変わるもの 変わらぬもの(2022.2.2日作)
人の肉体
姿 形 は 生まれながらのもの
変える事は 出来ない
人の心は 自身が育むもの
いつでも 変える事が出来る
変える事の出来るものを
変えないのは その人の
怠慢
人は 皆
それぞれ 重荷 背負い
生き
言論に関して(2022.1.26日作)
言論の自由とは
何を言っても良い という事ではない
言論の自由は制限の中でのみ許される
自己主張に自由は許されるが
他者を傷付け 貶めるための言論に自由は許されない
一切の制約を取り払った野放図な自由は自由ではない
一人の人間の存在
自己を主張するのを束縛するのは悪であるが
他者の存在 他者を貶めるための悪意ある主張を束縛するのは
悪ではない
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再び 故郷に帰れず(2)
「ほら、これさ。これだよ。これを見れば昔の俺を思い出してくれるだろう」
わたしは夢見子の前にその写真を突き出した。
夢見子は恐る恐る右手を伸ばして一辺が十五センチ程の四角い額縁に入った写真を受け取った。
その額縁を両手で持つと公園の外灯の明かりの下で顔をうつむけ、額縁の中の写真に視線を落とした。
夢見子はしばらくそうして写真に視線を落としていたが、やがて、額縁を右に傾けたり、左に傾けたりして、一層くわしく映っているものを確かめようとしていた。それからふと、諦めたように顔を上げると、
「この写真には何も写っていないわ」
と言って、わたしの顔に視線を戻すと写真を返して寄越した。
「写っていない ?」
わたしは何をバカげた事を、というような口振りで言うと、夢見子の手から額縁を受け取った。
写真に視線を落とすと、だが、夢見子の言った事はバカな事でも、嘘でもなかった。
額縁の中にある写真はただ、白一色の何も写っていない写真だった。
「あれ ! おかしいな、これじゃあなかったのかなあ」
わたしは慌てて、再び、袋の中を探った。ガラクタのびっしりと詰め込まれた袋の中にはだが、その他に写真らしい物は何も見つからなかった。
「ないなあ。一体、どうしちゃったんだろう」
わたしは何故か深い失望感に捉われ、泣きたい気持ちで言った。
「多分、あなた、何か勘違いしているのよ」
夢見子は大した事ではないというように軽い口調で言った。
「勘違いなんかじゃないさ。確かにこの額縁には俺の小さい頃の写真が入っていたんだ。それが消えてしまうなんて」
わたしはおろおろした口調で言った。
「あなたの子供の頃の古い写真でしょう。だからきっと、もう、ボヤケて消えてしまったのよ」
「そんな事、ありようはずがないさ。百年も二百年もっていう昔ならともかく、たった二十年か三十年の間の事だよ。消えて無くなってしまうなんておかしいよ」
わたしは夢見子を責めるように言った。
「あなた、きっと、疲れているのよ。だから何か勘違いをしているのよ。少し、ゆっくりと体と心を休めた方がいいわよ。ここは、ちょうどこんなに静かだし、誰もいなくて、邪魔される事もないから。ほら、花の香りが沸き立つように漂って来るのが分かる ? ジャスミン ? 沈丁花 ? バラかしら ? コクテールっていうバラの匂い、あなた知ってる ? それはそれはいい匂いなんだから。うっとりと、夢の中に誘われるようよ」
わたしは何時の間にか、ベンチの上で両膝に肘を付き、頭を抱え込んで泣いていた。自然に涙が溢れて来るのを止める事が出来なかった。
「あなた、遠い所から旅をして来たの ? 疲れているみたいよ」
夢見子は優しく言った。
「いや、そんな事はない。疲れてなんかいないさ」
わたしは顔を上げ、夢見子を見つめるときっぱりと言った。
「そう、じゃあ、わたしと寝る ? もう、女の人には随分、御無沙汰なんでしょう。そんな風に見えるわ。わたしには商売だけど、勿論、お金なんかいらないわ。こんな素敵な夜の中でわたしも一人、あなたも一人、だから、お互い、孤独を慰め合うのも悪くはないと思うのよ」
夢見子は言った。
「いや、沢山だ。女なんて沢山だ。ただ俺には、自分が生きて来たこれまでの人生が我楽多のように思えて仕方がないんだ。だから、俺は巷の埃にまみれて無我夢中で生きて来たこれまでの一切とはおさらばして、もう一度、昔の純粋だった自分に戻って、総てをやり直したいんだ」
「そう、御免なさい。余計な事を言ったりして。あなたは真面目な人なのね、きっと。自分の人生を真剣に考えてるなんてーー。ともすれば、惰性に流されがちになってしまうものだけど」
夢見子は穏やかに言って静かな微笑みを見せた。自分の申し出を無下に断ったわたしに対して悪感情を見せる事もなかった。
「わたし、もう少しここに、こうして居たいの。こんな静かな夜だし。わたしが居ても邪魔にならないでしょう」
夢見子はわたしと同じベンチに並んで腰を下ろすと言った。
「うん、構わないさ」
わたしは言った。
だが、わたしに取ってはそんな夢見子も今では何故か、遠い存在としか思えなかった。幼い頃の夢見子との間に通い合っていた親しみのあの感情が、もはや完全に消え失せていて、虚しさだけがわたしの心の総てを覆いつくしていた。
二
わたしは公園のベンチに腰掛けたまま、うとうとしていたようだった。
目覚めた時には公園には夜明けが来ていた。
爽やかな空気の流れと、葉裏の一枚一枚までもが洗い清められたように鮮やかな樹々の緑が、鮮烈にわたしの視線を捉えて来た。太陽の昇った気配はまだなかった。
小鳥たちが騒々しい声で木々の間で鳴き交わしていた。
女の姿はなかった。
わたしは一人だった。
わたしは少しの肌寒さで目覚めたようだった。
依然として公園には、誰も人の姿はなかった。
わたしは何故か重く感じられる腰を上げると、また、大きな袋を肩に担いで歩き始めた。
公園を出るとわたしの前にはまたしても、細い一筋の道が続いていた。
わたしはその道をひたすらに歩いた。歩いて行くより外なかった。
太陽が昇って来た。
朝の新鮮な太陽の光りだったが、時間が経つのと共に次第に暑さが増して来た。
体の中から溢れるような熱気が湧き上がって来て、わたしは息を切らしながら歩いた。
肌をじめつかせる汗を感じるとわたしは、上に来ていた大きなポケットの幾つも付いた厚い上着の一枚を脱ぎ捨てて、歩いて行く道の上に投げ捨てた。
幾分それで、熱気に火照った体が冷やされるように感じられた
わたしが歩いて行く道筋には、まだ若々しい緑の葉と、赤い茎を蓄えたスカンポの群れが自生し、通りを埋めていた。その自然な眺めがわたしに微かな慰めをもたらしてくれた。わたしは幼い頃に還ったような気分と共に一茎のスカンポを折り取ると、口にくわえ、歯の間で嚙み潰した。その酸っぱい茎汁がふと、わたしに幼い日々への追憶をもたらした。わたしは夢に包まれるような気分と共に、早くも熱気を感じさせて来る陽射しの中で、それでも意気揚々と歩を運ぶ事が出来た。わたしの新しい人生がここからまた始まるかのような、溌溂とした気分に包まれていた。
わたしは歩いた。
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桂蓮様
有難う御座います
コメント 何時も楽しく拝見させて戴いております
それにしても このような文章をここだけに留めて
置くのは いつも書くようですが 勿体ないです
とても楽しくお読み出来ます バレー なんだか悩み
落ち込んでいるお姿が彷彿として来て 思わず
声にして笑っています 幼い子供たちのようだ と心が
ほのぼのとして来ます
それにしても このように打ち込む事の出来るものを
お持ちの桂蓮様はお幸せです 歳を取るのも忘れる事が
出来ますものね 心は青春 お元気の源です
今回も 御理解のある御主人様 良い方ですね と
申し上げたいです どうぞ御主人様にお伝え下さい
雪の月曜日 初めての拝見かと思います
こちらでも珍しく十日の夜には雪が降り 少し
積もりました 積もったと言っても雪国から見れば
霜のようなものでしょうが 馴れないこの辺りでは
ちよっとの仕事になります
坐禅 持てないですね 禅は古いものと思う人が
多いのではないでしょうか 人が生きる上での基本
根本が禅には詰まっています 決して古いものでは
ないのですがーー どうか諦めずにこつこつ説得して
下さい
冒頭の写真 毎回 楽しく見させて戴いております
生活感が溢れ 地方の状況が読み取れて
とても楽しいです
何時もお眼をお通し戴き 有難う御座います
takeziisan様
有難うございます
いろいろ 懐かしい曲 記憶に甦ります
それにしても月日の経つのは早いです
これ等の曲の総てがもう 遠い昔のものに
なってしまいました ドリス デイ
ミレーユ マチュウ パープル シャドウズ
アームストロングは勿論 でも 「夜毎八時」
こんなミュージカルのあるのは知りませんでした
おえる わたくしの方でも使いました 手にマメ
その おえる はなかったですね
人間の矛盾 面白いです 昔も今も人間は
そんなに変わってはいませんね
ジュ二ヒトエ 花はよく眼にしますが 名前は
知りませんでした
バン と オオバン 違うのですね
田圃を守るから バン なるほど 至って簡単な理由
から命名されるものなんですね
今回も写真 楽しく拝見致しました
有難う御座いました