遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(409) 小説 白い霧の夜(2) 他 新しいということ

2022-08-14 12:47:19 | つぶやき
         新しいということ(2022.7.25日作)


 科学の面に於いては いざ知らず
 人間社会に於ける道徳 思想の面に於いて 真に
 新しいものは存在しない 人は
 何万年 何千年 という 時の中を生きて来て 
 頭で考え得る事は 人が生まれて死に赴く という 
 限定条件の中では 限られている 今 新しい と 思った事も
 実は 何万年 何千年 という歴史の中で 積み上げられ
 重ねられて来た 思考 経験の
 集積の結果で そこに 何かしら
 過去が影を落とし 影響している しかし
 現実 今 この瞬間 その時 その時代の中で 時代に即した
 その時 その時点で 新しいと思われる考え方が
 新しさに於いて 無価値かというと 必ずしも 
 そうではない その時代に合った その考え方が
 その時代に適合し 通用する以上 その考え方は
 新しいと言える 時代の中で常に新しい





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            白い霧の夜(2)



 近付くに従ってそれが、繁華街によくあるバーやキャバレーの看板と同じものである事が分かった。
 < クラブ 青い館 >
 青いネオンサインが白い霧の中に灯りを点していた。
 篠田は< 青い館 >の内部を想像した。
 東京での日常でも、仕事上の打ち合わせなどで幾度となく経験している場所であった。今更、物珍しいわけでもなく、内部はすぐに想像出来た。華やかに着飾った若い女性達のしなやかな肉体が眼の前に彷彿した。
 女性に貪欲な篠田ではなかった。
 それでも篠田は酔っていた。
 日常の緊張感から解放された気の緩みが篠田の悪戯心を誘っていた。
 篠田は揺れる心のままに暫くはネオンの灯りと厚い扉のドアを見つめたまま立っていた。
 時折り、篠田の背後を人の影が通り過ぎて行った。
 その時、内側からドアが開いて中年の男が一人、黒いドレスを着た年若い女性に送られて店内を出て来た。
「さよなら、また来てね」
 女性は開いたドアを押さえたまま、白い指の手を振って男の背中に言った。
 男はその声に応えるように後ろを振り向くと笑顔を見せて片手を上げた。
 男の姿はすぐに霧に紛れて見えなくなった。
 男を見送った黒いドレスの若い女性はその美貌を閉めたドアの向こうに隠した。
 その若い女性の美貌に誘われたように酔いに任せた篠田の心は動いていた。
 今、女性が閉めたドアを自分の手で開けていた。
 一歩、店内に足を踏み入れた篠田の眼の前には深紅のビロードのカーテンが店内を隠していた。
「いらっしゃいませ」
 深紅のカーテンで店内の明かりを遮られた暗闇の中、ドアの側で男の声がした。
 男はその声と共に、厚手の重いカーテンを開いて篠田を内部へ誘った。
 カーテンの内部もまた、薄暗かった。
 ロックのけたたましい響きがなんとはない店内の興奮を醸し出していた。
 薄暗い内部の天井には幾つもの小さなミラーボールが下がっていて、それが店内の様子を僅かに垣間見させた。
 篠田は後悔とまでは言えないまでも、如何わしいと思われる場所に足を踏み入れてしまった事へのいささかの戸惑いを覚えていた。
 背もたれの高いソファーが並んでいるあちらこちらからしきりに、深い溜め息や、囁き、戯れ合う男女の声が聞こえて来た。
「どうぞ、こちらへ」
 篠田に声を掛けた男は暗闇の中で足元を小さな懐中電灯で照らしながら、幾つものソファーの間を通って、一つの席に案内した。
 篠田が腰の低い深々としたソファーに腰を下ろすと男は、
「どなたか、御希望の女性はいらっしゃいますでしょうか」
 と聞いた。
「いや、初めてなんだ」
 篠田はようやく店の実態を把握した。
 と同時に、闇に馴れた眼におぼろげながらに周囲の様子が見えて来た。
 低い声の囁きやうめきの声が横からも後ろからも聞こえて来た。
「駄目よ、駄目よ」
 女のくぐもったが必死に抵抗していた。
 その声が何かに塞がれたように途切れると、息の絡み合う気配が篠田の耳を捉えた。
 篠田は馴れない場所に足を踏み入れた事への緊張感で、珍しく身を堅くしていた。かつて無い事だった。若い頃の就職面接時に還ったような気分だった。
 暫くして、白いドレスを纏ったスラリと背の高い若い女性が篠田の前に立った。
「いらっしゃいませ」 
 女性は小さな白いバッグを左手に持ち、軽く頭を下げて言った。
 篠田はその女性を見上げると、
「こんばんわ」
 と言った。
 女性の何処となく清楚に感じられる雰囲気が、幾分なりとも篠田の気分を落ち着かせた。
「お邪魔します。青華と申します」
 女性は言うと、そのまますぐに篠田の横に体を摺り寄せるようにして腰を下ろした。
 狭いソファーの中で二人の体が触れ合い、青華の肉体の一部が篠田の太腿に触れた。
 篠田は弾むような青華の肉体の感触を意識すると、思いがけずに心がときめいた。
「柔らかい体をしているね」
 青華の太腿に手を置いて言った。
 篠田の心も決まっていた。この場の雰囲気に溶け込む事だ。
 青華は篠田の手を取り、蠱惑に満ちた眼を篠田に向けて微笑むと、
「冷たい手」
 と、言った。
「霧の中を歩いて来たからね」
 篠田は青華の手に自分の手を任せたまま言い訳のように言った。
「今夜はずいぶん、霧が深いみたいですね」
 青華は言った。
「この街は、いつもこんなに霧が深いの ?」
 篠田はよそ者のように聞いた。
「そんな事はないですよ。今夜は特別みたいです」
「港の方へ行ってみようかと思ったんだけど、あまりに霧が深いのでやめてしまった」
「東京からいらっしゃったんですか」
「うん。でも、二十六年前には、この街の港の方で働いていた事もあるんだ」
「この街の生まれなんですか」
「いや、生まれたのは山を越えた向こうの街だ」
「それで、今は東京に ?」
「そう」
「今夜は、ゆっくりなさっていってもいいんでしょう ?」
「君がサービスをしてくれるんならね」
「それはお客様次第ですわ。わたしたちはお仕事ですから」
「どこまでサービスをしてくれるのかね」
「これだけお出し戴ければ、別のお部屋へ御案内する事も出来ますわ」
 青華は絡めた五本の指を一本一本折って言った。
「五万円 ?」
「はい」
「五万円でも君の魅力なら高くはなさそうだ」
 篠田は言った。
「そう、おっしゃって戴けると嬉しいですわ」
「別の部屋というのは ?」
「のちほど御案内致します」
 青華はウイスキーの水割りを作って篠田に渡した。





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          桂連様

           有難う御座います
          新作 拝見しました
          一定のリズムに乗る
          安定したエネルギー
          空間にそのまま存在する
          自然の一部でいる
          静かな力を始動させる
          心の平衡を保つ
           感情を持つ人間には これがまた
          一仕事です なかなか出来るものではありません
          坐禅はその為 それを会得する為の修行だと思いますが
          いわゆる無の境地 自分の感情に左右されないようになるまでには
          大変な修行を必要とすると思います 多くの人達は
          究極まで到達出来なくて 挫折してしまうのではないでしょうか
          あるいは少し齧っただけで 自己満足して 俺は禅を修めた
          などと言いたがるのではないでしょうか
           いわゆる職人の世界と同じですね
          職人と呼ばれ 名人と言われる人達は何年も何年も
          その仕事に携わり その道一筋に生きて来た だからこそ
          名品 名作というものをなんの苦労もないように
          次々と産み出せる そこには思惑など入る余地はなく
          勝手に頭が 手が動いて そのものを産み出す
          これは禅の悟りの境地と同じものだと思います
           無のままでいて最高のものを創り出す
           自然の一部でいる
           空間にそのまま存在する 
           心の平衡を保つ
           一定のリズムに乗る
          みんな自己主張のない世界の出来事です
           どうか桂連様も一日も早く この境地を取得されますように
          トランプ お騒がせ屋 賑やかですね
          自分の出来ない悪さをトランプに託す
          そうですね それだからこそ 今でもあんな品格のない
          悪知恵ばかりの発達した人間が 持て囃されるのでしょうね
          こちらに居ても トランプにはもううんざりだ という気がします
          あの人物が復活する事を何よりも怖れます
          前回も書いた事ですが
           いろいろな習い事の多い中 忙しいのではと思います
          有難う御座います 御礼申し上げます





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          takeziisan様

           何時も御眼をお通し戴き有難う御座います   
          今回も様々な美しい写真 楽しい記事 拝見させて戴きました
           ゴーヤ ナス トマト等
          趣味農家の雰囲気 匂って来まして 見ている方もなんだか楽しく
          応援したい気分になります
          それにしてもこの暑さの中 仕事は大変だと思います
          くれぐれも体調には気を配って 無理のないようにして下さい
          諸田玲子 以前にも書きましたが新聞連載時に何度か眼を通した事があります
          いい文章を書く人だと思った記憶があります
          まとまった小説などは読んではいませんが
           今回も鳳凰三山ほか 山の写真 楽しませて戴きました
          何時も書きますが 山の経験のないなりに テレビなどでの
          作為のない自然を写した番組を見るのは好きで 楽しみに眼を通しています
          ですので今回も美しい写真の数々には堪能致しました
           ワラゾウリ 小学校の写真 まるで自分の写真を見ているようです 
           雰囲気が全く変わりません どの地方でもその時代時代の空気は
          変わらないものですね いや 懐かしいです
          ちなみにわたくしの祖母も藁草履を作るのが上手で評判でした
          おばあさんの作るゾウリはしっかりしていて ちっとも型崩れがしないよ という事でした
          記事を拝見しながら懐かしく思い出しました
          DDT ありましたね わたくし達もやられました
           ああ まだ生きている
           今朝も大丈夫だった わたくしの思う事です
          歳を取ると誰でもこんな感慨をいだくようになるのですね
          キツネノカミソリ ヤナギラン ニゲラ
          前ふたつは名前だけは聞いていましたが ニゲラは
          初めて知りました 
           長崎の鐘 今年も八月 終戦の月が来ました
          繰り返し 歌われる曲でしょうね 名曲です
          エピソードは有名ですね
           千の風になって
          良い御文章でした
          感動的です
          わたくし共も疎開派です わたくしの母は 自分の生まれ故郷に帰って来たのに
          なんで悪口を言われなければならないんだ と祖母にこぼした事があったそうです
          あの当時は今のように人権などと言う言葉の口にされる時代では 
          なかったですからね
          いずれにしてもわたくし達の世代の親は大変な苦労をしなければ
          なりませんでした
          現在のウクライナの状況が重なって来ます
           お墓参り 故郷を離れた人間に取っては歳を重ねると共に
          大きな問題になって来ますね
          御心情 よく理解出来ます でも たとえ墓参が出来なくても
          心の中で両親 亡くなった人たちを愛おしみ 思い続ける事が大切な事なんでは
          ないでしょうか
          そう思いながら 日々 暮らしています
           何時も御眼をお通し戴き 有難う御座います
           御礼申し上げます