遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(357) 小説 荒れた海辺(1) 他 なんという暑さ

2021-08-08 12:29:42 | つぶやき
          なんという暑さ(2012.8.31日作)
  
              ほぼ十年前に書いた文章です。
              当時の夏も三十三度、三十四度と猛暑
              だったようですが、今、現在程、身体への
              打撃を嘆いていないのは、年齢の為でしょか。
              あるいは、気温自体が今よりもっと、穏やか
              だったのでしょうか。今年、現在、この国各地
              の気温は三十五度以上を連日、記録する。この
              暑さがやはり、当時と比べても異常な暑さ、と
              言えるのでしょうか。とにかく暑い !
              確実に地球温暖化への道を進んでいるようです
 

 なんという暑さ
 気温は連日 摂氏三十三度 三十四度 
 時には三十五度に及ぶ
 平成二十四年 2012年八月三十一日現在
 千葉県市川市大洲
 七十四歳を四ヶ月過ぎた夏の終わり
 さすがに この暑さに辟易
 疲労を覚える
 それでも夏バテはしていない
 まだ 暑さと闘う気力は衰えていない
 心は夏の真っ盛り
 秋の訪れ 穏やかな時を待ち望み
 やがて来る冬に備える気分は まだ ない
 失われた時間 人との係わりの中
 過ぎ去りし時と共に歩んで来た 自身の
 過去 空白の時間
 今 訪れた 一人の時間が その空白
 過去を解き放ち 
 失われた時間を埋めるべく
 心がせがむ
 七十四歳と四ヶ月
 一人の時間 自身の今を生きる歓喜が
 この身を包む
 
 ギラギラ燃える太陽
 心は夏の真っ盛り
 夏バテしている暇はない





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          荒れた海辺
            (続 海辺の宿)


          一

 大学三年生の信子が斎木夫妻にこう切り出したのは六月、日曜日の夜だった。
「お父さんとお母さん、今年、結婚二十五周年でしょう ?」
「そうよ」
 妻の奈津子は夕食後のお茶を手にしたまま答えた。
「じゃあ、銀婚式ってわけか ?」
 長男の高志が口を挟んだ。
「え ? もう、結婚して二十五年になるのか ?」
 斎木は迂闊にも初めてその事に気付いて言った。
「九月二十六日が二十五回目の結婚記念日よ」
 奈津子は改まった感慨もないのか、事も無げに言った。平穏無事に過ぎてゆく日々に満足しているようだった。
「お祝いはどうするの ?」
 信子がそんな母親の顔を見て言った。
 奈津子は期待もしていなかった事を聞かれて、ちょっと戸惑った風だった。
「お父さん、銀婚式のお祝いはどうするかって ?」
 斎木の顔を悪戯っぽく見て言った。
「別に。考えてもいなかったよ。そんな事、初めて気が付いたんだから」
 斎木はテレビのニュース番組に眼を向けたまま、気のない返事をした。
「二人で旅行でもしてくればいいじゃないか」
 高志が言った。
「あなたがお金を出してくれる ?」
 奈津子は就職して二年目の高志をからかった。
「そうよ、お兄ちゃんに出して貰えばいいわよ。もうじき、ボーナスが出るんだから」
 信子が言った。
「駄目だよ。俺にはそんな余裕なんてないよ」
 高志は信子に向かって口をとがらせた。
「なんだ、おまえが言い出したんじゃないか」
 斎木も信子に加勢してからかった。
「わたしのお友達に実家が銚子で旅館をやっている子がいるの。その子に頼んであげるから、そこへ行って二、三日、二人でゆっくりしてくればいいじゃない。お父さんはお魚が好きなんだから、銚子へ行けば好きなものがいっぱい食べられるわよ」
 信子がまんざら冗談でもない口振りで言った。
「あら、いいわね。あなたのお友達にそんな人がいるの ?」
 奈津子が気乗りした様子で言った。
「うん、テニス部で一緒なの」
「その友達に頼んで安くして貰えばいいよ」
 高志が言った。
「その代わり、お兄ちゃんがお金を出してよ」
「おまえも少しは出せよ。お祝いなんだから」
「わたしは学生でお金なんてないもの」
「アルバイトをした金があるだろう」
「そんなのもう、使っちゃったわよ。それにわたしはその分、旅館代を安くしてくれるように頼むもん」
 信子は澄ました顔で言った。

 夕食後の雑談が思い掛けなく本物になっていた。
 信子がすっかり手配をしてくれた。
 斎木は奈津子が運転する車で九月後半、三連休初日の朝八時に東京、中野の家を出た。地図を片手の銚子までのドライブの旅だった。
 千葉県に入ると国道一二六号線は混んでいた。
「三連休のせいかしら、ずいぶん混んでるわ。これじゃあ、銚子まで行くのにどれだけ掛かるのか分からないわ」
 奈津子は数珠繋ぎの車の列を見て、うんざりした様子で言った。
「うん。でも、朝早く出て来てよかったよ」
 車の運転の出来ない斎木は、奈津子のイライラする様子を見て慰めるようにして言った。
 奈津子は渋滞の中でドライブマップを開くと、熱心に抜け道を探し始めていた。
「東金という所で海岸通りへ出られるわ。少し遠回りになるみたいだけど、そっちへ行ってみましょうか」
 ドライブマップを見詰めたまま奈津子は言った。
「海の方へ降りるのか 」
 斎木は奈津子の言葉に独り言のよう呟いた。
「そうね。九十九里浜の海岸線に沿って道路が走ってるから」
 奈津子が斎木の呟きに答えるように言った。
 程なくして渋滞が解けて、少しずつながらに車が動き出した。
 奈津子はマップを膝の上に置くと、ハンドルを握って前方を見詰めた。
 斎木は九十九里浜と聞いて、思い掛けない懐かしさに捉われた。思わず、奈津子の膝の上にあるマップを手に取ると、それを開いて見た。
 雄大な海の広がりを示す青一色と、網の目のように道路の書き込まれた図形が眼に入って来た。
 斎木は熱心にその図形に見入った。と同時に頭の中では懸命に当時の記憶を辿りながら、一つの場所を探していた。
 だが、既に何十年も前になる昔の記憶は大方が薄れてしまっていて、明確な思いに辿り着く事は出来なかった。地名さえも浮かんで来なかった。
< 確か、宿の傍に川があって、木の橋が掛かっていたはずだ >
 その微かな記憶を頼りに川を探した。
 川口近くに何艘かの小型漁船が停泊していた記憶がふと、甦った。
 青い文字で書かれた小さな川の名前が眼に入った。
「栗山川」
 記憶にはなかったが、何故とはなしに確信的にそれが、探している川だ、という気がした。
「ようやく順調に走れるようになって来たわ。このまま、この道を行っちゃいましょうか」
 奈津子が安堵したように言った。
「いや、ちょっと、海岸通りの方へ行ってみてくれないか。少し、見てみたい所があるんだ」
 斎木は言った。
「何処を見るの。海 ?」
「いゃ、そうじゃない。ずっと昔に一度、この海辺に来た事があって、泊まった旅館があると思うんだ」
「泳ぎに来たの ?」
「いや、あの頃は、そんな余裕などなかった」
 斎木はふと込み上げて来る悲しみと共に言った。
「働きに来たの ?」
「いや」
 と言って斎木は言葉を濁した。
 斎木に取っては誰にも話していないし、話したくない過去でもあった。
 奈津子はその重苦しげな斎木の様子に気付いて、それ以上は訊ねなかった。
「ええと、こっちが一二八号線へ入るんだから、ここで左側へ行けばいいのね」 
 奈津子は独り言を言いながら道路標識に眼を配っていた。
「地図を見てみようか」
 斎木は奈津子を助けるつもりで言った。
「そうね。見てくれる」
 斎木は手にしたマップを開いた。
「そうだ。左へ行くんだ。そうすると片貝という所へ出る道がある」
「じゃあ、その道を行ってみましょうか」
 しばらく走ると、「ああ、ここね」と奈津子は言った。
 車は国道を出て県道に入った。





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          桂蓮様

          毎回の励まし 有難う御座います
          今回も新しい記事が見当たりませんでしたので
          旧作を再読させて戴きました と言っても
          義理やお付き合いで 読ませて戴いている訳では
          ありません 辞書を引きながらの英文との
          読み合わせが楽しいのと 初回には分からなかった 
          再発見のある面白さがあっての事で 
          どうか義理で無理矢理 読んでいるとは
          思わないで下さい
           今回の再読は 2020年難世を生きて です
          来年になってコロナが根っこから消滅するのを
          願っている そう簡単には終わらないでしょう
           お言葉通り 日本では今現在 日増しに状況が
          悪化するばかりです いつ終わるやら
           それにしてもこの記事の中で 普段の桂蓮様とは 
          思えない弱気の姿が映し出されていて 思わず
          含み笑いをしてしまいました 何時も前向きに思える
          桂蓮様でもこんな事があるのかと 
          どうぞこれからもこのような真実の姿を
          このブログで発信し続けて下さい
          楽しみにしております
           有難う御座いました



          takeziisan様

          有難う御座います
          猛暑の中 写真撮影も大変なのでは
          ないでしょうか
          今回 カルガモ親子楽しませて戴きました
          田舎に居た頃から カルガモは親しい存在だった
          のですが こうしてじっくり見るのは初めてです
          なんの動物に限らず 親子の姿は微笑ましいものです
          必死にわが子を守ろうとする姿勢がどの動物にも
          感じられます
           方言はいいですね 優しさが感じ取れます
          こういう言葉もいろいろボタン一つで言葉が発信
          出来るようになると だんだん失われてしまうのでは
          ないでしょうか 世の中 便利になるのと共に  
          失われてゆくものへの寂しさも感じます
           それにしてもよく日記をお持ちです
          貴重な記録ですね わたくしなど ほとんど
          書いた記憶がありません 後に東京へ出てから
          多少 書きましたが長続きはしませんでした
           鶏頭にもいろいろあるんですね
          俳句 病院へ行って不整脈を発症していては
          困ったものです
           何時も お眼をお通し戴き 有難う御座います