遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(397) 小説 引き金(6) 他 職人 神

2022-05-22 11:40:46 | つぶやき
          職人 神(2022.4.15日作)


 芸術家の自己を追求し 
 最高 最上の高みに達した時点での仕事は
 職人技と言い得るものになる
 職人とは その道に於いて 最高 最上の技術を身に付け
 その技術が 自己と一体となった人を指して言う言葉
 単純 単調に仕事をするだけの人間は たとえ
 物を造る人間であっても
 職人とは言えない 単なる
 作業員にしか過ぎない


 全知 全能の神など 存在しない
 しかし 神は 人の心の裡には存在し得る
 その神を信じる 信じないは
 その人 自身の問題 他者は
 人の心の中の神をも批難 否定する事は出来ない
 その神が他者という存在に 被害 害悪を及ぼすものでない以上ーー
 もし その神が悪徳の神であるのなら
 その存在を神と言う事は出来ない
 神とは 人を超えた 人の救済の為の存在





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          引き金(6)




「うん、どうして ? 猟をしちゃあ可笑しいかい」
「そうじゃないんですけど、うちの父も鉄砲が好きで、解禁の日が待ち切れないようにしていたものですから」
「きみのお父さんも銃をやるの ?」
「はい、山鳩や雉なんかよく撃って来ました」
 三杉はなんとなく、父が銃をやるという光枝に親しみを覚えた。多分、朴訥な感じがするであろう光枝の父親の姿が、彷彿として頭の中に浮かんだ。
 三年間、手にする事のなかった横二連のブロウニングは手入れが行き届いていて、すぐにも使用出来る状態にあった。ずしりとした重みの銃を革ケースから取り出して肩に当てると、元気な頃、早朝から日没まで山野を歩き廻っていた時の興奮が蘇った。
「犬は使わないんですか ?」
 銃を手にして、あれこれ動作を確認している三杉に光枝が聞いた。
「使うよ ?」
 家に犬の姿のない事が光枝には不思議に思えたらしかった。
「友達の家に預けてあるんだ」
 光枝は納得したらしかった。
「何を使ってるんですか」
 と聞いた。
「セッターさ」
「ああ、あの毛の長い犬ですね」
 光枝は嬉しそうに言った。
「うん。きみのお父さんは ?」
「秋田犬です。もう、ずいぶん歳を取ってるんですけど、とっても利口なんですよ」
 光枝は自分の家の事を話題に出来る事が嬉しいらしく、顔を輝かせて言った。
 草むらに隠れている雉やうずらを追い出すのがとってもうまくて、一度なんか、わたしが見ている前で、人間の二倍もあるような熊に向かっていって、一歩も後に引かなかったんですよ、などと得意気に話した。
「今度のお休みの時にいらっしゃるんですか」
 ひとしきり、自分の家の猟犬の話しをした後で光枝は聞いた。
「うん。朝の四時起きになると思うけど、その時には頼むよ」
 三杉は言った。
「はい、分かりました」
 光枝は言った。それから、
「これ、どうしますか ? 旦那様のお部屋へ運んで置きますか 」
 三杉が揃えた道具を見て光枝は言った。
「うん、そうしておいてくれ」
 三杉は言った。 
 その夜も多美代はカルチャーセンターへ行っていた。
 三杉に取っては、狩猟に行く事を始め、様々な事で多美代に余計な気遣いをする必要のない事でむしろ、救われるような思いがしていた。
 定休日を前に三杉は、前後一日ずつの休みを取った。
 初日は無理をしない心算でいた。
 早朝の道路は二時間も車を飛ばせば、西川の家に着く事が出来るはずだった。もし、体調が良ければ、そのまますぐにでも山へ入る事も考えていた。
 西川や源さん、直治さんは、三杉の到着を待ってから出発する準備をしていた。
 三杉の体調が良くなければ、三杉は宿で休み、三人だけで山へ入る計画だった。
 多美代には一昨日の夜、休みを取って狩猟に行くと告げていた。
「猟に行くって言ったって、山歩きなどして大丈夫なの ?」
 多美代は三杉の思わぬ言葉に不安も露わに、咎めるかのように強い口調で言った。
 三杉はその言葉に返事を返さなかった。黙っていた。
 言葉を返せば、棘を含んだ厳しい言葉遣いになってしまいそうで怖かった。
 三杉には分っていた。自身の屍のような人生を生きる日々の中で、自分の苛立つ心が知らず知らずのうちに、三杉に取っての唯一の身内とも言えるような存在の多美代に、その不満をぶちまけている、というその事が。
 自分の発する言葉の一つ一つ、一言一言が棘を含んで三杉自身の心をも多美代の心をも突き刺しているーー
 三杉の日常での多美代との会話は自ずと少なくなっていた。かつての日々、なんでもない言葉の遣り取りの一つ一つが心を許し合った者同士の喜びに満ちていた事実が、夢の彼方の遠い出来事だったように思われた。
 
 三杉はその日、何時もより二時間も早く帰宅した。
 幼い奈緒子は母親が外出した夜の、何時もは光枝と二人だけの寂しい食卓に思いがけず、父親が加わった事ではしゃいでいた。
「今日、学校で鉄棒の逆上がりをして四回も出来たのよ」
 と、顔を輝かせ、得意気に意気込んで話して聞かせたりした。
 奈緒子は遅い結婚をした三杉夫婦に四年目にして恵まれた子共だった。
「お父さんにそっくりな眼をしているのね」
 誰にもそう言われるのが三杉に取っては、何よりも得意な事だった。
 陶器を思わせる皮膚のその下に、紅(くれない)を隠した白い輝きに三杉は奈緒子の魂の純粋無垢を覗き見る思いを抱いていた。
 何事にもすぐに感動して心を昂らせ、驚きの表情を顕わにするその無邪気さを愛おしく思った。
 奈緒子はシチューを口元に運ぶスプーンを宙に浮かせたまま、嬉し気だった。
「お絵描きで三重丸を貰ったの」
「ほらほら、シチューがこぼれちゃうよ」
 三杉は優しく言った。
 いったい、この娘(こ)とあと何年、一緒に生きられるのだろう・・・・
 自分の体調不良と考え併せて三杉は、そう思わずにはいられなかった。
 生命の輝きを発散する幼い娘の前で、毎日、死と隣り合わせに生きている自分の生命の危うさを思った。
 奈緒子は父の言葉に宙に浮かしたままのスプーンに気付いて、自分の失敗を可笑しがるように小さな肩をすくめると慌てて口に運んだ。

 食事のあと、三杉は明日の朝、すぐに発てるように光枝に手伝わせて支度を整えた。





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          桂蓮様

           有難う御座います
          新作 脂肪を燃え尽くす
          いろいな意味で楽しく読ませて戴きました
           わたくしは二十代は無理ですが 四十代頃の
          着る物は今でも着られます 何十年も体重が
          大きく変わる事はありません 大腸がんが見つかった時も
          体重の変化はありませんでした 毎週一回 体重計に 
          乗っていますが誤差の範囲内で総てに大きな変化はありません
          その代わり 身長が縮みました 七十代後半のある年
          一年で一センチ五ミリ 縮んだ年がありました
           それにしても韓国や日本と違って アメリカの人々の肥満度 驚くばかりですので
          桂連様 少しぐらいは肥っても傍目を気にする程の事は
          ないのではないですか
          最も 自身の体調に係わる事ではありますが
           チュチュ 確かに着るには勇気のいる衣装ですね
          読みながら自ずと笑みが浮かんで来ます
          それにしてもあちこちの痛み 大丈夫ですか くれぐれも
          御無理の無きよう お気を付けて下さい ちよっとした事柄が
          後々に大きく響く事があります
           檜舞台 それを前にしたこの御文面からは気苦労でありながらも
          また なんとはないワクワク感と言ったような雰囲気が直に伝わって来ます
          まあ ここ暫くは頑張って そのあと ゆっくりお休み下さい
          医師を変える程の痛み 大丈夫ですか
          お気を付け下さい 
           何時も詰まらない文章にお眼をお通し戴きまして
          有難う御座います
           御礼申し上げます


                                     
          takeziisan様

          何時も有難う御座います
           今回もブログ 楽しく拝見させて戴きました
          やれやれ・・・ 実感 
          日々 生きる事にやれやれ という感じです          
           一見 画面ではアジサイのように見える花
          カルミア 初めて知りました その他 いろいろな花
          今回も眼の保養 でした
           それにしても今年の五月はなんという五月 薫風は
          何処へ行ってしまったのでしょう
           サーカス アメリカン フィーリング
          懐かしい曲ですね このグループ 兄妹 親戚の
          メンバーでしたよね
           久しぶりに清々しい気持ちで耳にしました
           センダン 田舎の家の記憶そのものです
          門の所に大きな木が二本あって 毎年 この花を咲かせ
          秋には黄色い実をいっぱい落としていました
           方言 ヒンナン 一見 外国語 ? かと思ってしまいますが
          よく読めばなるほどと納得  方言そのものは初めてで  
          も理解出来ます
           何時も書くようですが その地方が持つ方言独特の
          優しい響きは心地良いものです
           この方言 独特の響きが失われてしまうのは寂しい事です
          言葉の失われる事は文化の失われる事にも通じますので
          方言は是非 大切にして貰いたいものです
           ひまわり いい映画でしたね
          俳優も一流 監督も一流 こういうしっかりとした作品を観てしまいますと
          最近の作品は軽々しくて五分も観ていると なんだこりゃあ という事になってしまいます
           世の中 便利になった分 もの皆総てが軽くなってしまったように感じられます
           政治の世界初め総てが軽薄化へと進んでいるようで悲しい事です
            何時も御力添え 有難う御座います