価値(2021.12.19日作)
命は平等だ しかし
人間はそれぞれ 異なる存在
異なる存在に於いて それぞれが その場で
真実 最高の仕事をした時
その仕事の価値は平等だ
人それぞれが それぞれの立場で
真摯に成し遂げた仕事の価値は 平等
真摯に生きる 生きた
その評価こそが 人が生きる上で
最大限 大切 必要な事
宗教 神仏
宗教は虚構 フィクション
そこに心を遊ばせる事は出来ても
頼る事は出来ない
神仏は心を律するためのもの
頼るべきものではない
唯一 確かな現実は今 ここに
自分が居るという事
この現実を生き切るためには
自身の才量 努力以外に 叶えられるものはない
他力本願は幻想 有り得ない
神仏は 居る のではなくて 自身が
心のうちで育み 生み出すもの
禅 わたしがここに居る
平常心是道(へいじょうしんこれどう)
生きながら 死人となりてなり果てて
思いのままにするが業ぞよし
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岬
または
不条理(7)
「わたし共の調査では、あの男の素振りに怪しいものは、なんら見られません。男は東京駅八重洲口の近くにあるビルの八階にある商社に勤めています。会社は外国からの食品の輸入を主にやっています。あの男はそこの営業部長です。家族は妻と高校生、中学生の二人の男の子です。住所は千葉県船橋市です。あなたには内緒で録音した会話のテープがこれで、このテープの内容を分析してみても、怪しいと思われる箇所は見当たりません。単なる商談のようにしか受け取れないのです。あの男があなたにどのような仕事を依頼したいのかは分かりませんが、今のところ、これ以上、警察が踏み込んでゆくだけの理由が見当たりません。わたし共としましては、たまたま同じ通勤電車内で顔を合わせたあなたが、優秀な社員だと知ったあの男が、何かの重要な仕事を依頼する気になったとしか、受け取れないのです。この会話の中で最も胡散臭いのは、" ある物 " を岬まで運んでくれ、という点ですが、我々はこれも、いろいろな角度から検討してみました。最も考えられるのは麻薬ですが、男の周囲からそのような状況を掴み出すのは不可能でした。あとは何かの密輸ですが、これも白でした。--どうですか。今度、あの男から電話があったらはっきりと、断る、とおっしゃっては ? 別段、なんの障害もないと思いますが」
警察官は言った。
三津田は自分が分からなくなった。なんの怪しいところもない !
しかし、それならあの男はなぜ、こんなにも執拗にまとわり付いて来るのか。
警察では、表面上の調査だけで済まして、楽観的に考えているのではないか、と三津田は警察への不信感さえ覚えずにはいられなかった。
「でも、わたしはこれまで、何度も断っているんですよ。それでもあの男は、しつこく言い寄って来るんです。わたしには、この裏に何かがあるとしか思えないんです。たとえ今度、断ったにしてもまた、同じ事の繰り返しになると思うんです。ですから、兎に角、男の要求を一度、受けてみようかと思ってるんです」
三津田は警察官への不信を滲ませる口調と共に言っていた。
「そうですか。兎に角、わたし共としましても今のところ、これ以上の事は出来ませんので、注意だけは充分しておきますが、もし、何か変だと思えるような事があった時には、すぐに電話を下さい。出来るだけの準備はして置きます」
警察官は言った。
男から電話があったのは四日後だった。
「十三日、土曜日。午前十一時三十分に東京駅N番ホームに来て下さい。黒いソフト帽を被って灰色のスーツを着た若い男が、最後部の乗車位置の柱の陰に立っていますので、そこへ行って下さい」
「報酬は何時、貰えるんです ?」
三津田は挑むような口調と共に、皮肉を交えて言った。
警察では、断れ、と言っていたが、三津田にしてみれば、とにかく一刻も早く、この事へのケリを付けてしまいたいという思いのみが強かった。
「それは目的が達成されたと分かった時点で、間違いなくお支払いされるはずです」
男は言った。
三津田は妻に言った。
「とにかく、この仕事を受けてみよう。何があるかは分からないけど、警察も付いていてくれる事だし、何時までもぐずくず引っ張っているのは、かえって気が重いから」
「でも、一度引き受けたら、類が類を呼ぶで、また次にもなんて事にならないかしら」
妻は心配した。
「うん、でも大丈夫だろう。一度、遣ってみれば、それがどんな仕事なのかも分かる事だし」
妻はそれでもまだ、不安な気持ちが拭えないようだった。
「大丈夫だよ。警察も付いていてくれる事だし、なんとかなるよ。兎に角、今度の事は平和な過程に突然訪れた、癌の兆候みたいなものさ。一度、切り取ってしまえばまた元に戻れるんじゃないのか」
三津田自身、完全に不安な気持ちが払拭出来たわけではなかった。
それでも兎に角、事を一歩前に進めたいという思いは強かった。
十三日の土曜日、三津田は指定された時間より少し早く、約束の場所へ行った。
そこに男の姿は、まだなかった。
ホームの時計が十一時三十分を指すのとほぼ同時に、階段を上って来た男の姿が見られた。
男は電話で言われた通りの服装で、一目で判別出来た。
右手に黒い、小型で薄いアタッシェケースを持った男は三津田に近付いて来ると軽く頭を下げて、
「三津田さんでいらっしゃいますか」
と言った。
三津田は「そうです」と言った。
男は三津田の前に立つとすぐにアタッシェケースを差し出して、
「実はこれを、岬にある一軒の家に届けて貰いたいと思いまして」
と言った。
三津田にはなんの変哲もない、ただの小型のアタッシェケースに思えた。
こんな事の為にわざわざと思いながらも三津田は次の瞬間には、それが何か、不法なものか、不審物なのか、という思いに捉われて体の芯に走る戦慄を覚えた。
三津田は即座に言っていた。
「中身はなんです ? まさか、不法なものや不審物ではないでしょうね」
男はその言葉を聞いても顔色一つ変えずに、
「いえ。決して、変なものではありません。その点は御心配戴かなくて結構です。ただ、わたし共に取って大変貴重なものですので、誰にも気付かれたくない、という訳なんです。それで、見ず知らずのあなたに敢えてお願いしたような訳なんです」
と言った。
「分かりました。ただ、これを持って行けばいいんですね」
三津田は男の手からアタッシェケースを受け取りながら言った。
「そうです。でも、くれぐれも中は見ないようにして下さい。見られないようにはなっていますが、もし、途中で気持ちを変えられて、ちょっと不味い事になっても困りますので」
男は言った。
「見たりなんかしませんよ。第一、鍵もないのにどうやって開けたらいいです」
三津田はアタッシェケースを見廻わしながら皮肉交じりに言った。と同時に三津田は、ふと、男の言葉から自分の背後に見え隠れする監視の眼を意識した。今の時点では、何処にもそのような気配は感じられなかったが、列車に乗った途端に、その眼が何処からか、自分に向けられて来る事を意識した。
東京駅から次の乗り換え駅までは約一時間半だった。
切符は男が用意していて、三津田は男の手から乗り換えの駅と、そこから先の岬の駅までの切符を渡された。
乗り換えの駅までは乗客の混雑もなく、楽に座席を確保出来た。
東京駅での男との遣り取りの中では、黒い小型のアタッシェケースの中身の分からない事を除いて他には、格別に不穏な空気やその気配の漂う事もなかった。男にしても至って紳士的で物静か、言葉遣いも丁寧だった。その点で、三津田が不安に思う事は何もなかった。列車が走り出して暫くしてから三津田は、ふと、先程意識した、自分を監視する眼を周囲に探したが、それらしい人影も見られなかった。
だが、三津田はそれでも緊張感を失う事はなかった。仕事の内容がいずれにしても不可解なものだったし、その裏に何かが隠されている事は間違いなかった。そして、それがなんであるのかは依然として分からないままだった。
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桂蓮様
コメント 有難う御座います
御主人様共々、良いお年をお迎えになられた事と
御推察致します
今年も宜しくお願い致します
新作 拝見しました
全く同じように思い 拝見しながら頷いていました
それにしてもこうして率直な飾りのない御文章を
読ませて戴くのはなんとなく楽しい気分になります
それだからこそ こうしてこのブログ欄に来るのが
週一回の事とはいえ 楽しいのかも知れません
冒頭の写真 穏やかな良い写真です わたくしの居る
県にもこのような海の風景があって 色鉛筆の絵を
描いて飾ってあります
眼には見えない人との関わり 人と人との心の
触れ合い という事ですね 大切な事だと思います
近頃は眼には見えないからといって 人を傷付けても
平気な人間が多くなりました でも 眼には
見えないからこそ 人の心は一層 大切にしなければ
ならないのではないでしょうか
私のコメントを肯定的に受け取って下さって感謝
申し上げます どうぞ ちょっと違うな
そうじゃない と お思いの時には 御遠慮なく
お書き下さい わたくし自身の反省にもなりますので
バレーレッスン 頑張って下さい その
お写真 お待ちしております
有難う御座いました 今年も良いお年でありますよう
遠く 日本からお祈りしております それにしても
不思議な感覚です 日本とアメリカ 異国の雰囲気を
感じながら 何故か 身近に感じられます それも
桂蓮様のブログを拝見するせいかも知れません
takeniisan様
コメント 有難う御座いました
良いお年を奥様共々 お迎えの事と御推察致します
記事を溜め込みたい 良い事ではないのでしょうか
ここに一人の人間の生きた証しが刻まれます お子さん
お孫さん等が将来眼にして ああ 父は お爺ちゃんは
こんな風に考え 物をみていたんだな と懐かしく
思う事でしょう その為にも是非 良い記事を残して
下さいませ
今回も楽しくいろいろな記事を拝見させて戴きました
餅つき わが家でも定番です ですが わが家の
餅つき器はもう五十年くらいになるのではなでしょうか
その為 蒸しに三十分余り 衝きに十分ぐらい要します
それでも未だに健在で 毎年 暮れが来ると 今年も
餅つき器は大丈夫かな の点検から始まります
それにしても田舎の餅つき風景 懐かしい思い出です
一家総掛かりの一日仕事 懐かしく思い出されます
年末の御挨拶 心温まる話しに気持ちが和みます
わたくしどもも 御近所付き合いは欠かしませんが
何気ない日常の人と人との触れ合い これ程
大切なものはないと思います
それにしても見事な野菜 素人農家(失礼)とは
とても思えません
川柳 相変わらず 楽しませて戴きました
随分 お創りなんですね まだまだ 口で
おっしゃる程の頭脳年齢ではないですね これからも
どうぞ 楽しませて下さいませ
何時も愚にもつかない文章にお眼をお通し戴く事に
感謝とお礼を申し上げます 有難う御座います
ブログ 一月一日で止まっていますが 御旅行でも ?
ちょっと気になりましたので
寒さの中 相変わらずお歩きのようですが
くれぐれもお体には気を付けて下さいませ
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スタッフの皆様 今年もまた一年 何かと
お世話になる事と思います どうぞ 宜しく
お願い致します