遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(331) 小説 雪の降る街を(4) 他 雑感 八題

2021-02-07 12:27:40 | つぶやき
          雑感八題(2012~2020年作)
           (この中には既に掲載済みのものも
            幾つかあるかも知れません)

 1  自我としての人間は一代で終わる
   しかし 命から見る人間は
   人間の連鎖の中にいる
   すなわち 命は永遠だ

 2  人生を賭けても 望むもの 希望が
   必ずしも達成されるとは限らない
   人はその時 どう対処するか ?
   この世界は仮相 虚無と見れば
   希望が達成されなくても嘆く事はない
   自分の思いを生きる事 
   それのみが真に大切
   あれも人生 これも人生 
   総て良し

 3 人生に見返りを期待しない方がいい
   期待すればする程 絶望が大きくなるだけだ
   人生は 日々が充実の中にあれば
   それで充分だ

 4 人は生きている限りに於いて
   この世の多様性を形造っている

 5 人間はどんな人間にも確実に
   後世に残せるものが一つある
   心だ 生前の行いによって人は
   自分以外の人の記憶に自分の姿 心を残す事が出来る
   人は その為に努力すべきだ

 6 気の充実がなければ
   物事は達成出来ない
   同じ才能を持った人間が
   最後に結果を分けるのは
   気の充実度の差によるものだ
   人生もまた 然り
   充実した気力で日々を生きる人間は長く
   賢明な人生を全う出来るだろう

 7  愚かな人間が権力の座に着くと
   自分の力を誇示したくて何事にも
   やたらに口を出したがる
   そして しばしば
   愚かな人間が権力の座に着きたがる

 8  腹を立てるな
   他人の誰もが あなた程
   聡明だとは限らない   
   そう 思えば 他人の  
   意のない行為 行動にも
   腹を立てずに 済む
   愚かな人間の行動に いちいち
   腹を立てていたのでは
   自身の身が持たない
   
   
   



          ------------------



          雪の降る街を(4)

 程なくして、親子丼が運ばれて来た。暖かい湯気の立つ匂いが光男の空腹を刺激する。
 ウエイトレスが去ると光男は、暖かな匂いの刺激に誘われるままに丼を手に取り、搔き込むようにして御飯を口に運んだ。乏しい給料の中で節約に節約を重ねる光男に取っては滅多にない御馳走であり、贅沢だった。食パンと卵、ソーセージだけが普段の夕食だった。
 光男はその丼飯を搔き込みながら、ふと、故郷の母の姿を思い描いた。
 母の作ってくれた親子丼の味を思い出した。
 故郷のあの村でも今頃は雪が降っているのだろうか ? 父はどうしているのだろう ? 
 毎日、雪かきに励んでいるのだろうか ? ---
 その時、四、五人の男女の学生らしい一団が賑やかなざわめきと共に入って来た。
 一団は入り口のすぐ傍の席を陣取ると、相変わらず賑やかなさざめきと共に口々に勝手な事を言っては笑い合っていた。静かだった店内が一瞬にして活気に溢れた騒々しい場所に変わっていた。ウエイトレスが注文を取りに来るとそれぞれが、
「俺、コーヒー」「わたしは紅茶」「わたしはアイスクリーム」「アイスクリーム」「俺はコーヒー」
 合唱するように言い合った。
 光男は彼等のそんなざわめきとはしゃぎ振りを見ると途端に、居心地の悪さを覚えて苛立った。自分の静かで満ち足りていた空間が一気に破壊され、攪乱されてしまってような気がして、彼等を憎んだ。
 うるさい奴らだ !
 ウエイトレスが去ると彼等はなお、口々に、
「先輩、これが最後の冬休みですね。せいぜい、最期の学生生活を楽しんだ方がいいですよ」
「そうですよ。就職すれば、今までのような勝手気ままはできないですから」
「銀行ですって ? 何処の銀行ですか」
「XX銀行さ。そうですよね」
「あらそう。じゃあ、一流銀行員っていう訳すね」
「そう、一流銀行員。だから今夜は先輩の奢りっていう事にしましょう」
「よせよ、おい。まだ、給料を貰っている訳じゃないんだぜ」
 彼等はそれでまた、声を上げて笑った。
 そうして彼等はひとしきり騒いでいたが、光男が食事を終わって間もなくするとまた、慌しく店内を出て行った。
 光男は彼等が出て行った後の店内の静けさにホッとしたが、なんとなく、心の内に込み上げて来る寂しさもあった。彼等の、雪の夜の寒さも気にする様子もないように、はしゃぎながら出て行った後姿が光男の眼には羨望の心と共に焼き付いていた。
 " あんな彼等だって社会へ出れば、暢気にはしゃいで、笑ってばかりはいられないさ "
 反感と共に思ったが、増して来る寂しさの感情には押さえ難いものがあって、思わず涙ぐんだ。ふるさとの雪の景色が再び、思い出された。家族や村の人々の間にあった温もり。決して豊かとは言い難かった村の暖かさ。光男の心が帰ってゆく故郷はやはり、あの村以外になかった。あの村での幸福な日々の数々。あの日々の中で光男は自分がこの村に生まれた事の不幸を考えた事は一度もなかった。総ての日々が幸福に輝き、満ち溢れる光りに彩られた日々だった。雪に埋もれた道を何時間も掛けて通った隣り町にあった中学校。そこでの思い出の数々。どれ一つ取っても今では光男に取っては心の中に輝く宝石となっていた。この、東京という街の、見せ掛けの華やかな光りと煌めきにはない本物、真実の輝きがあった。ーーふと、光男は我に返った。
 我に返った光男の眼に映って来たのは、店内のガラス戸越しに見える雪に埋まる街の姿だった。
 雪はいよいよ、激しく降り募って来ていた。車道も舗道も既に相当量の積雪になっていた。
 車がタイヤを空転させながらゆっくりと走って行く。人々の差す傘には雪が積もっていた。店内にも人の数はいつの間にか疎らになっていて、光男の他に四人の男の客が居るだけだった。
 光男はそれでもなお、食事の終わった後のテーブルに向かったまま、座っていて動こうとはしなかった。この仮の温もりではあっても、身体を温めてくれる温もりが今の光男に取っては救いになっていた。寒い雪の中に出て行くには少しの努力と決心を必要とした。
 そんな雪は、光男が座った窓際のテーブルの側の窓ガラスにもしきりに降り掛かって来た。その雪を見つめながら光男は、こうして見ていると今にも自分が雪に埋もれてしまいそうだ、と思った。すると突然、一つの記憶が蘇って来て、光男の意識の全部をたちまち覆い尽くし、光男を過去の世界に引き戻していた。
 雪子、懐かしい名前だった。後藤雪子。ちょっとやんちゃで、活発、男勝りでありながら、憎めない、小柄で愛くるしい顔立ちの同級生だった。頭も適度に切れ、何処と無く増せて見えた。光男がその雪子を知ったのは、町の中学校へ通うようになり、同じクラスになってからだった。無論、素朴な光男がそんな雪子に恋心を抱くというような事もなくて、三年間はただの同級生にしか過ぎなかった。そんな光男が殊更、雪子を意識するようになったのは、中学校生活も間もなく終わろうという年の十二月初めの事だった。そして、その日も雪が降っていた。その年、最初の雪だった。雪は午前九時頃から降り始め、たちまち校庭全体を覆い尽くし、当然ながらに周囲の景色をも雪の景色一色に染め始めていた。
 その日、放課後の外での課外活動は総て中止になった。時間を持て余した生徒達は激しく降りしきり雪にも係わらず、その年初めて大雪に興奮し、はしゃぎながら各々が勝手に外に飛び出した。その中には無論、光男もいたし、雪子もいた。おおよそ十二三人の男女だった。初めはみんなが雪だるまを造ったり、雪を掛け合ったりして遊んでいたが、いつの間にかそれが男女に分かれての雪合戦となっていた。



          ----------------



          桂蓮様

          有難う御座います
          基本コンセプト 面白いですね
          人間 生まれ 人種 国籍 年齢
          関係ないようです 基本は
          考え方ですね 物事に対する考え方
          これが違ってはどの国の者であっても
          どの年代の者であっても
          どうする事も出来ません ましてや
          一瞬の間に世界が繋がる今の時代
          国籍 民族 人種に係わりなく
          思想を同じくする者同士が固く手を取り合って
          行く事が大切になるのではないでしょうか
          正に今 世界は一つの時代です
          どうぞこれからも貴重な御意見
          発信し続けて下さいませ
           感覚に訴えるものは強烈
          お言葉通りです 感覚で理解したものは
          真に自分の経験として身に付きます 
          書物などで得た知識などとは比較になりません
          書物などから得た知識は借り物です
          禅の世界では この体験という事を
          最も重視していますね
           それにしても桂蓮様に取っては他国
          この日本での御苦労は並大抵のものでは
          なかったのではないでしょうか しかし
          その分 今の 御主人様との仲睦まじく
          拝見出来る日々が得られたと思えば
          その御苦労も一つの慰めとなるのでは   
          ないでしょうか
           英語に付いての御説明 有難う御座います
          これで納得して映画を楽しむ事が出来ます