道祖神(2018.3.15日作)
宗教 神 の 名の下
いかに多くの 殺人 犯罪 争い
悪徳 悪行 が 行われて来た事か ?
絶対的 全知全能の神 など 存在しない
宗教 教会 聖職 すべて 空疎な
絵空事 砂上の楼閣 人間は
絶対的孤独者 孤独な存在 その事実を
まず 認識 自身を納得させる事
人間が縋り得る存在 人間自身 その自覚の下
人がもし 神を必要とするものならば 神は
自身の心の内 心の中で 静かに育むべき存在
それが神 わが心に住む神 わが心に育む神
その神が人間 自身を統御する 自分を律する
しかし その神 その存在の絶対的条件
悪徳の神 人間 人を 苦難 苦痛 苦悩
悲惨の道に追い込む神であっては ならない
人が縋り得る存在 神は 人間 人の世 人の世界の
守護 人の世界を 律する為のもの
争い 諍い 貶め 人各々に 苦難 苦痛 苦悩 を
もたらす神であっては ならない
人の心を蹂躙する神であっては ならない
金銀宝飾 巨大な力 権力 楼閣 必要ない
神には無用 神はひそかに 静かに 人々 人間
各々を 見えない場所で支える存在 隠れた存在
それが神 真の神 ひなびた片田舎 草生す道端
風雨 直射の日光 陽射しを浴びて ひつそり佇む
道祖神 その姿 それこそが真の神の その姿
人々 人間 人の世が生み出した 真の神
その姿
影のない足音(7)
わたしは咄嗟に、先程 、同じ場所で動いたと思った人影を思い浮かべた。
やっぱりあれは、眼の錯覚などではなかったのだ。誰かが俺の後を付けていたんだ !
だが、もし、そうだとしたら、いったい、なんの為に・・・・?
ふと、一つの情景が思い浮かんだ。
「あんたの後を付けたんだ」と、わたしが言った時、思い掛けなく女が見せた、凍り付くような表情だった。あるいは女は、身辺を探られたくない為に、俺をどうにかしようとしているのだろうか ? だが、仮にそうだったとしても、いったい、何故 ?
俺に知られたくない、何かの秘密を隠し持っているのだろうか ?
しかし、最初に女の後を付けた時に聞いたように思った、あの足音は、すると、どういう事になるんだ ?
わたしは湧き起こる疑念と共に、暫くは人影の通り過ぎた三叉路を見つめ続けていた。
しかし、再びそこに動くもののない事を確認すると、足音を殺し、用心しながらゆっくりと歩いて行った。もし、誰かが物陰から飛び出して来た時には、いつでも動けるように身構えていた。
ようやく人影の動いた三叉路まで来た時、だが、そこでもやはり、何事も起こらなかった。静まり返った夜の中に、外灯の乏しい明かりが描き出す、ほの暗い道が続いているのが見えるだけだった。
わたしは、なんとはなしに覚える安堵感と共に、大通りへ出るとタクシーを探した。なかなか来ないタクシーを探しながら二十分程歩いて、ようやく空車を捕まえる事が出来た。
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身辺に、尋常ではない、と明らかに分かる気配を感じるようになったのは、それから三、四日経ってからだった。わたしが働いているバーで白木が、
「おまえ、何かやったか ?」
と、カウンターの中でわたしに囁いた。
「なんで ?」
わたしは白木の言う事の意味が分からなくて聞き返した。
「今入って来たあの二人連れを見ろ。刑事(デカ)じゃねえかと思うよ」
「刑事 ?」
奥まったカウンターの隅に席を取った男たち二人は、わたしの眼には平凡なサラリーマンのようにしか見えなかった。
「うん、どうもここ二、三日、店のまわりで変な男たちがうろうろしている」
白木はわたしと眼を合わせる事なく、軽い世間話しをする時のように、何気なさを装って言った。
「別に、刑事に付け回されなければなんねえような事はしてねえな」
わたしは言ったが、そう言ったすぐ後で、冷たいものが体の中を走るのを意識した。女の後を付けた夜と、それに続く二度目の夜の出来事が脳裡をよぎった。
だが、客たちのいる前で、いつまでもそんな話しをしているわけにはゆかなかった。その話しはそれきりになった。
白木の怪しんだ男たちは、ピーナッツのつまみとビールでかなりの時間ねばっていた。たいした金は使わなかった。しきりにタバコを燻らせていて、話しのはずむ様子もなかった。閉店前三十分程に店を出て行った。
「刑事だと思わねえか ?」
白木が、また言った。
「うん、よく分かんねえけど」
わたしは曖昧に答えた。
刑事か、それ以外の者なのか、判断が付き兼ねた。はっきりしている事は、女に絡む事でわたしの身辺に何かが起こっているのでは、という事だった。女がわたしに何かを仕掛けようとしているのか ?
それから更に三、四日経っていた。店が終わった後わたしは、白木と連れ立ってゲイ、バーへ行った。代々木のアパートへ帰った時には、午前三時を過ぎていた。
多少の酔いを覚えていた。古びた木造アパートの部屋の扉を開け、靴を脱ぐと座敷に上がってそのまま、四畳半に敷かれた万年床に倒れ込んだ。
どれだけの時間眠ったのか、覚えがなかった。尿意に促されて眼を覚まし、軽い頭痛を意識しながら、明かりを付けるのも忘れて暗い中でトイレに入った。
終わった後で何気なく小窓の外に眼を向けてわたしは、自分が夢の中にいるかのような錯覚に捉われた。アパートの斜向かいの小さな四つ角に二人の男たちが立っている・・・・
わたしはまだ眠気の取れない眼を瞬(しばたた)かせ、もう一度確認するように視線の先に注意を凝らした。
次の瞬間、わたしは頭痛を伴った、まだ醒め切らない酔いが体中の血の引く思いと一緒に、一気に引くのを意識した。
外灯の明かりの下にいる男たち二人のうちの一人は、手持ち無沙汰の様子でしきりに三、四歩、歩いては、同じ場所を行ったり来たりしていた。小柄でジャンパー姿の、何処にでもいるといった感じの男だった。あとの一人は、やや小太りな体に黒っぽく見えるスーツを着ていて、光りの鈍い外灯の明かりの下でタバコを吹かしていた。二人とも四十歳ぐらいに見えた。バーにいた男たちとは明らかに違っていた。
わたしはだが、男たちが二人だという事に、厭なものを感じた。白木が言った言葉を無意識のうちに思い出していた。あの時も男たちは二人だった・・・・・。