悲劇・・・モンローとディマジオ(2019.1.9日作)
今夜もNHkBSでモンローに関した題名のドラマが
放送されるようです。私は見る気はありませんが。
貧しい移民の両親の下に生まれたジョー・ディマジオ
不幸な生い立ちの神経質なマリリン・モンロー
深く愛し合ったがゆえの二人の悲劇ーー嫉妬 別れ
ディマジオの嫉妬に耐えられなくなったモンローの
自棄的行動 男性遍歴ーーディマジオの孤独
しかし 結局 モンローの心の底には
ディマジオへの愛があった ?
そして モンローの不幸な死ーーケネディ疑惑
・・・・・力のある者の横暴 ?
モンローの墓前に花を奉げるディマジオ
夜明けが一番哀しい(8)
「本当よ、あんたがいないうちさ」
安子が言った。
「こんなちっちゃな本だったけど、一ページ一ページ破って口の中へ入れると、水を呑みながらどんどん食べちゃったんだよ。それであの人、お腹をこわして一ヶ月ぐらい蒼い顔をしていたんだから」
トン子が言った。
「信じられないね」
ノッポが如何にも自分が正常な感覚の持ち主ででもあるかのように言った。
「あの子、マンガ家になんかなれっこないよ。あん風にしていたんじゃあ」
安子が見限ったような口振りで言った。
「でも、絵を描かせたらうまいわよ。さっさっと描いちゃってさ」
トン子が言った。
「絵がうまいだけでマンガ家になれるんなら、誰も苦労しないわよ」
安子が言った。
「そうさ、マンガ家になるには想像力がなくちゃ駄目だよ」
ノッポが訳知り顔でうけあった。
「やだぁー、あれ、ピンキーじゃない ?」
トン子が突然、頓狂な声を出して指差した。
「本当だ。ピンキーだ」
ノッポが答えた。
ピンキーは階段の降り口のところで体を海老のように折り曲げ、腕を枕にして眠っていた。
「やだぁー、ずっと、あそこに寝ていたのかしら ?」
トン子が大げさに驚きを表して言った。
「寒くないのかなあ、あいつ ?」
ノッポが言った。
「お酒に酔っているから寒くないのよ」
安子が言った。
「だって、酔っ払って寝ちゃってさ、凍死したなんてよく新聞に出てるじゃん」
「それは真冬で、カチカチに氷が張る寒中の事よ。バカね」
安子が軽蔑したように言ってノッポを見た。
「そうか、それもそうだな」
トン子は一足先にピンキーに近付くと体を揺り動かした。
「あんた、こんな所で寝ていると死んじゃうよ」
ピンキーは眼を覚ました。コンクリートの上に足を投げ出して坐るとぼんやりしていた。それからすぐにまた、うつらうつらし始めた。
「あたし達、帰るわよ。置いて行っちゃうから」
トン子はピンキーの背後から両脇に手を入れて抱き上げた。
ピンキーはようやく、よろよろと立ち上がった。
「あんたも困った人ねえ」
トン子は世話女房のような口振りで言った。
階段を降りるとフー子が立っていた。
「あんた、あんな所で何やってたの ? わたし、なんだか、あんたが今にも海の中に飛び込んでしまうんじゃないかっていう気がして、とっても怖かったわよ」
トン子は言った。
フー子は眼を伏せただけで答えなかった。
フー子に何処となく暗い翳があるのは、やっぱり家庭環境が影響しているのだろうか、とトン子は考えた。
トン子は何時だったか、確かに、無口なフー子の口から彼女の境遇を聞いたように思った。それとも、単に自分が想像しただけの事だったのか ? ・・・・・
それにてもフー子はいつも、どうしてあんなにお金を持っているのだろう ? 彼女の父親はやっぱり、大きな会社の社長なのだろうか ? いったい、フー子はあんなに自由にお金が使えるのに、何が不満で夜中まで、ふらふら街の中をほっつき歩いているんだろう・・・・・ ?
トン子は少し前を歩いて行くフー子の形の良い小さな尻を包んだジーパンのポケットには、幾らのお金が入っているんだろう、と考えた。
「あら ! 車がない 」
突然、安子が立ち止まった。
先程、ピンキーが停めた場所に車はなかった。
「盗まれたのかしら ?」
安子は辺りをキョロキョロ見廻した。
「画伯は何処へ行ったんだ ?」
ノッポが言った。