁ぎゆく 松岡耕作
六月のメタセコイアの雀たち 崎元風骨
六月の女すわれる荒筵 石田波郷
六月の富士よく見えてこころに師 火野保子
六月の母の真珠の重かりき 小川葉子
六月の沼に浮かびし杭の先 福島知子
六月の海の碧さにポスト塗る 高篤三
六月の海原に玉沈めんか 原裕
六月の真夜の家裂く金の馬 金子皆子
六月の眩暈のような箱届く 服部修一
六月の背広に古きティッシュかな 松本勇二

夏草を抜いてもぬいても日曜日 酒井十八歩

2021-06-03 | 今日の季語


夏草を抜いてもぬいても日曜日 酒井十八歩

句意は明解
大切な休日が夏草に侵されて全滅する
作者は案外ひねもす草むしりのできる
日曜日を楽しんでいるかのような雰囲気もある
(小林たけし)


【夏草】 なつくさ
◇「夏の草」 ◇「青草」
夏に生茂る草で、抜いても刈っても横からはびこる。緑濃く、野山では乱れに乱れ茫々たるありさまになる。草の生命力を感じさせる。

例句 作者

夏草のかげの礎石にたちくらみ 原 裕
夏草に紙飛行機をすべらせる 秋田牧女
夏草や兵共がゆめの跡 芭蕉
夏草や海に傾く艀小屋 大野紫陽
夏草に汽罐車の車輪来て止る 山口誓子

朝凪の海見てこころ足りにけり 井上喬風

2021-06-01 | 今日の季語


朝凪の海見てこころ足りにけり 井上喬風

昨夜からのわだかまりにつかえていた胸だが
だれもいない穏やかな海をみていたら
つまらないことに拘っていた小さな自分に
自然と苦笑い
満たされるほどではないがじゅうぶんに心足りた気分になった
(小林たけし)



【朝凪】 あさなぎ
海岸地方で朝、陸風から海風に変る時、一時的に風が吹かなくなること。海風、陸風とも日射の強い夏期に特に発達し、それだけに朝凪、夕凪が目立つので夏の季題となっている。

例句 作者

朝凪のいかなご舟に波送る 殿村莵絲子
朝凪や渡島づとめの造船工 秋元不死男
朝凪といへども波は寄せてをり 平井照敏
朝風のくづるゝ待ちて打瀬舟 小島昌勝
善良な朝凪に棒立ててある 河西志帆